本記事は、平尾丈氏の著書『起業家の思考法 「別解力」で圧倒的成果を生む問題発見・解決・実践の技法』(ダイヤモンド社)の中から一部を抜粋・編集しています
起業家の思考法の核となる別解力
問題を発見したら、いよいよ問題を解決するプロセスに移ります。本書の肝となる別解力です。
ここでは、別解力の詳細、別解を生み出すときの具体的方法について解説していきます。まず別解力を構成する三つの要素「自分らしいやり方」「優れたやり方」「別のやり方」を一つひとつ見ていきます。続いて、なぜ2つの組み合わせでは成果が出ず、3つすべてを組み合わせたときに別解になるのかをお伝えします。そして、別解を出すことが難しいと思われている理由と、別のやり方を引き出す31のヒントを紹介します。
とても簡単な手法なので、難しく考えずに頭を柔らかくして取り組んでいただければと思います。
別解力とは「自分で問題や課題を発見し、その答えのない問いに対して自分の持っている知識や経験を活用して、自分なりの答えを見出していく力」です。別解は下の図5に書かれた3つの要素が重なることで生まれます。
別解を構成する3つのやり方
自分らしいやり方
自分の経験、知見、強み、夢中になれること、価値観などを反映した自分ならではのやり方を「自分らしいやり方」と定義します。
別の言い方をすれば「オリジナル案」です。
自分らしいという意味は、自分探しの旅で見つかるようなものではありません。ここまでお伝えしてきた通り、どのような分野でも構わないのでチャレンジしてアウトプットすることで見つかる、他の人と差別化できる自分らしさです。大会やコンペに出ると、必ず順位が出ます。つまり成績や評価が出ます。
プレゼンで1位になったら、少なくとも参加者のなかでもっとも秀でている証明となるので、自分のプレゼン能力は相対的に高いと認識できます。ただ、それが狭い世界での1位にすぎなければ、別の機会にさらに上のステージでアウトプットしてみると、自分の強みをよりメタ認知できます。
誰かに評価してもらえたり、客観的な結果が出る機会を体験しなければ、いつまで経っても自分らしさを把握することはできません。
野球の試合に出れば、自分はバッティングが得意なのか、ピッチングが得意なのか、足が速くて盗塁が上手いのか、守備が上手いのかがわかってきます。
歌を歌うにしても、他人の前で歌わなければ自分が上手いのかわかりません。仮に上手いと言われても、点数の出るカラオケで歌わなければ、どのくらい上手いのかが客観的にわかりません。
まずは、アウトプットの場に立つことで自分らしさを見つけ、それを活かした自分ならではのやり方を確立していくことが必要です。しかし、それだけでは絶対に差別化できません。
「歌が上手いから歌手になる」 「足が速いから盗塁を極める」
そう考えても、悲しいかな、自分と同じ強みや夢中になれることを持った人は、世の中に数えきれないほどいます。自分らしいやり方だけでは、自分と同じ答えが世の中にあふれていることになります。
そこで、他の2つのやり方と組み合わせることが必要になるのです。
優れたやり方
「大きい、多い、早い、安い、高い」など、世の中に良いものとして受け入れられるやり方を「優れたやり方」と定義します。
別の言い方をすれば「優等生案」です。
ただし、これは替えがきく、陳腐化するというネガティブな側面も露呈しています。
私がビジネスに関わった20年においては、次の5つのやり方しか評価されませんでした。
(1)早くやる (2)コストを低くする (3)飛び抜けた成果を出す (4)成果が出なくても規格外な量をやる (5)新しいこと、誰もやっていないことをやる
早くやる、コストを低くする、飛び抜けた成果を出す、成果が出なくても規格外な量をやるの4つは、優れたやり方の代表格と言えます。しかし、これは誰もがやるので、相対的な比較でしか評価されません。
実際、早さ、コスト、成果、量は定量で測れます。定量で測れば、その差分だけ優れていることが明白です。しかし、定量化できるということは市場が特定されて競合が数多く存在し、陳腐化するというネガティブな側面につながります。
この優れたやり方で満足している人が極めて多いと感じます。
ほとんどの人が、優れたやり方を教えてもらったり、優れたやり方をしている人の真似をしたりして、自分に取り入れようとします。ところが、自分の強みや夢中になれることと一致しないため、なかなかうまくいきません。
優れたやり方で結果を出している人は、その人の個性や強みも生かしています。個性や強みが違う人が、同じやり方になるわけがありません。
だからこそ、他の2つのやり方と組み合わせる必要があるのです。
別のやり方
優れたやり方の正反対をやってみる、自分の強みや価値観を無視してみるなど、固定観念を脱するやり方を「別のやり方」と定義します。
別の言い方をすれば「逆転案」というイメージになります。先ほど触れなかった(5)の新しいこと、誰もやっていないことをやることです。
私の経験では、(1)〜(4)の優れたやり方と比べて、(5)の新しいこと、誰もやっていないことをやるのほうが評価されてきました。おそらく、優れたやり方と違って定量化できないために相対的な評価ができず、インパクトが強くなるからでしょう。
新しいこと、誰もやっていないことをやると、自分だけが違うことをやるために価値以上に評価されます。
みんながマルに飛び込んで失敗しているときに、ひとりだけバツに飛び込むと、ひとりだけ未来が見えているように見られ、より差を生むことができます。すると、必要以上の価値が生まれているように錯覚され、差分が圧倒的になるのです。
この別のやり方が別解力の要となります。とはいえ、新しいことをしなければならないと身構える必要はありません。才能やセンスも不要です。
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