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事業を営むオーナーと一口にいっても「会社から役員報酬を得ている」「個人事業主として所得を得ている」などさまざまな人がいる。仮に年収が同じでもどちらの方法で所得を得ているかで所得税額が異なることをご存じだろうか。もちろん所得控除の適用有無や金額など税額が変わる要因は他にもあるが、所得の種類によって所得金額の求め方が異なる。
所有している資産の売却(譲渡)や配当、助成金などを得た場合の所得税も知っておきたい。本記事では、課税の仕組みや所得の種類、所得税の計算方法などについて説明する。
収入と所得、課税所得の違い
所得税の仕組みを理解するためにまず知っておきたいのが「収入」「所得」「課税所得」の違いである。
「収入」とは
労働の対価や資産の売却などによって得たお金のこと。例えば個人事業主ならその事業に関する売上金、役員報酬をもらっている人はその報酬額などが該当する。
「所得」とは
収入から必要経費や控除額を差し引いた金額のことだ。例えば個人事業主のように収入が事業の売上金の場合は、売上金から必要経費を差し引いたものが所得となる。一方で役員報酬の場合は、収入金額に応じた給与所得控除を差し引いたものが所得となる。ちなみに事業の売上から必要経費を引いて求めた所得を「事業所得」、役員報酬から給与所得控除を差し引いて求める所得を「給与所得」という。
所得税法上において個人事業主は事業所得者であり、役員報酬をもらっている人は給与所得者とされている。
「課税所得」とは
所得税の課税対象となる個人所得のことだ。前述した「所得」から基礎控除や社会保険料控除、扶養控除などの各種所得控除を差し引いた金額であり、算出された課税所得に所得税率をかけることで所得税額が計算される。大まかにまとめると以下のように表すことができる。
- 所得=「収入」-「必要経費・控除など」
- 課税所得=「所得」-「所得控除」
- 所得税=「課税所得」×所得税率
所得の種類
所得は、所得税法で10種類に区分されている。事業をしているかどうかにかかわらず事業で得る所得や報酬以外に所得を得ることも考えられるため、各所得の内容や算出方法などについて知っておこう。
1.利子所得
利子所得は、預貯金や公社債の利子、および公社債投資信託などの収益の分配金などだ。これらは銀行などから支払いを受ける際に20.315%(復興特別所得税を含む)が源泉徴収されているため、基本的に自分で確定申告をする必要はない。
・利子所得の金額=利子などの収入金額(源泉徴収前の額)
2.配当所得
株主や出資者が法人から受ける配当や剰余金、投資法人からの金銭の分配、投資信託(公社債投資信託、公募公社債等運用投資信託以外のもの)の収益の分配などが配当所得だ。株式購入や出資をするにあたり借り入れした場合は、その借入金の利子を収入から差し引くことができる。
・配当所得の金額=収入金額(源泉徴収前の額)-株式などを取得するための借入金の利子
3.不動産所得
不動産所得は、土地や建物などの不動産の貸付のほか借地権など不動産の上にある権利の貸付、船舶や航空機の貸付による所得だ。ただし不動産の貸付でもサービスの提供を主としたホテル業や下宿は「事業所得」などに区分される。なお固定資産税や損害保険料、修繕費、建物の減価償却費など、不動産を貸付するにあたり支出した必要経費を収入から差し引いた後の金額が不動産所得の金額だ。
・不動産所得の金額=収入金額-不動産所得にかかわる必要経費
4.事業所得
農業や漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業など事業を営むことで発生する所得は、事業所得に該当する。なお事業活動に関連して支給される政府や自治体からの給付金・協力金は、事業主が法人の場合は法人税、個人事業主の場合は事業所得として所得税の課税対象となるため、注意が必要だ。新型コロナ関連の助成金でいえば持続化給付金や都道府県の休業・時短要請協力金などが該当する。
事業所得者(個人事業主)は、忘れず所得額に含めておこう。
・事業所得の金額=事業による収入金額-事業にかかわる必要経費
例えば1年間の売上が1,000万円、必要経費が200万円の場合、事業所得は800万円となる。
5.給与所得
給与所得者が勤務先から受ける給料や賞与のほか、法人役員などが受け取る役員報酬なども給与所得に該当する。事業の場合と異なり業務上かかった経費を差し引くことはできない。ただし収入金額に応じた給与所得控除を差し引いて給与所得の金額を算出する。
・給与所得の金額=収入金額-給与所得控除
例えば役員報酬年額が800万円であれば給与所得控除額は190万円(800万円×10%+110万円)となり給与所得は610万円(800万円-190万円)だ。役員報酬年額が1,000万円の場合なら給与所得控除額が195万円(850万1円以上は195万円が上限額)となり給与所得は805万円(1,000万円-195万円)である。
6.退職所得
退職により勤務先から受ける退職金や一時恩給や老齢給付金のように退職をきっかけに支給される所得が退職所得だ。退職所得は、算出する際に一定の退職所得控除を差し引くことができる。退職所得控除の額は、勤続年数によって計算方法が異なるのが特徴だ。
・退職所得の金額=(収入金額-退職所得控除)×2分の1(※)
※勤続年数5年以下の法人役員等の退職金については、2分の1課税は適用されない。
退職所得控除額の計算
・勤務年数20年以下の場合:40万円×勤務年数
・勤務年数20年超の場合:800万円+70万円×(勤務年数-20年)
7.山林所得
山林所得は、山林の伐採や立木のままで譲渡することで発生する所得だ。植林費の取得費や下刈費などの育成費、維持管理のための管理費、伐採費、運搬費、仲介手数料などは必要経費として差し引ける。
・山林所得の金額=収入金額-必要経費-特別控除(50万円)
ただし山林を取得してから5年以内に伐採または譲渡した場合には、事業所得もくしは雑所得として区分されるため注意したい。
8.譲渡所得
土地や建物などの不動産、ゴルフ会員権や貴金属などの資産の譲渡によって発生する所得は譲渡所得となる。ただし、事業用の棚卸資産や山林、減価償却資産のうち一定のものなどの譲渡で発生する所得は譲渡所得には該当しない。譲渡所得を算出するためには、基本的には譲渡したことで得た収入から取得費および譲渡に際してかかった費用を差し引くことが必要だ。
しかし譲渡する資産によっては特別控除を差し引けるものもある。
・譲渡所得の金額=収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額
9.一時所得
1~8の所得に当てはまらず事業や資産譲渡との関係性がない所得は、一時所得に区分される。例えば懸賞や福引の賞金や賞品、競馬や競輪の払戻金、生命保険や損害保険の満期返戻金、法人から贈与された金品などが一時所得となる。
一時所得の金額=収入金額-収入を得るために支出した費用-特別控除額(50万円)
10.雑所得
1~9までの所得のいずれにも該当しない所得は、雑所得となる。例えば公的年金や会社員などの副業にかかる所得などは雑所得だ。
・雑所得の金額(公的年金等)=収入金額-公的年金等控除額
・雑所得の金額(公的年金等以外)=収入金額-必要経費