総合課税と分離課税の違い
人によっては、事業所得や給与所得のほかに利子所得や配当所得、不動産所得など複数の所得を得る人もいるだろう。そのため「総合課税」「分離課税」といった2種類の課税方法の違いはしっかりと押さえておきたい。簡単にいうと「複数の所得があるときにその所得を他の所得と合算するかしないか」だ。
- 総合課税:他の所得と合算して所得税額を計算するもの
- 分離課税:他の所得とは切り離して所得税額を計算するもの
冒頭で述べたように所得税は、課税所得に対して計算される。しかし課税所得を算出するためには他の所得と合算させるかどうかを知っておくことが必要だ。ただ同じ所得でもケースによって総合課税だったり分離課税だったりするものもあるため、複雑な一面もある。例えば同じ譲渡所得でも土地や建物、株式などの譲渡の場合は、分離課税だ。しかしゴルフ会員権や貴金属などの譲渡所得は、総合課税となる。
他にも事業所得や一時所得、雑所得などでこのようなケースがあるため、その時々に応じて確認しよう。
所得税の計算方法
上述した通り課税所得を算出する際には、所得控除を差し引くことが必要だ。所得金額は、所得控除の有無で所得税の金額が変わってくるため、できれば上手に活用したい。
所得控除
所得控除は、全部で15種類。具体的な内容や金額は、変更される可能性があるため、都度国税庁のホームページなどで確認が必要だが、羅列すると次の通りだ。
- 雑損控除
- 医療費控除
- 社会保険料控除
- 小規模企業共済等掛金控除
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 寄附金控除
- 障害者控除
- 寡婦控除
- ひとり親控除
- 勤労学生控除
- 配偶者控除
- 配偶者特別控除
- 扶養控除
- 基礎控除
そもそも所得税額の計算において各納税者の個人的事情を加味するのが所得控除の目的だ。そのため人によって適用有無や適用される場合の金額が異なり、一般的に高い所得を得ている人ほど所得控除の適用額は小さくなる。例えば2019年分まで一律38万円とされていた基礎控除は、2020年分から合計所得金額に応じて0~48万円と変更された。
一般会社員と比べて所得が高めの個人事業主や事業オーナーは、小規模企業共済やiDeCoなどの掛金を所得から控除できる「小規模企業共済等掛金控除」を活用するのも良いだろう。
税額控除
税額控除というのは、課税所得に税率をかけて算出された所得税額から直接差し引くことができる控除のことだ。所得税額から直接差し引くため、より高い節税効果を期待できる。例えば事業関係のものの一つが「試験研究を行った場合の所得税額の特別控除」だ。これは、事業所得の金額の計算上必要経費に算入される試験研究費がある場合、試験研究費の一定割合の金額をその年分の所得税額から控除できるものだ。
また2023年までの措置だが「給与等の引上げ及び設備投資を行った場合等の税額控除」というものもある。試験研究や設備投資、雇用などを行う際は、税額控除が適用されるように要件などを確認しておくといいだろう。なおこれらの控除の適用を受けられるのは、青色申告者に限られる。
所得税の計算方法
ここまでの説明で所得税額の大まかな計算の流れは理解できただろうか。まとめとして再度確認しておこう。
- 自分の得た収入の内容によって所得の種類を振り分ける
- 該当する所得の種類によって所得額を計算する
- 総合課税のものを合算する(分離課税のものは別途計算)
- 総所得金額から適用される所得控除の金額を差し引き、課税所得を計算する
- 課税所得額に応じた所得税率を乗じて所得税額を計算する
- 所得税額から適用される税額控除の金額を差し引き、納付税額を計算する