中国のマイニング市場撤退で、ライバル企業の設備投資が加速
さらに懸念されているのは、一部のマイニング(採掘)業者が事業運営や拡大の資金として、マイニング設備(機器・装置など)を担保に、推定総額40億ドル(約5,419億9,496万円)もの融資を受けている点だ。主な貸し手は、ギャラクシー・デジタル・ホールディングスやBlockFi、バベル・ファイナンスなどの暗号資産融資企業である。
2021年5月、世界最大のマイニング大国だった中国において、マイニング禁止が発令されたことにより、他国のマイニング業者が一斉に市場競争力の強化に乗り出した。ビットコインの高騰や低金利環境など、資金を調達して大規模な設備投資を行うには絶好の時期のように見えた。
クリプトゲインなどのメディアによると、米デジタル資産テクノロジー企業、マラソン・デジタルは2021年10月、設備投資のために米シルバーゲート銀行から1億ドル(約135億6,267万円)の融資を確保したと言われている。その2ヵ月後に、マイニング史上最高額の8億7,910万ドル(約1,192億2,944万円)相当のASIC購入を発表した。
その他、コア・サイエンティフィックやブラックキャップ、グリフォン・デジタルマイニングなど、北米を中心とする多数のマイニング企業がマイニング機器担保融資を利用して、続々と事業を拡大した。
一部業者はすでにデフォルト秒読み
しかし物事は時として、順風満帆にはいかないものだ。長引く暗号資産市場の低迷を受け、返済に窮する業者が出始めた。
最近では、シンガポールを拠点とするヘッジファンド、スリー・アローズ・キャピタル(3AC)が、BlockFiなどからのマージンコールに応じることができず、担保で債務を清算していたことが明らかになった。
さらに、6月21日には別の債権者であるカナダの暗号資産ブローカー、ボイジャー・デジタルが、3ACへの融資6億5,000万ドル(約884億8,515万円)が貸し倒れとなるリスクが高まっていることを明らかにした。
3AC は4月時点で約30億ドル(約4,083億9,302万円)を運用していたが、暗号資産の暴落で多額の損失を被った。共同創設者のカイル・デイビス氏は17日、ウォール・ストリート・ジャーナル紙の取材で、「資産売却や他の企業による救済などの選択肢を模索している」ことを認めた。
大手が続々とビットコイン売却
逆風の中、一部の業者が生き延びる手段として選択したのは、保有しているビットコイン(BTC)の売却だ。
コア・サイエンティフィックのような米最大級のマイニング企業ですら、運営コストを補うために2,000BTC以上を売却する状況に追い込まれた。一方、ビットファームはギャラクシー・デジタル・ホールディングスから借り入れている1億ドル(約136億1,250万円)の一部返済のために、1,500BTCを売却した。同社はニューヨーク・デジタル・インベストグループからも融資を受けている。
JPモルガン・チェースのアナリストの予測によると、マイニング収益性が近いうちに改善されない場合、業者によるビットコイン売りの圧力は第3四半期も継続する可能性が高いという。