スシロー、悪質な釣り広告で信用失墜 やらかさないために知っておくべき景品表示法
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消費者庁は2022年6月9日、回転寿司店「スシロー」を展開する「あきんどスシロー」に対して措置命令を出した。広告で大々的に宣伝した商品の在庫が足りず、十分に提供できなかったことが「おとり広告」に当たると判断された。

「おとり広告」って何??

消費者庁の発表資料によると、あきんどスシローによる行為は、景品表示法第5条第3号(おとり広告)に該当する。消費者庁のウェブサイトによると、「おとり広告」とは、商品やサービスが実際には購入できないにもかかわらず、購入できるかのように不当表示を行うことである。

NHKの報道によると、スシローは2021年9~10月、キャンペーンとして期間限定の「うに」を1貫110円、3種盛り528円で売り出した。ところが、在庫はすぐになくなり、全国の9割超に当たる500余りの店舗で、一時的に提供を取りやめることになった。

これだけでは終わらない。同じ2021年の11~12月には、十分な準備態勢を整えていないまま「豪華かにづくし」などと銘打ったキャンペーンを実施。販売初日から商品を提供できない店が相次ぎ、583店舗で予定通りに販売できなかったという。

つまり、広告に記載した商品の準備が不十分な状況なのに、さも豊富に在庫があるかのように大々的なキャンペーンを打ったことが、実態とかけ離れ過ぎていると指摘されたわけだ。消費者庁は今回、あきんどスシローに対し、再発防止策を講じて役員・従業員に周知徹底させるほか、以降同様の表示を行わないことを求めた。

過去最高の売上高を更新中

今回のスシローの一件は、消費者からすれば大きな裏切り行為に当たる。スシローは定期的に期間限定商品を開発し、季節に応じたメニューを提供している。中には、和洋中の有名シェフとコラボレーションした商品もあり、大きな来店動機となっている。

その期間限定商品が、実はほとんど店になく、多くの来店客は食べられなかった。しかも、そんな品薄の状況を把握していたにもかかわらず、スシローは広告をやめなかった。客側からすれば、在庫がないのはともかく、「あるように見せかけられた」ことに憤りを感じても無理はない。不信感から客足が遠のく可能性はある。

ここで、企業としてのスシローの業績や財務状況を見てみよう。あきんどスシローの親会社FOOD & LIFE COMPANIESは2021年9月期の売上高、各利益が過去最高だった。コロナ禍で飲食市場が縮小する中、経済誌などでは数少ない勝ち組企業として紹介されており、今期は利益こそ下がるものの売上高はさらに増加する見通しだ。

飲食業ということで売上高営業利益率は低く、直近は7%前後で推移。自己資本比率もそれほど高くなく、2021年9月時点で21.3%だ。有利子負債倍率は少しずつ高まり、2022年3月時点で3.18倍となっている。もっとも、剰余金は495億円あり、近年は一貫して100億円以上の営業・経常利益を通年で計上していることから、ちょっとやそっとのことで経営が傾くことはなさそうだ。