この記事は2022年10月20日に青潮出版株式会社の株主手帳で公開された「アズーム【3496・グロース】機械式駐車場のサブリース主力に業域拡大 遊休不動産活用のプラットフォーマー目指す」を一部編集し、転載したものです。
アズームは、自社ポータルサイトを活用した駐車場サブリース事業と駐車場紹介事業を展開している。同社の企業理念は「世の中の遊休不動産を活躍する不動産に」。都心のマンションなどで増えている空き駐車場に着目し、駐車場を貸したいオーナーと借りたいユーザーをつなぐビジネスで急成長を遂げている。
中期経営計画最終年度となる2022年9月期は過去最高業績を更新する見込み。今後も売上成長を維持し、さらなる利益率向上を見込んでいる。
▼菅田 洋司社長
自社ポータルサイト「カーパーキング」で集客
アズームの2021年9月期の業績は、売上高49億7,400万円、営業利益5億700万円。
事業の主力は売上比率98%を占める遊休不動産活用事業だ。収益の柱は2つあり、ストック型の駐車場サブリースサービスが売上比率86%、フロー型の駐車場紹介サービスが売上比率約10%を占めている。
駐車場サブリースサービスは、借り手のない月極駐車場を同社が賃料保証して一括で借り上げて転貸する事業。受託している駐車場台数の9割以上が機械式駐車場だ。昇降機など機械的に上下または左右に出し入れする構造で、2階・3階建てや地下に設置される。省スペースで複数の自動車が駐車可能となり、都心部のマンションなどに多く採用されている。
都市部では、大規模な建築物には駐車施設を附置することが条例で定められている。この附置義務駐車場は全国に約344万台あるが、都心のマンションなどで空きの多い状態が続いており、約2割が空きスペースになっている。理由の1つは、車を持たないマンション居住者が増えていること。
また近年は新車のボディが大型化しており、古い機械式駐車場の駐車スペースには入らないため空いているケースが多くなっているという。
同社は、機械式の空き駐車場が全国に約60万台あると見ており、そのうちの約1万6,800万台(2022年6月末時点)を受託している。集客の武器は自社ポータルサイト「カーパーキング」だ。約4万件の駐車場情報を掲載した国内最大級の月極駐車場検索サイトであり、車室数や賃料など直近の駐車場情報を提供している。
「サブリースサービスは、賃料収入を安定的に獲得できるストックビジネスです。当社がリーシングに強いのは、システムを自社開発していることと、ユーザーを重視した質の高いサービスを提供していることにあります。来期(2023年9月期)は今期以上の受託台数獲得を目標としています」(菅田洋司社長)
駐車場紹介サービスは新規管理運営受託に貢献
2つめの駐車場紹介サービスは、自社ポータルサイト「カーパーキング」を通じて獲得したユーザーを他社運営駐車場に紹介し、手数料を得る事業だ。
同社は、ユーザーが求める駐車場を紹介し、賃貸契約が成立した場合に紹介手数料(賃料1カ月分)を得る。1案件当たりの紹介手数料は平均で約2万8,000円であり、他社物件の紹介手数料の売上は年間で約5億円となっている(サブリース物件の紹介手数料はサブリースサービス売上高に帰属)。
この売上に加えて、駐車場紹介サービスは自社サブリースの新規案件獲得の入り口として貢献している。他社運営駐車場を紹介して契約が成立すると、同社はその駐車場オーナーに対して他の空き駐車場のサブリースを提案し、一括借り上げにつなげている。
駐車場紹介サービスは売上比率約10%と主力の駐車場サブリースサービスに比べて規模が小さいが、オーナーとのパイプを作り、サブリース受託台数を増やす装置として機能している。駐車場紹介またはサブリースのどちらかを手掛ける会社は多数あるが、両方を手掛けて相乗効果を上げているのが同社の強みとなっている。
同社は駐車場データベース拡充のため、位置情報連動型クラウドソーシングサービス「coconi」を開発し、全国のクラウドワーカーから不動産情報を収集している。
「データベースが増えるとユーザーからの問い合わせが増え、次に紹介数が増え、さらにサブリース受託台数が増えて収益が拡大するというのが当社の収益モデルです。駐車場の調査はクラウドソーシングを活用しています。シュフティというサイトに登録した主婦の方が日々、駐車場情報の収集に全国各地で動いています」(同氏)
月極駐車場に特化した滞納保証ビジネス「鉄壁」開始
新規事業として、月極駐車場特化型の滞納保証サービス「鉄壁」を開始。月極駐車場を対象とした滞納保証及び督促代行サービスを提供し、オーナーが安心して月極駐車場運営ができるようサポートする。賃貸住宅の滞納保証の駐車場版であり、2021年11月のサービス開始以来、契約数を順調に伸ばしている。
2022年9月期の連結業績予想は過去最高を更新し、売上高64億円、営業利益8億5,000万円の見込み。
「今後は現状の駐車場プラットフォームビジネスを遊休不動産全般に広げていきたいです。人口減の日本では遊休不動産は増え続けることが予想され、数少ない成長マーケットだと認識しています。ITを活用したノウハウを横展開して事業領域を拡大していきたいと考えています」(同氏)
2021年9月期 連結業績
売上高 | 49億7,400万円 | 前期比 30.4%増 |
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営業利益 | 5億700万円 | 同 126.1%増 |
経常利益 | 5億500万円 | 同 126.5%増 |
当期純利益 | 3億2,600万円 | 同 133.9%増 |
2022年9月期 連結業績予想
売上高 | 64億円 | 前期比 28.7%増 |
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営業利益 | 8億5,000万円 | 同 67.5%増 |
経常利益 | 8億5,000万円 | 同 68.1%増 |
当期純利益 | 5億4,000万円 | 同 65.5%増 |
*株主手帳2022年11号発売日時点