カーボンネガティブに取り組む企業の実例
ここでは、企業のカーボンネガティブの取り組み例を紹介する。
マイクロソフト
「カーボンネガティブ」に取り組む企業の代表格といえるのが米国のマイクロソフトだ。同社は、2013年6月期からCO2の排出量に応じて社内で資金を集め再生可能エネルギーを購入する「内部炭素課金」という方法でカーボンニュートラルを実践してきた。2030年までにカーボンネガティブを達成し、2050年には1975年の創業以来排出してきた量のCO2を除去すると宣言している。
以下は、そのための取り組みの一例だ。
- 2021年7月までに内部炭素課金をサプライチェーンにまで拡大
- 2025年までに企業活動を行うビルなどの電力を再生可能エネルギーに100%シフト
- 2030年までに世界中の会社敷地内で走る車両を電気自動車にする
花王株式会社
花王株式会社は、2019年4月から脱炭素に貢献する活動「Kirei Lifestyle Plan(キレイライフスタイルプラン)」を策定。2040年までに事業活動から排出されるCO2をゼロ、2050年までにカーボンネガティブを目指してさまざまな取り組みを行っている。2021年には、国内にある全55ヵ所のロジスティクス拠点で使用電力の100%再生エネルギー化を実現。
工場やロジスティクス拠点など全事業所での使用電力における再生可能エネルギー化比率は、38%となり2030年までに100%を目指すとしている。また製品の原材料調達から「製造→輸送→使用→廃棄」といったサイクルから生み出されるCO2の排気量を抑える取り組みも実施中だ。
2021年は、水の使用によるCO2の排出を減らすことを目的とした節水製品の販売、包装容器のプラスチック使用量削減などの取り組みにより2017年に比べてCO2排出量を4%減らすことができた。製品の生産* 使用にかかわるCO2排出量については、2030年までに2017年比22%の削減を目指す。
さらに2050年のカーボンネガティブを目指しCO2を使った原料をつくり、その原料を自社製品に活用するための技術開発に取り組んでいる。
大成建設株式会社
CO2は、コンクリートを製造する際に排出される。しかし大成建設株式会社が開発したカーボンリサイクル コンクリートは、CO2をコンクリート内部に吸収 固定しているのが特徴だ。材料に排気ガスなどから回収したCO2をカルシウムに吸収させた炭酸カルシウムが使われている。カーボンリサイクル コンクリートに吸収 固定されているCO2は、1立方メートルあたり171キログラム。
このコンクリートを製造するために排出されたCO2は、1立方メートルあたり55キログラムで排出量と吸収量の差し引きは1立方メートルあたり-116キログラムとなりカーボンネガティブを実現した。
住友化学株式会社
住友化学株式会社では、2030年までにグループ全体で温室効果ガス排出量を2013年比で50%削減、2050年までにカーボンニュートラルの実現が目標だ。同時にカーボンニュートラルに向けた取り組みとして自社の製品や技術を通じて世界の温室効果ガス削減への貢献も掲げている。
後者の取り組みとしてメタンの炭素をエネルギー源とする微生物で生産される樹脂を使った自動車 繊維向け材料の共同開発を始めた。メタンはCO2の約25倍の温室効果があり、その削減は温暖化の抑制につながる。農業 産業廃棄物から回収したメタンを使い米国企業とともに自動車向けと繊維向けの樹脂を開発するという。
パタゴニア
米国のアパレルメーカーのパタゴニアは、2025年までにサプライチェーンまで含めたビジネス全体でカーボンニュートラルの達成を目標としている。さらにその先には「カーボンポジティブ(カーボンネガティブに相当する呼称)」を目指す。具体的には、以下のような取り組みを行っている。
- 世界にあるオフィスや店舗で使用する電力を、100%再生可能エネルギーでまかなう
- 森林再生のような炭素回収プロジェクトへの投資を行う
- 2025年までに再生可能またはリサイクルした素材だけを製品に使用する など
Zホールディングス株式会社
2022年ヤフー株式会社やLINE株式会社、株式会社ZOZOなどを傘下に持つZホールディングス株式会社では、グループ全社が事業活動で排出する温室効果ガスの量を2030年までに実質ゼロにする「カーボンニュートラル宣言」を発表した。2025年ごろまでには電力の80%以上を再エネ化、2030年には100%再エネ化を目指す。
グループ傘下のヤフー株式会社では、2023年末に再生可能エネルギー化100%を達成することを目標に掲げ、データセンターで使用する電力に再生可能エネルギーを取り入れているのが特徴だ。特に米国のデータセンターは、ほぼ100%再生可能エネルギーで稼働している。
ヤフー株式会社では、グループ傘下の他社に先駆け2023年以降はカーボンネガティブへの取り組みを開始し2030年までに達成することが目標だ。
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