この記事は2022年9月30日に「ニッセイ基礎研究所」で公開された「雇用関連統計22年8月-対面型サービス業を中心に新規求人数の大幅増加が続く」を一部編集し、転載したものです。
失業率は前月から0.1ポイント低下の2.5%
総務省が9月30日に公表した労働力調査によると、22年8月の完全失業率は前月から0.1ポイント低下の2.5%(QUICK集計・事前予想:2.5%、当社予想も2.5%)となった。
労働力人口が前月から▲7万人の減少となる中、就業者が前月から▲4万人減少し、失業者は前月から▲1万人減の175万人(いずれも季節調整値)となった。
就業者数は前年差12万人増(7月:同▲2万人減)と2ヵ月ぶりに増加した。産業別には、製造業(前年差▲3万人減)、卸売・小売(同▲23万人減)の減少が続き、医療・福祉が前年差8万人増(7月:同12万人増)と増加幅が縮小したが、宿泊・飲食サービスが前年差21万人増(7月:同3万人増)と2ヵ月連続で増加し、増加幅が前月から急拡大した。生活関連サービス・娯楽は前年と同水準(7月:同12万人増)であった。
雇用者数(役員を除く)は前年に比べ25万人増(7月:同16万人増)と6ヵ月連続で増加した。雇用形態別にみると、非正規の職員・従業員数が前年差50万人増(7月:同32万人増)と7ヵ月連続で増加したが、正規の職員・従業員数が前年差▲25万人減(7月:同▲17万人減)と3ヵ月連続で減少した。6月以降、前年同月と比べ正規が減少、非正規が増加しているが、コロナ禍前の19年同月と比べると、正規の職員・従業員が増加、非正規の職員・従業員が減少を続けている。8月は正規の職員・従業員が73万人増、非正規の職員・従業員は▲74万人減であった。
対面型サービス業を中心に新規求人数が大幅増
厚生労働省が9月30日に公表した一般職業紹介状況によると、22年8月の有効求人倍率は前月から0.03ポイント上昇の1.32倍(QUICK集計・事前予想:1.30倍、当社予想も1.30倍)と、8ヵ月連続で上昇した。有効求職者数が前月比▲1.5%の減少となる一方、有効求人数が前月比0.6%と6ヵ月連続で増加した。
有効求人倍率の先行指標である新規求人倍率は前月から0.08ポイント低下の2.32倍となったが、引き続き高水準を維持している。
新規求人数は前年比15.1%(7月:同12.8%)と5ヵ月連続で前年比二桁の高い伸びとなった。産業別には、宿泊・飲食サービス業(7月:前年比47.7%→8月:同51.1%)、生活関連サービス・娯楽業(7月:前年比13.5%→8月:同28.9%)など、需要の持ち直しが明確となっている対面型サービス業が非常に高い伸びとなっている。
失業率は横ばい圏の動きが続いているが、労働市場の需給関係を反映する有効求人倍率は、企業の人手不足感の高さを背景に急回復し、コロナ前の水準に近づいている。
7、8月は新型コロナウイルスの感染が急拡大したが、政府が特別な行動制限を実施しなかったこともあり、コロナ禍で大きく悪化した対面型サービス業を中心に雇用情勢の改善傾向は維持されている。10月以降、雇用調整助成金の特例措置の上限引き下げが予定されているが、このことが失業者の増加につながるリスクは低いだろう。
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斎藤太郎(さいとう たろう)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 経済調査部長
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