富裕層や機関投資家に限定されているプライベート・エクイティ投資の“民主化”を目指す動きが、欧米を中心に急拡大している 。最低投資額を大幅に下げ、テクノロジーを駆使して利便性を高めることにより、個人投資家がアクセスしやすい環境を構築するという潮流だ。近い将来、「1ドルから投資できるプライベート・エクイティ・ファンド」が登場するかも知れない。
プライベート・エクイティ・ファンド市場に大きな変化
市場が不安定な現在、富裕層がプライベート・エクイティ・ファンドへの関心を強めている点に関しては、前回の連載「プライベート・エクイティ・ファンド市場が活発化 ―― 巨大ファンドの立ち上げも」でレポートした。リスクヘッジとして効果的で、かつリターンも大きいというのが主な理由だ。
しかし、プライベート・エクイティ・ファンドは最低投資額が通常10万~20万ドル(約1,402万~2,803万円)と高額な上に、管理手数料(運用残高の2%前後)と成果報酬手数料(運用利益の最大20%)も必要となる。一般の個人投資家にとっては大金だ。公開市場とは異なり情報が限定されていること、投資家を保護する規制が緩いことも、プライベート市場へのアクセスを一握りの投資家の“特権”にしている理由として挙げられる。
ところが、投資市場にもサステナビリティ(持続可能性)やインクルージョン(包括性)といった概念が浸透しつつある現在、このような閉鎖的な環境に大きな転機が訪れているのだ。