住宅ローンは変動金利0.5%で2億円まで

Aさんは100〜130㎡くらいの広さの物件を希望しているが、将来的な売却も視野に入れており、資産性を考えると、なるべく都心3区(千代田区、中央区、港区)、少なくとも都心5区(千代田区、中央区、港区、渋谷区、新宿区)に買いたいという。現在の不動産市況では、都心3区で100〜130㎡くらいとなると、中古であっても3億円前後してしまうものが多い。実際、Aさんが内見で気に入った物件も約3億円であった。

しかし、年収1,700万円で3億円の物件をフルローンで買うのは極めて難しい。Aさんのようにかなり属性がよい人でも、年収倍率(物件価格÷年収)は10倍前後が相場だろう。実際、Aさんがメガバンクに相談したところ「変動金利0.5%で2億円までなら出せる」という回答だった。想定される年収倍率の上限水準であり、金利水準から見ても、好条件と言える。

もともと普通のサラリーマンだったAさんは、自社株以外に目立った資産はない。では残りの1億円は、自社株を売却して手当する必要があるのか。それも1つの選択肢だが、潤沢な資産を持つ“富裕層の特権”を活用する選択肢もある。それが「証券担保ローン」だ。

差額の1億円は証券担保ローンで賄う予定

証券担保ローンとはその名の通り、金融機関に保有している有価証券を担保に差し出して資金を借り入れる方法だ。Aさんにおいては、自社株を担保に入れて、担保価値(この比率は“LTV(Loan to Value)”と呼ばれている)の範囲で資金を借り入れることができる。仮にLTV50%を認めてくれれば、5億円の自社株を担保に入れることで、最大2億5,000万円まで借りられる。なお、使用用途は原則自由であるため、マイホームの頭金に充当しても何の問題ない。

そこでAさんは、主幹事である大手証券会社のプライベートバンキング部門に相談し、LTV40%、金利1.2%の証券担保ローンの内諾を得た。理論上は2億5,000万円分の自社株を預ければ、1億円の現金を調達できる計算だ。

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