本記事は、台場史貞氏の著書『「私にはムリ!」と思い込んでいる人のための 不動産投資の基本』(秀和システム)の中から一部を抜粋・編集しています
不動産投資家が節税を目的として会社をつくるケースもあると聞きました。どんな状況になれば、会社をつくったほうがよいでしょうか?
同じような質問を受けることがとても多いのですが、私は妻が代表者である会社をつくり、私はその会社として不動産投資を行っています。
ただし、会社設立の経緯については税制だけでなく、個人的な要因も多く、簡単には答えることができません。
会社をつくるのは、大雑把に言えば購入するワンルームの戸数が「7〜8戸くらいになったとき」と答えればいいのかもしれませんし、税法上は「5棟10室で事業的規模と判断される」とされており、そのくらいの規模になると、事実上、会社としての税務が求められます。
事業的規模と判断されれば、経費や所得税の扱いも個人とは異なり、その損得が気になる方もいるでしょう。ところが、そう杓子定規に割り切れない面も不動産投資家として会社をつくるかどうかにはあります。
会社をつくるかどうかの判断基準
実際には、それぞれの方の次に挙げるようなさまざまな要因によって、最終的には自分自身で判断するしかありません。
基本的な考え方は、「利益を個人と会社に分けることで、累進課税の税率の高い領域の適用部分を減らす手法として会社設立も考えられる」ということを理解した上で、次のような要因から会社をつくったほうがいいかどうかを判断することになります。
(1)会社設立の前提条件
節税のための不動産の小規模なLLC(合同会社)の設立を考えた場合、その会社はサブリースを取り扱う会社となります。そのため、サブリースのついた物件の購入は避けなければなりません。
サブリースとは、わかりやすく言うと「又貸し、転貸」のことで、不動産賃貸においては修繕・空室等のリスクを平準化させるための一括借上げのことを指します。設立した会社で、物件をさらに二重にサブリースすることはできません。
この前提条件に立って、さらに次の要因を加味することになります。
(2)顧問税理士が必要かどうか
会社設立にあたっては顧問税理士をつけることがほぼ必須条件となりますので、税理士費用の年間20万〜30万円程度が節税金額に見合わなければ、会社を設立する意味がありません。
(3)課税所得と税率の関係
個人の場合、課税所得は「給与課税所得+不動産課税所得+副業課税所得」ですが、課税所得が695万〜1,800万円の場合は、所得税に住民税を加えた税率が43%となります。
一方の法人税率は現在、約23%です。すなわち、法人に利益を移すメリットは、このあたり、すなわち「個人の課税所得が1,000万円前後になるあたり」が分岐点になりま
(4)給与を受けている会社を辞める時期
会社を辞めれば、給与分の課税所得は当然なくなるため、課税所得は大幅に下がります。ところが、その際、給与所得以外の課税所得が最低でも400万円程度はないと、その時点においては節税してもしなくても特段の損得はなく、節税の意味合いが大きく下がることになります。
また、サラリーマンと設立した会社を並行している期間が短いと、節税の意味は薄れます。
(5)年金を受け取る時期
会社を辞めて所得が大きく下がった人でも、年金を受け取ることになれば、課税所得が上がることになります。その場合は、会社設立による節税効果がある程度は復活することになります。
マンションを購入したら家賃の回収や設備の故障、住民トラブルなどで大変ではありませんか?
もし管理を自分で行う場合は、その対応に苦慮する場合が出てくると思います。ただし、誠実な管理会社に管理を委託した場合は、自分に火の粉が降りかかることはありません。
家賃の回収は管理会社によって行われ、もし入居者が入金しない場合でもオーナーには管理会社から家賃が支払われます。また、設備が故障した場合は、管理会社が現場を確認した上で適切なアドバイスと見積もりを提示してくれるので、オーナーは最終決定と費用の負担を行うだけで済みます。
管理会社の選択は、不動産投資の重要なポイント
私の例でいえば、外国人の入居者が部屋に荷物を残して夜逃げをしたケースがありましたが、管理会社が保険をかけていたので費用の負担もなく、荷物を処分した上で、次の入居者募集まで責任をもって行ってくれました。
また、住民トラブルなどがあったとしても、基本的にオーナーが動く必要はなく、管理会社の責任の範疇で対応してもらえます。
費用の節約のため、自分で物件の管理をされる方もいますが、私なら絶対にやりません。1部屋当たり毎月数千円で、すべての管理をお任せできるのなら、私なら安いと考えます。
結論として物件の管理は、プロである誠実な管理会社にすべて丸投げすることがベストです。そういう意味で管理会社の選択は、不動産投資の重要なポイントの1つです。
「新築マンションを買うと節税になる」と営業マンに聞きましたが、本当ですか?
新築に限らず、中古マンションを購入した場合でも、特に初年度は「契約時の事務手数料」や「取得税の支払い」があるため、年間収益はマイナスになる場合があります。そのため、次年度の確定申告でサラリーマンとしての給与所得と合算すると、税金が還付されるケースが多くみられます。
この部分が節税になることは、間違いありません。
ただし、中古マンションを購入した場合は、頭金の金額やローン年数によって異なりますが、多くの場合、次年度から黒字化するため、給与所得に加えて上乗せで税金を納めることになり、節税効果はなくなってしまいます。
毎月の収益を黒字で維持するのが正しい投資方法
確かに新築マンションを購入した場合は、次年度からもずっと赤字が続くため、節税効果という意味ではローン返済が続く限り、永遠に節税を享受できます。
しかし、ここでよく考えていただきたいのは、新築物件を購入した後のローン支払期間、約30〜35年間の長期にわたり、ずっと収益がマイナスの物件を購入する意味があるのかということです。
サラリーマンとしての給与所得にずっと依存しなければならない投資は、サラリーマンではなくなった時、〝凶器〟となって襲いかかってきます。ましてや、FIRE実現は夢のまた夢です。
毎月の収益は、家賃収入によって常に黒字を維持し、それに対する税金はしっかり払うのが正しい投資方法です。また、黒字がさらに大きくなれは、節税する方法もあります。
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