中小企業がESG経営を導入するポイント

上記の課題を踏まえて、ここからは中小企業が意識したいESG経営のポイントを解説する。

サステナビリティへの取り組みを強化する

サステナビリティとは、持続可能な社会を目指す考え方である。分かりやすい例で言えば、漁業における漁獲量の制限や、再生可能エネルギーを使った発電システムなどが挙げられる。

特に天然資源に頼っている事業は、将来的に枯渇するリスクと向き合わなければならない。また、直接的に関わりがない企業も、省エネや温暖化防止などの取り組みを進めることで、外部から評価される可能性がある。

サステナビリティはSDGsのテーマにも含まれるため、これを機に重要ワードとして認識しておこう。

ダイバーシティ推進や労働環境を改善する

日本では2019年4月から、働き方改革関連法が実施されている。つまり、個々人の働きやすさやワークライフバランスへの関心が高いため、「ダイバーシティ推進」や「労働環境の改善」も重要なキーワードと言える。

特に日本は男性優位の社会が形成されてきた影響で、ダイバーシティが進みにくい傾向がある。そのような状況下で積極的に取り組めば、多方面から注目される可能性があるだろう。

ガバナンスの徹底

現代のビジネスにおいて、企業倫理や法令の遵守は当然のことである。多くの企業がルールを守っているため、社会規範や法令に違反しないだけでは理想の経営環境とは言えない。

社内外から広く評価されるには、公平な市場環境や透明性、不正や汚職の防止などあらゆる面のルール整備が必要だ。社内の管理体制をしっかりと見直し、外部から見ても安心できる環境を作り上げていこう。

ESG経営のよくある質問集

ESG経営は比較的新しい考え方であるため、基礎知識を曖昧に理解していることも多い。そのような人に向けて、ここからはESG経営のよくある質問集をまとめた。

Q1.ESGは何の略?誰がつくった?

ESGは、「環境(Environment)・社会(Society)・ガバナンス(Governance)」の頭文字を取った造語である。世界的に有名になったのは2006年であり、コフィー・アナン氏(当時の国連事務総長)が提唱した「PRI(責任投資原則)」の中で登場した。

ESGの観点から投資先を選ぶ手法は「ESG投資」、環境・社会・ガバナンスに配慮した経営を行うことは「ESG経営」とそれぞれ呼ばれている。

Q2.ESG経営のデメリットは?

ESG経営のデメリットとしては、短期間では成果を見込めない点や、方向性の決めづらさが挙げられる。基本的には長期のプロジェクトとなるため、施策中にはフィードバックや軌道修正も行わなくてはならない。

また、経営者の言動が社会から注視される点も意識したいリスクだろう。例えば、差別的な発言や振る舞いをすると、会社自体の評価を大きく下げてしまう恐れがある。

Q3.ESG経営の課題とは?

ESG経営にはさまざまな定義があるため、正しい方向性での目標設定が難しい。そのほか、短期的な成果判断やガバナンスの評価も、企業が悩まれやすいポイントである。

現状では、どのような企業も手探りの状態でプランを立てることになるため、徹底した情報収集や分析を心がけたい。

Q4.ESG経営の具体例を知りたい

ESG経営の例としては、以下のような施策がある。

・女性やシニア、外国人労働者の活躍推進
・安全基準の厳格化
・労働環境や労働条件の透明化
・安全性や人権に関わる製造工程の改善
・地域活性化につながるプロジェクトや支援

企業によって優先度や関連度の高い施策は異なるため、自社の現状を踏まえて計画を立てることが重要だ。

Q5.なぜESG経営に取り組む必要がある?

ESG経営を導入すると、機関投資家や一般投資家からの評価が高まる。つまり、資金調達のハードルが下がるため、将来的には成長や企業価値の向上につながる。

また、取り組みがグローバルな機関から評価されれば、企業イメージやブランドイメージもアップする。