本記事は、平尾丈氏の著書『起業家の思考法 「別解力」で圧倒的成果を生む問題発見・解決・実践の技法』(ダイヤモンド社)の中から一部を抜粋・編集しています
「仕事で成果が出ない人」9つの特徴
正解が通用しなくなったことで、何をやっていいかわからないと悩んでいる人が多くなっています。頑張っているのに仕事で成果が出ないという人も多数存在します。
ここで、そのような人たちが陥っている、特有の行動原理や思考習慣を整理してみましょう。
それらの特徴を認識することで、成果が出ない状態からの脱却の契機をつかんでいただければと思います。
成果が出ない(1) 考える前にとりあえず行動している
何をやっていいかわからない人たちの次に多いのが、考える前にとりあえず行動している人だと思います。
「走りながら考える」と言われるように、最近ではビジネスパーソンが目指すべき行動様式として評価されている面もあります。
しかし、「とりあえず、やってみよう!」と打ち手を1つしか考えないまま、なんとなく行動してしまうパターンが多く見られます。
そのため、失敗したときの「次の一手」がありません。だから、そこで立ち止まってしまう。そして立ち止まっている間に、時間ばかりが過ぎて成果が出せないのです。
失敗した部下に「何をやったの?」と聞くと、こんな答えが返ってきます。
「とりあえず1回やったんですけど、うまくいかなくて……。いろいろ考えているうちに、いまになってしまいました」
これは、若い社員によくある現象です。
もちろん、成功を狙ったうえでの失敗は構いません。ただ、失敗が起こるという前提に立ち、大きく転ばないように準備し、複数の打ち手を考えておけば、失敗は小さくて済みます。そうすれば、時間を無駄にせず、次の手を打つことができるのです。
しかし、とりあえず行動する人は準備をしていません。最近は失敗してもいいから、やってみることが大事とよく言われます。それを別に失敗しても大丈夫と勘違いし、何も考えずに失敗してしまうのです。
とりあえず行動して成功したことは、私の経験では一度もありません。いきなり行動すると、たいていは失敗します。ビジネスは決して怖いものではありませんが、それほど甘いものでもないからです。
行動する前には、時間をかけて複数のプランを考えなければなりません。
プランがないまま行動しても、果実を得ることはできません。
成果が出ない(2) 環境や他人のせいにして自分が不運だと考えている
日々、ビジネスの現場で感じるのは、仕事に対してネガティブな感情を抱く人の多さです。
「こんな仕事はやりたくない」 「この仕事は会社の花形じゃない。売り上げが低い商品なんてやりたくない」 「希望しない部署に異動させられて、やりたくない仕事をやらされている」
厳しいかもしれませんが、起業家の目で見ると、そういう人は早くその会社を辞めたほうがいいのかもしれません。
愚痴を言っても誰も助けてくれないのです。悲劇のヒロインを演じてみせても、現実は何も変わりません。
私はネガティブが嫌いなので、すべてをポジティブに変換させます。
「花形の商品でないのであれば、むしろ自由度が高いかもしれない。だとしたら、自分のやりたいようにやって成果を上げられる」
「人気のない部署であれば、締めつけは厳しくないかもしれない。だとしたら、すべての業務を任せてもらえるかもしれない」
違う観点から見ると「おいしい」仕事になるかもしれません。仕事では、そういう発想の転換が大事です。
私の周囲にいる成功した起業家のなかには、企業に所属して最初のミッションで「辺境の地」に追いやられた人が数多くいます。
辺境の地は会社の中心となる部署から外れたところを意味します。そのぶん彼らは、若いうちから自分で考えて意思決定できる状況に置かれました。それを縦横に活用し、成果を上げたのです。
自分で考えて意思決定できる仕事の早い人は、非常に高く評価されます。また、ほとんどの業務を自分で行うので、手柄を上司に横取りされることもありません。愚痴を言って、幸運になることはただの1つもありません。
成果が出ない(3) 一手しか考えず、それが間違ったらいやになっている
準備をしているときに、打ち手が1つ見つかったら、それでOKと考えてしまう。これは「正解病」です。正解は1つしかないという思考が染みついているのです。
正解がないビジネスにおいては、打ち手を複数考えて出すのが大前提となります。1つで満足してしまっては準備不足です。起業家は、可能な限りのプランを出してくれる人を、価値が高いと判断します。
一手しか考えられないのは、競合を意識していないからかもしれません。未来に目を向ける必要もあります。他の要因が入ってくることを想定することが重要です。
「自分」と「何か」という一対一の対立軸で物事を考えるのではなく、競合や時間軸も含め世の中を複層的に捉えることが求められます。
自分中心で生きている人は、自分が「絶対解」です。つまり、自分が「これが答えだ」と思い込むと、それ以上考えなくなってしまいます。それでうまくいくと思っているのかもしれませんが、世の中はそれほど都合よく回りません。やがて、自分の答えが間違っていたという結果が出た途端、いやになって投げ出してしまうのです。
成果が出ない(4) 向いていないところで無駄な努力をしている
ずっとやっているのに芽が出ない。それは、自分に向いていないことを続けているために、成果が出ていない可能性もあります。
理想の自分像を持っている人は多いと思いますが、それが本当に自分に合った理想かどうかはわかりません。なりたい自分ではあっても、なれる自分かどうかは未知の世界です。なりたい自分を追い求めるのも、それはそれで人生です。しかし、いつまで追い求めるかの時間軸とタイミングは、早めに決めておくほうがいいと思います。
たとえば、1年で芽が出なければやめるなど、自分で時間を決めておくことをお勧めします。その時間も今週、1ヵ月、半年、1年、3年、5年など、内容によって最小単位で決めておくのがポイントです。期限は自分次第でいくらでも延ばせるうえ、固執するあまり仕事が回らなくなってしまうからです。
「やりたいこと」と「やらなければならないこと」も、ずれるものです。
努力と時間を無駄にしないためにも、有名な「ジョハリの窓」のうち、自分には見えず、相手にしか見えない「盲点の窓」を早めに知っておくといいでしょう。
自分を見てくれる人を見つけておくと、まったく考えもしなかったアドバイスや指摘を受けることにつながり、視野と世界が広がります。他人にしか見えないものを、他人に指摘してもらえる経験は貴重です。
もちろん、人間の可能性は素晴らしいものです。最初はうまくいかなくても、後から才能が開花するケースは多々あります。向いていないと思っても、突然できるようになることもあるので、頑張ることは否定しません。
しかし、人間の個性は豊かです。私は面接をする機会が多いのですが、本人の希望する職種や仕事以外にも、さまざまな方向にきらりと光るものを感じることが少なくありません。
自分に向いていない世界で無駄な努力を積み重ねるのではなく、他人から評価される世界へ目を向けてみてはいかがでしょうか。
成果が出ない(5) 陳腐化するスキルばかりを学んでいる
「若いときは、スキルを身につけるべきだ」
よく言われることですが、優先して習得するべきスキルと、そうではないスキルがあります。
基本的に、特定の仕事や専門的な技術である「テクニカルスキル」(プログラミングやデザインスキルなど)はすぐに陳腐化するので、学び続けなければ失われていきます。テクニカルスキルは時代背景とともに内容も変化するので、蓄積が追いつかない。そのため、学習にばかり時間を取られることになります。
**それよりも、蓄積されていくスキルを先に身につけるほうが圧倒的成果を出すための基礎体力が強くなります。それは、会社や職種が変わっても持ち運びが可能な「ポータブルスキル」です。
リーダーシップ、問題解決力、プレゼン能力などのポータブルスキルは、何を行うにもベースとなるスキルです。最初にマスターしておけば陳腐化しないので、それを土台にさまざまなスキルを積み上げることができます。
成果が出ない(6) 「優等生案」で止まっている
学校の試験では、100点を取れば終わりです。
社会人になってからも、仕事は100点満点だと考えている人がいます。その前提で常に80点を取れる人は、自分がそれなりの結果を出していると勘違いしています。
しかし、世の中は学校の試験とは違います。100点の試験でも、500点、1,000点という突き抜けた結果を出す人がいます。「100点満点の試験」ではなく、「青天井に得点が取れる仕事」に舞台を移しているのです。
では、点を取れる優等生案を脱し、突き抜けた結果を出すにはどのような条件が必要なのでしょうか。
まずは、自分の問題ばかり見るのではなく、組織の課題や業界の課題、社会の問題に目を向けることです。自分しか見ていない人は、より大きな問題を発見できず、天井を超えるような成果を出すことができません。自分が属している組織に何ができるのか、周りの人たちに何がプラスになるのか。そういう視点を持つことで、いままで見えていなかった問題を発見することができます。
とはいえ、あまりに問題が大きいと解決までに手間も時間もかかりすぎてしまうので、自分の近くの人の問題から見るようにしていくといいでしょう。
成果が出ない(7) 何度も失敗してしまう
失敗から学んでいない人は、仕事がうまくいきません。
失敗は学ばない限り価値がなく、同じ過ちを繰り返してしまいます。
ただ、失敗したまさにそのときは、なぜ失敗したのか気づいていないものです。終わってから誰かに指摘されたり、効果が出なかったりするなど、時差があります。
さらに、終わってしまったことは仕方がないという気持ちがあると、自分で失敗を分析できず、原因に気づけません。そのまま放置するため、同じ失敗が繰り返されるのです。
失敗によって成功の機会を失っていると気づくべきです。
成功していたら、失敗から学ぶプロセス自体も必要なく、新たな「いい仕事」ができます。仕事の報酬が仕事になっているはずなのです。そのような観点を持たない限り、失敗はなくならず、成果を出すことは難しくなってしまいます。
成果が出ない(8) 自信がない
自信がないのは、成功していないからです。
成功しないと褒められることがありません。褒められたことがない人には自己肯定感は芽生えず、自信も育まれません。
また、自分に向き合わないと、自己肯定感が高まりません。
自分に向き合い、自分の強みを知っていると、自信が出ます。社会に出ると仕事に追われ、自分の強みをつくる時間を持つことができません。自分の強みを磨きながら仕事をするのは負荷がかかります。その点で、先に強みを自覚できた人が有利になります。
「自分はこれが得意だからやらせてほしい」と言えるからです。強みがあれば手を挙げることができます。しかし、自分の強みがわからないままだと、与えられる仕事を待つしかなくなり、自信も失っていきます。
自信を持つには、自分の強みと自分がやりたいことをマッチさせていくしかありません。それを独りよがりにしないためには、可能な限りアウトプットの機会をもち、どのくらい得意なのか言えるようにすることが重要です。同じことが得意な人は、他にいるかもしれません。
才能より習慣に勝るものはありません。強みとやりたいことをマッチさせるには、いかにそれを習慣化するか、当たり前のことにするか、ライフスタイルの中に組み込むかを考えなければなりません。
私も20代のころ、いまの自分の強みを把握したうえで、理想の自分に備えておくべき能力は何かを考え、そこから逆算してその能力を身につけるために必要な仕事を棚卸していました。
自信がない人はまず、いまの自分が持っている強みは何かを書き出してみるといいでしょう。そのうえで、なりたい自分に必要な能力も考えてみてください。
待っているだけでは、自分のなりたい姿に必要な能力を身につける仕事には恵まれません。成果を出しやすい得意な仕事に意識して手を挙げ、なりたい自分に必要な能力が育まれる仕事を意識してやらせてもらえるように働きかけましょう。
成果が出ない(9) 適性がないと逃げる
苦手な仕事や嫌いな仕事から、「自分には適性がない」という理由で逃げている人も成果が出せません。
自分の適性を探しているうちに、成長の機会を逃してしまうからです。
自分の適性を考えるとき、通常は主観になってしまいます。しかし、外界を見て得た客観とのギャップを埋めない限り、自分の適性は相対的にわかりません。他人と比較したとき、自分が付加価値を出せているのか把握するべきです。
また、ライバルが何人いるかも非常に重要だと思います。同じことをやれる人が多数いたら、やらなくていい。100人ぐらいしかできないのであれば、希少性があるので絶対にやるべきです。
以前、じげんへの転職面接で次のような自己アピールをした人がいました。
「私は財務系のコンサルティングファームから、戦略系のコンサルティングファームに転じています。財務と戦略を両方できる人は少ないと思います」
私は次のような質問をしました。
「日本で何人ぐらい、それをできる人がいると言われていますか?」 「そのうち、あなたは何番目に優秀だと思いますか?」 「他の人と異なるあなたの能力は、じげんにどのように役に立つのですか?」
その人が「ハッ」という顔をされたことをよく覚えています。
自分以外の何かとの関係性でしか、自分の適性はあぶり出せません。自分の外と関係性を図るには、アウトプットが必須です。アウトプットをしていると、自分がいやというほどわかります。
最初の一歩としては、適性など考えず、もっとも大きな問題に向き合うべきです。1,000点の問題に向き合い、それを解決すれば1,000点を超える仕事が舞い込んでくるようになります。その積み重ねが、他人と比較可能な自分の適性をつくり出すのです。
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