リヒテンシュタイン公爵家がオーナーを務める国際的プライベート・バンキング/アセット・マネジメントグループ「LGT」は2021年11月18日、日本において信託免許および投資助言登録を取得、富裕層向けウェルス・マネジメントオフィス「LGTウェルス・マネジメント信託(LGT Japan)」を開設したと発表した。
純金融資産10億円以上の日本人の顧客を想定し、信託契約に基づいたオーダーメイドのウェルス・マネジメント・ソリューションを提供する予定。東京をのぞいたアジア地域では香港、シンガポール、タイを拠点に30年以上のサービス提供実績がある。1999年には、アジア地域におけるプライベート・バンキングサービス拡大のために、独立事業部門「Private Banking Asia(PBA)」を設立している。
LGTが今回、日本市場に本格進出を果たした背景には、金融規制緩和の流れと日本の金融機関による取引専有性の低下傾向がある(LGT Japan 代表取締役会長の永倉義孝氏)。8月の段階で金融庁が発表しているように、現在、日本では「国際金融センター」としての地位獲得を目指し、政府一体の取り組みが進められている(「2021事務年度 金融行政方針」(金融庁、2021年8月))。その過程でこれまで外資系プライベートバンクの参入を阻んできたさまざまな金融規制の緩和が期待される。同時に、(外資系プライベートバンクに対する)顧客の意識も「前向きな方向」に変化することが予想される。
LGTがバイサイドで日本進出を果たした理由も上記のような金融規制緩和の傾向が顕著になってきたからだと永倉氏は指摘する。
顧客と信託契約を結び、オーダーメイドでポートフォリオを組んで運用していくノウハウの基盤には、長年リヒテンシュタイン公爵家の資産運用を担ってきた機関投資家でもある同社の歴史がある。主な投資アセットはプライベート市場からの調達である。プライベート・エクイティ、プライベートリアルエステート、プライベートクレジットなど……。当面、暗号資産や美術品などの現物をポートフォリオに組み込む予定はないとするが、「リヒテンシュタイン公爵家の資産運用が長期に渡って成功しているのは、時代の流れを適切に取り込んでいるから。特に暗号資産に関しては真剣に検討している」(永倉氏)。
なお、LGTの投資哲学を表現する言葉としては「インパクト投資」、あるいは最近使われる言葉なら「ESG投資」(SDGs投資、グリーン投資も含まれるだろう)が挙げられると永倉氏はいう。長期投資を投資の基本姿勢としてきたLGTにとっては「社会的にパージされない企業や事業」への投資が重要であるとの考え。ESG投資を含む広義のインパクト投資における専門知識や運用ノウハウを提供することで、伝統的な実績を有するウェルス・マネジメントサービスの日本市場での普及を目指す。