ビジネスに役立つ”思考のフレームワーク”6選
(画像=tiquitaca/stock.adobe.com)
風間 啓哉
風間 啓哉(かざま・けいや)
監査法人にて監査業務を経験後、上場会社オーナー及び富裕層向けのサービスを得意とする会計事務所にて、各種税務会計コンサル業務及びM&Aアドバイザリー業務等に従事。その後、事業会社㈱デジタルハーツ(現 ㈱デジタルハーツホールディングス:東証一部)へ参画。主に管理部門のマネジメント及び子会社マネジメントを中心に、ホールディングス化、M&Aなど幅広くグループ規模拡大に関与。同社取締役CFOを経て、会計事務所の本格的立ち上げに至る。公認会計士協会東京会中小企業支援対応委員、東京税理士会世田谷支部幹事、㈱デジタルハーツホールディングス監査役(非常勤)。

事業計画の立案では、頭の中のイメージをアウトプットしなければならない。どのように提案すればよいのか迷うこともあるだろう。今回は事業計画の創出に役立つフレームワークをご紹介する。これから事業計画を立案する方はぜひ参考にしてほしい。

目次

  1. 事業計画にフレームワークが必要な理由
  2. 事業の立ち上げに必要な3つのプロセス
    1. プロセス1.ビジョンの明確化
    2. プロセス2.事業ドメインの決定
    3. プロセス3.ビジネスプランの作成
  3. 事業計画に役立つ6つのビジネスフレームワーク
    1. フレームワーク1.SWOT分析
    2. フレームワーク2.目標達成シート
    3. フレームワーク3.ポジショニングマップ
    4. フレームワーク4.3C分析
    5. フレームワーク5.PEST分析
    6. フレームワーク6.ペルソナ分析
  4. 事業計画の負担をフレームワークで軽減

事業計画にフレームワークが必要な理由

そもそも事業計画とは、事業推進に不可欠な事項を関係者と共有するための計画である。サービスに関する新しいアイデアやビジネスのフレームワーク、事業コンセプト、事業環境の分析、マーケティング方法、事業収支計画などを文書化した事業計画書をさすことが多い。

事業計画を作成する過程において、事業モデルで未検討であった箇所や、解決すべき課題への取り組みが浮き彫りになってくることがある。事業を見直す作業を繰り返す必要もあるだろう。

事業立ち上げのプロセスはそれぞれが重要であるほか密接に結びついており、各プロセスをスピーディにアウトプットするためにフレームワークは役立つ。うまく活用して効率的よく計画していきたい。

事業の立ち上げに必要な3つのプロセス

事業の立ち上げは一般的に次のようなプロセスで行われる。

プロセス1.ビジョンの明確化

事業計画におけるビジョンは、事業の目的や実現したい未来を意味し、事業の根幹となる方向性のことをいう。

新規事業の立ち上げには、顧客からの信頼や組織メンバーの相互理解などが不可欠であり、ビジョンはその中心的役割を果たす。ビジョンを明確にすると共感が得やすくなる。

プロセス2.事業ドメインの決定

事業ドメインとは、事業を展開する領域である。新規事業で経済活動を行う領域を明確にする。

「商業施設を運営する」というように具体的な製品やサービスをベースにドメインを決定したり、「購入者を喜ばせる」というように顧客のニーズや不満をベースにドメインを決定したりする。

プロセス3.ビジネスプランの作成

ビジネスプランとは、事業ドメインで行う新規事業の内容を関係者に共有できるよう体系化した計画だ。事業ドメインを決定したあとにターゲットや提供方法などを文書化していく。

新規事業で継続的に利益を獲得することが極めて重要だ。そのためにはマーケットおよび事業から得られる収益性など、事業の全体像や事業の分析などをしなければならない。

ビジネスプランを作成していくプロセスでは、収支計画並びに資金計画などの財務計画もあわせて作成していく。

事業計画に役立つ6つのビジネスフレームワーク

ビジネスフレームワークとは、意思決定や課題の発見、戦略立案、業務改善、組織マネジメントなどに関する思考の枠組みだ。新規事業の立ち上げや事業計画の立案時に役立つ。

ビジネスフレームワークによって思考が整理され、メンバーとのコミュニケーションが円滑になりやすくなる。

便利なツールだが、頼ってしまうと思考が停止するケースもあり、慎重に活用しなくてはならない。具体的なフレームワークを引き続き解説していく。

フレームワーク1.SWOT分析

SWOT分析とは、事業戦略の策定やマーケティングで利用するツールだ。組織や新規サービスなどに関して、内部経営環境と外部経営環境、プラス要因とマイナス要因の観点から分析する。

強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)の頭文字を取ってSWOT分析と呼ばれている。

さらに発展した応用版のフレームワークとしてクロスSWOT分析もある。詳しくは下記の記事も参考にしてみてほしい。

参考:クロスSWOT分析とは? フレームワークと使い方を徹底解説!

フレームワーク2.目標達成シート

目標達成シートとは、中央にある3×3の9マスを起点としたアイデア創造のフレームワークだ。中央のキーワードから連想される事柄を拡散するようにかき出していく。

事業計画の立案にフレームワークは必要? 競合分析などの方法を解説!

シンプルな使いやすさからビジネスでも広く利用されている。フレームワークが、仏教の曼荼羅(マンダラ)模様に見えることから、マンダラートともいわれている。

米国メジャーリーグにおいて投手と打者の二刀流で世界に名をとどろかせた大谷翔平選手が、高校時代に目標達成シートを活用していたことも有名だ。

目標達成シートは、自分が持つ問題意識に関して、実現に向けた具体的なアクションを視覚化する。達成したい目標や優先すべき事柄など、網羅的な思考が可能になる。

フレームワーク3.ポジショニングマップ

ポジショニングマップとは、競合との差別化を図り、競争優位性のある独自ポジションを導き出すフレームワークだ。2つの軸により分析が行われるため、軸とする要素がとても重要となる。

たとえば、価格帯と消費者の軸で、A~Cの競合他社をマップに落とし込むとしよう。

事業計画の立案にフレームワークは必要? 競合分析などの方法を解説!

マップ上における自社事業の位置によって戦略も変わってくる。勝負できるポジションを探るのに役立つだろう。

フレームワーク4.3C分析

3C分析とはCustomer(市場・顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)という3要素の分析を行い、事業やマーケティングの成功要因を導き出すフレームワークだ。

事業計画の立案にフレームワークは必要? 競合分析などの方法を解説!

フレームワーク5.PEST分析

PEST分析とは、Politics(政治)・Economy(経済)・Society(社会)・Technology(技術)に着目し、外部環境を分析するフレームワークだ。頭文字をとってPEST分析と呼ばれている。

PEST分析は、マクロな視点による分析に優れているほか、中期・長期的な観点からの分析にも有効だ。

事業計画の立案にフレームワークは必要? 競合分析などの方法を解説!

フレームワーク6.ペルソナ分析

ペルソナ分析とは、顧客のキャラクターを想定するフレームワークだ。ペルソナは、詳細なライフスタイルを想定した人物設計であるため、ターゲットよりも細かい概念といえるだろう。

ペルソナの設定に成功したのが、大赤字からの劇的復活を遂げた横浜DeNAベイスターズである。ペルソナは「アクティブサラリーマン層」に設定され、性別や年代、趣味、観戦エリア、観戦スタイルなどが細かく定められた。

野球に興味が薄い人物像を想定して、球場で過ごす時間に付加価値をつけてアピールしている。たとえば、音楽や演出にこだわった以外に、ペルソナとの親和性を考慮してオリジナル醸造ビールも手掛けた。勝ち負けにとどまらない価値提供がブランディングを成功に導いたのだろう。

事業計画の負担をフレームワークで軽減

事業計画の立案にあたって、さまざまなフレームワークを活用できるとおわかりいただけただろう。事業計画の立案時は頭を抱えることも多い。フレームワークを最大限に活用して、事業立ち上げの労力を少しでも軽くしてみてほしい。

文・風間啓哉(公認会計士・税理士)

無料会員登録はこちら