カーボンネガティブ達成への課題

製造現場やオフィス業務など企業はあらゆる活動の中で排出されるCO2の削減に取り組んでいる。しかしカーボンニュートラルやカーボンネガティブを実現するには課題が多い。ここでは、課題の一例として2つの問題を紹介していく。

グリーンウォッシュ問題

「グリーンウォッシュ」とは、エコをうたいながら根拠があいまいだったり実態がなかったりする商品や活動のことを指す。例えば以下のようにエコを企業イメージに悪用するケースは、枚挙にいとまがない。

  • CO2排出量ゼロとPRしているが数値的な裏付けがない
  • 100%リサイクル可能の紙ストローを使用としていたが実際は廃棄していた など

欧米では、グリーンウォッシュに対し制裁を伴う規制を導入したり企業を摘発したりしている。しかし日本では、環境庁などによるガイドラインの発表にとどまっているのが現状だ。

日本の発電事情と脱炭素化問題

日本は、国全体で2050年にカーボンニュートラルを目指している。カーボンニュートラル、さらにはカーボンネガティブを国全体で実現するために電力問題は避けて通れない。日本では、供給電力の7割以上を火力発電に頼っているが火力発電の約76%が石炭・天然ガス・石油といった化石燃料だ。化石燃料は、CO2を排出するが国内のCO2排出量の4割以上が火力発電由来である。

原子力発電所の稼働を停止している状況で火力発電を続けるには、化石燃料を減らすことが必要だ。その際、排出源から出たCO2を回収し燃料として再利用したり水素やアンモニアを燃料として活用したりする方法が有効になる。これらの方法は、実証段階のものが多く今後の進展が待たれる。

CO2排出削減は企業の社会的責務に

パリ協定で定められた目標達成のため、カーボンニュートラルから一歩踏み込んだカーボンネガティブは、企業だけでなく国を挙げて取り組む必要がある問題だ。日本でも企業単位では、取り組みが進んでいるものの国レベルでは、エネルギー政策の面などで解決すべき問題は大きい。

ただし今後あらゆる業種で企業としてCO2の排出削減に取り組むことは、単なるイメージ戦略ではなく企業の社会的責務とみなされる。まだ対策を講じていない企業も具体的な目標とその期限を設け、事業規模に応じてできることから取り組んでほしい。

カーボンネガティブに関するQ&A

Q1.カーボンネガティブとは何をすること?

A.あらゆる活動で排出されるCO2などの温室効果ガスについて排出量よりも多くの量を吸収・除去すること。カーボンネガティブを実現するためには産業界全体での努力が必要。

Q2.カーボンネガティブの例は?

A.排出したCO2を回収・貯留し、資源として再利用する「カーボンリサイクル」は、CO2を除去するための植林などが挙げられる。

Q3.カーボンネガティブの反対語は?

A.「カーボンネガティブ」に対して「カーボンポジティブ」という表現があるが、これはカーボンネガティブと同じ意味を表している。「CO2を吸収する」ことを「ポジティブ」ととらえ、カーボンポジティブと表現したものだろう。パタゴニアなどのようにカーボンネガティブという表現を使わずカーボンポジティブを使う企業もある。

また単純に反対の意味を言うのであれば「環境破壊」という言葉が用いられることもある。

著:せがわ あき
会計事務所に10年勤務。その後、会計ソフトメーカーでの勤務を経て、現在は会計・税務・金融などをテーマにライティング活動を行う。会計事務所では、顧問先の会計業務や融資支援に従事。融資のための提出資料作成や融資・資金繰りのアドバイスなどを行う。会計ソフトメーカー時代には、お客様対応業務に加えてソフト開発にも携わり、お客様の声を製品に反映させる仕事に従事。
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