この記事は2022年9月13日に「第一生命経済研究所」で公開された「景気予測調査から見た四半期決算見通し」を一部編集し、転載したものです。
売上高・経常利益とも計画上方修正
2022年9月13日に公表された2022年7~9月期法人企業景気予測調査は、2022年8月下旬にかけて資本金1千万円以上の法人企業に対して行った景気予測調査であり、今期の業種別企業業績計画を予想するための先行指標として注目される。
そこで本稿では、2022年10月下旬からの四半期決算発表で、コロナ禍やウクライナ危機の中でも今年度の企業業績計画の上方修正が見込まれる業種を予想してみたい。
下図は、法人企業景気予測調査の調査対象企業の各調査時期における売上高と経常利益計画の今年度見通しの推移を見たものである。まず売上高を見ると、製造業・非製造業とも増収率が上方修正となっている。このことから、四半期決算でも今期の売上高計画が上方修正される業種には注目が集まるものと推察される。
一方の経常利益は、製造業・非製造業とも上方修正となっているが、輸入原材料の高騰などにより、製造業は減益計画の姿に変化はない。このことから、2022年10月下旬からの四半期決算発表では、製造業を中心に今年度減益計画が出てくることが予想される中、非製造業で強めの計画が打ち出される業種には注目が集まるものと推察される。
増収率大幅上方修正の「電気・ガス・水道」「生活関連サービス」「リース」
以下では、2022年10月下旬からの四半期決算で、今期売上高計画で上方修正が期待される業種を見通してみたい。下表は業種別売上高計画を前年比と前回調査からの修正率で比較したものである。
結果を見ると、2022年度は「鉱、採石、砂利採取」以外の全業種で増収計画となっている。こうした中で、前年比の上方修正率が高い業種は「電気・ガス・水道」「生活関連サービス」「リース」「石油・石炭製品」「その他の輸送用機械」であり、特に「電気・ガス・水道」と「生活関連サービス」では+10ポイント以上の上方修正率となっている。
そこで、「生活関連サービス」を詳細に見ると、我々の生活に密着したクリーニング業や理容業、美容業、銭湯、スーパー銭湯、エステティック業、リラクゼーション業、ネイルサービス業、旅行業、結婚相談業、家事サービス業、冠婚葬祭業、等になる。このため、「生活関連サービス」については、コロナに対する国民の対応改善や水際対策の緩和等が進む期待があり、移動や接触を伴う経済活動が正常化に向かうことが想定されている可能性が推察される。
一方、「電気・ガス・水道」や「石油・石炭製品」「リース」「その他の輸送用機械」については、次に見る経常利益計画では大幅減益計画になっていることからすれば、ロシアのウクライナ侵攻などに伴い化石燃料や仕入れ価格の水準がさらに引きあがったことに伴う価格転嫁の影響が大きいことが推察される。
「生活関連サービス」「農林水産」「運輸」等が増益率大幅上方修正
続いて、経常利益計画から増益率の上方修正が期待される業種を見通してみよう。結果を見ると、多くの業種で減益計画となっており、これは国際商品市況価格高騰等に伴うコスト増が主因と推察される。
こうした中、増益率の上方修正が目立つ業種は「生活関連サービス」「農林水産」「運輸、郵便」「職業紹介、労働者派遣」「情報通信機械」等であり、いずれも2桁を大きく上回る上方修正率となっている。
旅行業などを含む「生活関連サービス」や「運輸、郵便」、また黒字転換の「宿泊、飲食サービス」については、国民のコロナに対する対応改善や水際対策の緩和等が進むことが期待されている等の背景により、空運や鉄道旅客数が正常化に向かう動きがある。加えて、「職業紹介、労働者派遣」については、そうした動きに関連する人材派遣などの需要増加も寄与している可能性が推察される。
また、前回調査では大幅減益計画だった「農林水産」も大幅増益計画に上方修正されている。背景には、世界的な食料不足や円安などに伴う日本の農林水産品の国際競争力の向上に加えて、政府の資料価格高騰対策が寄与している可能性があろう。
さらに「情報通信機器」は、半導体等の部品不足軽減により、供給拡大を見込んでいることが予想される。
なお、日銀が2022年10月4日に公表する2022年9月短観の業種別収益計画(大企業)は、法人企業景気予測調査に比べて聞き取りのタイミングが若干遅いことから、ウクライナ危機やコロナからの回復の影響をより織り込んでいる可能性が高い。そのため、2022年9月短観における大企業の収益計画も四半期決算と今期業績見通しを読み解く手がかりとして注目したい。