この記事は2022年5月24日に三菱総合研究所で公開された「消費者物価指数(2022年4月) ―― 消費税の影響を除けば約30年ぶりの上昇率」を一部編集し、転載したものです。


消費者物価
(画像=PIXTA)

今回の結果

2022年4月の消費者物価指数(総合)は、前年同月比+2.5%と、前月(同+1.2%)から伸びが加速。消費税率引き上げの影響を除けば、1991年12月以降で最も高い水準となった。

生鮮食品を除く総合指数も、同+2.1%にまで上昇した。内訳をみると、主に、ウクライナ情勢の悪化を受けた資源・エネルギー価格の高騰や、食料品価格の上昇が牽引している。また、2021年3月の携帯電話料金引下げによる影響が一部剥落したことも、物価上昇率を押し上げた(図表1)。

生鮮食品を除く総合(寄与度別)
(画像=出所:総務省「消費者物価指数」より三菱総合研究所作成)

さらに、本年入り後の円安の進展もあり、その他品目でも価格上昇がみられている。主要分類別の動向をみれば、家具・家事用品、教養娯楽(テレビ、パソコン、タブレットなど)といった多くの分類で前年同月比プラスとなった(図表2)。

主要分類別の動向
(画像=出所:総務省「消費者物価指数」より三菱 総合研究所作成)

個別品目毎の物価上昇率の分布では、前年同月比マイナスの品目数が減少し、同+1%~2%、同+2%~5%の範囲に含まれる品目が増加しており、価格引き上げの動きが広がりつつある状況が窺える(図表3)。

個別品目毎の物価上昇率の分布(食料および光熱・水道を除く)
(画像=出所:総務省「消費者物価指数」より三菱総合研究所作成)

基調判断と今後の流れ

消費者物価は、資源・エネルギーや食料の価格上昇に加え、携帯電話料金引き下げによる影響の剥落もあり、上昇ペースが高まっている。

先行きについては、資源・エネルギーの価格が高水準を維持するなか、2022年度末にかけて、生鮮食品を除く総合指数が前年比+2%強で推移するとみる。

但し、現下の物価上昇は、素原材料価格の上昇等を受けた「コストプッシュ型」のインフレ圧力による部分が大きく、需要回復・賃金上昇等の「デマンドプル型」の要因は力を欠いている。

今後、原材料コスト増が企業収益の悪化や実質賃金の減少に繋がり、需要が減退する場合には、コストプッシュ型のインフレと需要の停滞が同時に進行する可能性がある。

菊池 紘平(きくち こうへい)
政策・経済センター
メガバンクで国内外のマクロ経済動向や金融機関経営等に関する調査業務に従事した後、2022年より現職。国内研究機関への出向や米国駐在等の経験も活かし、分かりやすい情報発信・分析を行う。