投資の第一歩として「つみたてNISA」を始める人が多くなりましたが、深く理解しないままスタートしたことで後悔する人も増えているようです。前回に引き続き今回も、新刊『これだけやれば大丈夫! お金の不安がなくなる資産形成1年生』の著者で、元銀行員、資産運用YouTuberの小林亮平氏が、YouTubeやSNSのフォロワーから多く耳にしたつみたてNISAの失敗例をご紹介します。

失敗例(1):金融機関を適当に選んでしまった

NISA口座は同じ年に複数の金融機関で利用することはできません。つまり、ある金融機関でNISA口座を開設した場合、その年はもう他の金融機関でNISA口座は開設できないのです。

金融機関選びで失敗したという人の声はよく聞きますが、なぜ、このようなことが起こるのでしょうか。主な理由として、つみたてNISA口座で選べる商品ラインナップの多様さが指摘できます。つみたてNISAの対象商品は、低コストなど一定の要件を満たした投資信託190本程度に厳選されていますが、金融機関によって取り扱いの商品数が異なります。

たとえば、ある大手銀行などでは、つみたてNISAの取扱商品がたった数種類しか用意されていません。低コストで人気のeMAXIS Slimシリーズは、対面販売の銀行や証券会社などでは、つみたてNISAの商品ラインナップに入っていないこともあります。

「ちょっとくらいの手数料の差なら別にいいか」と思う方もいるかもしれませんが、試しに、年間の保有コストである信託報酬の違いで、どれくらいリターンに差が出るかを見てみましょう。

以下の資料は、信託報酬が「年0.1%の投資信託」と「年1.0%の投資信託」で、投資元本100万円、運用期間30年、信託報酬控除前の運用利回りを年5%とした時の比較です。最終的なリターンは95万6,751円もの差が出ているので、ほんの少しのコストの違いでも、長期の運用成績に与える影響は大きいことが分かります。

信託報酬の差
投資元本100万円、運用期間30年、信託報酬控除前の運用利回りを年5%と仮定し、信託報酬が「年0.1%の投資信託」と「年1.0%の投資信託」のリターンの違いを比較(税金・手数料等は考慮せず)

つみたてNISAは非課税期間の長さを活かした長期投資が前提となってくるため、少しでも低コストの投資信託を選ぶのがベターと言えます。私のおすすめはネット証券です。楽天証券やSBI証券などであれば、つみたてNISA対象商品がほぼラインナップされています。

ちなみに、つみたてNISAは金融機関の変更が年単位で可能なので、もし変更する年に、まだ変更前の金融機関のつみたてNISA口座で商品を購入していなければ、9月30日までに手続きを行えば年内に切り替えができます。ただし、変更する年につみたてNISA口座で商品をすでに購入していた場合、もしくは9月30日を過ぎて手続きした場合は、翌年からの切り替えになります。

また、仮にA銀行のつみたてNISA口座ですでに購入した商品がある場合、それはB証券のつみたてNISA口座には移せないので、そのままA銀行のつみたてNISA口座で引き続き運用するか、売却するかの選択肢になることは知っておきましょう。

つみたてNISAの金融機関変更

失敗例(2):高リスクの人気商品を安易に選んでしまった

つみたてNISAを始めようと思った際、人気どころの投資信託をとりあえず選んでおこうと考える人は多いのではないでしょうか。たとえば全世界株式や米国株式などの投資信託は、つみたてNISAにおける人気商品なので、何となく投資している方をよく見かけます。

しかし、これらの商品は株式のみで構成されているため、比較的ハイリスク・ハイリターンで、値動きが大きくなってしまう点にはじゅうぶん注意が必要です。リスクというと危険性のような意味合いで捉えがちですが、投資の世界では、リスクというのは得られるリターン(利益)の振れ幅のことを指します。リスクが大きいとそれだけ値動きが激しくなるため、たくさん儲かる時もあれば、大きく損する時もあることをまずは知っておきましょう。

リスクとリターンのイメージ

リスクの高さを承知して、全世界株式や米国株式などの投資信託を選ぶ分にはよいのですが、単に「人気だから」という理由だけで、安易に投資している人が多い印象を受けます。そのため、相場の下落時に、自分の予想以上の損失を抱えて、怖くなって投資をやめてしまったという声をしばしば耳にします。

そうならないよう、つみたてNISAで投資する商品は、基本的にはリスクとリターンの考え方をもとに選ぶようにしましょう。全世界株式や米国株式などの投資信託はハイリスク・ハイリターンで値動きは大きくなりますし、債券が多い投資信託ならローリスク・ローリターンで値動きは小さくなる傾向があります。ここで大事なのは、どれだけ儲けられるかより、どれくらいの損失まで自分が我慢できるかを考えることです。

これをリスク許容度と言いますが、多くの場合、投資が続かないのは、リスク許容度を超える損失を抱えてしまった時なのです。「〇%あるいは〇万円のマイナスまでなら我慢できる」といった具合で、自分のリスク許容度がどれくらいなのかを把握しておくのが重要です。

ただそうは言っても、自分がどれくらいの損失まで我慢できるかは、実際に投資を始めてみないと分からないと思う方も多いはずです。そういう人は、まずリスクが高い商品から低い商品まで少額で投資をしてみて、値動きを比べながら運用することで、自分のリスク許容度のイメージトレーニングをするのがいいでしょう。

運用を続けているとそれぞれの運用成績に差が出てくるので、高リスクの商品は低リスクの商品と比べてどんな値動きになるかを肌で感じて、投資に慣れることもできます。私はこれら3銘柄に月1,000円ずつ積立をしていますが、値動きに違いが出て分かりやすいと思います。

高リスク商品は、eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)がおすすめで、先進国、新興国合わせて50カ国の3,000銘柄もの株式に手軽に分散投資ができます。ちなみに、全世界株式の中身の半分以上は現状、米国株が占めています。米国株はAppleやAmazonなど、今を時めくIT企業の牽引もあって人気が高いので、米国株のみで運用したいのでしたら、eMAXIS Slim米国株式(S&P500)を選ぶといいでしょう。

中リスク商品は、eMAXIS Slimバランス(8資産均等型)という株式や債券、REIT(不動産投資信託)などでバランスよく構成されている投資信託がよく選ばれています。ただ2020年のコロナショックの際、8資産均等型はREITの回復が鈍かったことで全世界株式以上に損失が大きくなった時もあったので注意しましょう。

低リスク商品は、三井住友・DC年金バランス30(債券重点型)がおすすめです。つみたてNISAでは債券のみで運用する投資信託を選ぶことはできないのですが、この銘柄は債券が多めの構成になっているので、比較的値動きが安定しています。

つみたてNISAおすすめ3銘柄

これら3銘柄で6カ月ほど運用してみて、それぞれのリスクの違いがだいたい分かった後は、自分のリスク許容度を改めて考えた上で、商品や積立額をアレンジしてみるといいでしょう。たとえば長期運用を前提として、もっとリスクを取ってみたいと思ったら、eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)の積立額を増やすのもアリです。

私がこの3銘柄で2020年のはじめから6カ月間運用した実績を載せておくので、参考にして下さい。2カ月目にコロナショックで大きく下落したので、それぞれの値動きに差が出ています。

ついたてNISAのおすすめ3銘柄
2020年1~6月までの運用実績をもとに算出。運用実績については毎月1日に、各銘柄に月1,000円ずつ積立注文を行った際の損益率を掲載

このように「人気だから」という理由だけで高リスクの商品を選ぶのではなく、自分がどれくらいのリスクを取っていきたいかを、商品選びの基準としましょう。どれくらいの損失まで自分が我慢できるかのリスク許容度がまだ分からないうちは、リスクが高いものから低いものまでを幅広く持ち、それぞれの商品の値動きを比べながら運用してみることをおすすめします。

失敗例(3):利益が出ていたのですぐ売ってしまった

最後に、つみたてNISAで利益が出ていたので、すぐ売却してしまった失敗例を見ていきましょう。

最近は株式相場が好調なこともあり、「つみたてNISA口座で運用していた商品が値上がりして含み益が出ていたので売ってしまったけど、後悔している」という話をよく聞きます。

利益が出たという意味ではけっして失敗ではないのですが、つみたてNISAは最長20年と長い非課税期間があるので、すぐに売ってしまうともったいないと言えます。「運用を長く続けることで利益が利益を生む」という複利効果の存在を知っておきましょう。

お金の増え方には単利と複利という、2種類の計算方法があります。単利は投資元本に対してのみ利息がつきますが、複利は元本と利息の合計に利息がついて、どんどん増えていきます。

たとえば元本が1万円として、年5%で増える金融商品があったとします。単利は元本の1万円に対してのみ年5%で増えるので、利息は毎年変わらず500円です。一方の複利は、1年目は元本の1万円に対して500円の利息になるのは単利と同じですが、2年目は元本と利息の合計1万500円に対して年5%で増えるので、利息は525円になります。

複利の方が25円増えたことからお分かりの通り、時間をかければかけるほど、複利の効果はどんどん効いて、利益は雪だるま式に大きくなっていきます。仮に年間40万円、運用期間20年、運用利回り年5%としたら、5年目はまだ約27万円の利益ですが、20年目には複利効果もあって約558万円の利益に増えています。つみたてNISAなら、この20年間の運用で得た利益が非課税になり、まるまる受け取ることができるのです。

ただ、実際はここまで綺麗には増えず、時には暴落してマイナスになることもあるので、上下に値動きしながら長い期間に渡って複利が効いていくと思えばいいでしょう。このように、長期投資なら複利の恩恵が期待できるので、つみたてNISAにおいては、利益が出ていてもすぐに売却せず、気長にじっくりと運用を続けていくことを心がけましょう。

長期投資と複利の恩恵

以上、最初にお話しした通り、つみたてNISAで投資を始める人が多くなってきたからこそ、深く理解しないままスタートしたことで、後悔する人も増えています。そうならないよう、今回紹介した失敗例を忘れず、今後の運用に活かしていただければ幸いです。

小林亮平

小林亮平
1989年生まれ。横浜国立大学卒業後、三菱UFJ銀行に入行。退職後、ブログやSNSで資産形成(つみたてNISAやiDeCo、楽天経済圏など)の入門知識を発信。現在はYouTube「BANK ACADEMY」を運営し、チャンネル登録者は37万人を超える。著書に『これだけやれば大丈夫! お金の不安がなくなる資産形成1年生』がある。