本記事は、藤井聡氏の著書『超入門MMT』(エムディエヌコーポレーション)の中から一部を抜粋・編集しています。
日本はホントに「借金地獄」なの?
日本のオカネについて、次のような話が連日、テレビや新聞で(さらには学校の教科書まで巻き込んで)繰り返されています。
日本の借金は1千兆円を超えるほど膨大に膨らんでしまっている。このままでは日本が破綻して大変なことになってしまう!
これを鵜吞みにして、「政府の借金を返さなきゃエライことになる。であるなら、たとえば消費税が上がるのも仕方がない」と信じてしまっている人も少なくありません。
加えて政府がまた、この話に従って政策を展開していますから、多くの国民が「エライことになる」と信じてしまうのも仕方のないことです。
「借金で日本が破綻する」という最悪の事態を避けるための、「緊縮」と呼ばれる、政府の支出を減らして収入を増やす対策が「財務省」を中心に長期間にわたって展開されてきました。
消費税は2014年に8%に、2019年10月には10%に増税されました。消費増税には多くの国民が反対していますが、それでも実施されてきているのは、ひとえに、「このままでは借金で日本が破綻する」という声が強烈に存在しているからです。
そんな状況の中で、MMT(現代貨幣理論)という経済理論は、「日本政府が日本円の借金で破綻することはない」と主張しています。だから、MMTは話題になり、注目されてもいるわけです。
「ホントに破綻しないの?」「財政破綻、財政破綻、とテレビや新聞で毎日あんなに決まりきったことのように言っているのにホントに大丈夫なの?」と疑問に思う人は多いでしょう。
しかし、日本政府が日本円の借金で破綻することはない、ということは、実は当たり前の事実です。
まず、財務省自身が、「日本政府が日本円の借金で破綻することはない」ということを公式に書面で述べています。
財務省は2002年に、外国格付け会社3社(Moody’s/S&P/Fitch)宛に意見書を出しました。この3社は、投資家へのサービスとして株や国債などの信用度を定期的に格付けして発表する事業を行っていて、その発表に対して財務省が、日本国債の格付けを格下げするとは何事かとクレームをつけたのです。
そして、そのクレームの根拠の第一として、財務省は次のポイントを上げています。
日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない(『財務省ウェブサイト』「外国格付け会社宛意見書要旨等について2002年5月2日」外国格付け会社宛意見書要旨・和訳より)。
デフォルトとは「債務不履行」、つまり借りたオカネが返せなくて「破綻」する、という意味です。財務省は、日本は日本円の国債でデフォルトはしない、と断言し、「破綻などするわけがないのに格下げとはどういうことか」とクレームをつけたわけです。
繰り返しますが、日本政府が日本円の借金で破綻することはない、ということは、実はMMTが主張するまでもなく、日本政府の財政を司る財務省自身が認める事実なのです。
そして、「なぜ日本政府が日本円の借金で破綻することはないのか」を理論的に説明しているのがMMTという経済理論です。それをこれからわかりやすくお話ししていこう、というのが本書の趣旨です。
追って詳しく説明しますが、「日本政府が日本円の借金で破綻することはない」にもかかわらず、「借金で日本が破綻する」という最悪の事態を避けるという名目で、消費増税やあらゆる項目の予算をカットする「緊縮」と呼ばれる対策がとられてきています。そのため日本は長期的なデフレ(デフレーション)に落ちこんだままであり、結果として日本人の給料は上がらないのです。
私たちが生活するうえでは、ここのところがいちばん問題だということは言うまでもないでしょう。
MMTという経済理論を知っておくと、私たちのまわりで起きているオカネにまつわる出来事の理由や原因、根拠など、今までわかっていなかったことまでいろいろと見えてくるはずです。