日本と世界のESG経営の実情

2006年に提唱されて以来、ESGの考え方は世界中に広がりつつある。ここからは日本と世界に分けて、現時点でのESG経営の実情を紹介する。

日本のサステナブル投資資産は世界全体の1割未満

持続可能な投資を促進する組織「GSIA」によると、日本のサステナブル投資資産は全世界のうち8%に留まっている(※2020年のデータ)。国内でもESG経営は徐々に浸透しているものの、2018年頃から社会に大きな変化は生じていない。

その主な要因は、ESGに対する意識の低さと言われている。各種政策(レジ袋の有料化など)によってエコへの意識は強まってきたが、本当の意味でESGを実現するには企業・市民がさらに高い意識を持たなければならない。

つまり、大幅な意識改革が必須となるため、日本がESG先進国を目指すには政府・企業が一体となった取り組みが必要になるだろう。

海外の実情

前述のグラフ(世界のサステナブル投資資産の地域別比率2020)を見ると、欧米はESGへの意識が高いと言える。世界のサステナブル投資資産は欧米だけで82%を占めており、ほかの地域に比べるとESG市場が圧倒的に大きい。

特にアメリカやイギリスにおいては、証券取引所の上場規則にもESGに関する項目が追加された。例えば、2025年以降のアメリカNASDAQでは、取締役に女性や非白人マイノリティを選任することが求められる予定だ。

欧米は全体的に環境問題・社会問題への意識が高く、SDGs達成ランキングでも上位につけている国が多い。

ESG経営の課題や注意点

ESG経営を進める上で、国内企業はどのような課題を抱えているのだろうか。ここからは、経営者が知っておきたい課題や注意点を紹介する。

定義が乱立しており、目標を設定しづらい

ESG経営には評価機関が存在するものの、取り組みに関する明確な定義はない。現状では定義が乱立しているため、企業にとっては目標を設定しづらい状況と言える。

特に注意しておきたいポイントが、従来の財務情報が重視されにくい点だ。仮に経営状態が良好でも、環境・社会への貢献度が低い場合は、ステークホルダーからの評価を落としてしまう恐れがある。

短期的な成果判断が難しい

一般的なESG経営は、数年~数十年のプランをもとに行われる。また、プラン自体も手探りの状態で立てることになるため、度重なるフィードバックや修正を余儀なくされるケースもあるだろう。

つまり、ESG経営は長期で取り組むものなので、短期的な成果判断は難しい。明確なリターンを求める場合は、重点課題に絞って取り組むといった工夫が必要になる。

ガバナンスの評価が難しい

一般的に「企業統治」と呼ばれるガバナンスは、ESGの中でも評価が難しい。定量的かつ明確な指標がないため、多くの企業はプラン策定時に悩まされる。

特に注意しておきたいのは、一般的なガバナンス評価と経営リスクが直結しないケースもある点だ。仮にガバナンス面で高く評価されても、企業によっては情報漏えいなどの不祥事が起きてしまう。

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