急激なインフレや株式相場の下落といった世界的な混乱が続いている現在、資産を守るために投資戦略の見直しを迫られているのは富裕層・超富裕層も同じである。ブルームバーグビリオネア指数によると、コロナ禍の株価高騰で資産を急増させた「世界で最も裕福な500人のビリオネア」(純資産10億ドル(約1,374億2,707万円)以上を保有する人々)の総資産は、2022年上半期に1兆4,000億ドル(約192兆4,785億円)減少した(Richest Billionaires Lose $1.4 Trillion in Worst Half Ever:Bloomberg)。景気後退のリスクを踏まえ、富裕層がリスクヘッジの手段として関心を強めているのがオルタナティブ資産だ。今回は特に需要が拡大している「プライベート・エクイティ」(*1)の動向をレポートする。
*1:未公開株式のこと。広義には株式の未公開会社(または事業)に関する投資すべてを含む。
富裕層の約3割、超富裕層の8割以上がオルタナティブ資産保有
一般の投資家にとってはまだまだ敷居の高いオルタナティブ投資だが、富裕層・超富裕層にとってはポートフォリオの大部分を占める重要な投資対象である。その領域はレアウィスキー、ワイン、クラシックカー、アート、ジュエリー(宝石)といったコレクタブルアセット(*2)からヘッジファンド、不動産、近年では仮想通貨まで広範囲に及ぶ。
*2:コレクション感覚で楽しみながら投資できる資産のこと。
アーンスト・アンド・ヤング (E&Y)が世界21地域におけるウェルスマネジメントの2,500人の顧客を調査した報告書(「Where will wealth take clients next?」(2021 EY Global Wealth Research Report))によると、資産額が増えるほどオルタナティブ資産の保有率は高くなる。
2020年の時点で富裕層(純資産100万~499万ドル(約1億3,741万~6億8,568万円))の29%、準超富裕層(500万~2999万ドル(約6億8,707万~41億2,105万円))の55%、超富裕層 (純資産3,000 万ドル(約41億2,272万円以上))の81%がオルタナティブ資産を保有していた。
ポートフォリオにオルタナティブ資産が占める割合にも、同様の傾向が見られる。米投資企業KKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ)の調査では、富裕層が運用資産の26%をオルタナティブ資産に投資しているのに対し、運用資産10億ドル(約1,374億1,615万円)以上を保有する超富裕層はその約2倍に当たる51~54%を投じていた(81% of Ultra-High-Net-Worth Individuals Use Alternative Investments:The Motley Fool)。