この記事は2022年6月27日に青潮出版株式会社の株主手帳で公開された「イチネンホールディングス【9619・プライム】自動車リース関連主軸に幅広い事業を展開 純資産ベースのM&A戦略で19期連続営業増益」を一部編集し、転載したものです。
イチネンホールディングスは燃料販売で創業し、自動車関連の環境変化に対応しながら、積極的なM&A戦略で事業領域を拡大。現在は自動車リース関連事業、ケミカル事業、パーキング事業、機械工具販売事業、合成樹脂事業など幅広く展開している。事業の収益性にこだわり、グループの連結営業利益は前期まで19期連続の営業増益を達成。長期目標で売上高2000億円超、営業利益200億円超を掲げている。
▼黒田 雅史社長
グループ企業、営業利益10%以上を目標
同社は中核の自動車メンテナンス受託・車体修理管理サービスなどの「自動車リース関連」から、産業用潤滑油や家庭用化学製品開発の「ケミカル」、駐車場の運営管理をする「パーキング」、自動車整備用工具・機器や空調工具・計測機器などの卸売り業「機械工具販売」、遊技機部品の開発・製造・販売などの「合成樹脂」の5つの事業に、農業などの「その他」事業を展開している。2022年4月現在、19の連結子会社と非連結2社で構成されている。
2022年3月期の連結売上高は、前期比7.1%増の1206億4400万円、営業利益は同14.7%増の86億2300万円、経常利益は同16.2%増の87億2800万円、当期純利益は同87.2%増の56億4600万円となっている。
各事業の構成比率では、売上高では自動車リース関連事業が44%、機械工具販売事業が29%、合成樹脂事業が12%、ケミカル事業が10%、パーキング事業が5%。営業利益では、自動車リース関連事業が61%、ケミカル事業が14%、合成樹脂事業が13%、機械工具販売事業が8%、パーキング事業が5%の順となっている。
同社は営業利益を「本業に限りなく近い利益」(黒田雅史社長)と重視しており、M&Aで買収しグループに加わった企業に対し、営業利益での貢献を求めている。結果として、前期までに19期連続増益を実現した。
「私はいつも『連結の営業利益の10%以上を稼いでくれ』と言っています。例えば、前期の連結の営業利益が86億円ですから、その1割の8億円ぐらいが第1の目標となっています。今は自動車リースとケミカルは超えていて、合成樹脂が超えたり、超えなかったりですね」(同氏)
M&Aの判断基準は
「時価純資産」
1930年の石炭販売業を祖業とする同社はその後、石油などの燃料販売から自動車のリースやメンテナンスなどの自動車関連事業に拡大させ伸長した。一方で車の動力が電気自動車(EV)、燃料電池車(FCV)などへ変化する潮流を早くから捉え、既存事業領域を超えた積極的なM&A戦略により、コア事業の拡充と経営リスクの分散を両立させ、収益を確保して来た。
同社のM&Aビジネスへの考え方は至ってシンプルでシビアだ。
「M&Aの基準は、時価純資産です。先方は、EV/EBITDA倍率で何倍などといろいろ言われますが、将来なんてどうなるかわかりません。時価純資産をベースに価格を『いくらいくら』と決めたら、ほぼほぼ交渉なしで進めています。利益が出ていない、規模の割に人数が多いところなどはよっぽどでないと検討しませんね」(同氏)
それでも多くの会社が同社の傘下に入って結果を出している。例えば2012年に買収した新領域の遊技機部品のジコー社(現イチネン製作所)は、営業利益で約6億円規模だったが、2013年には8億円規模に伸長し、同社の連続増益に貢献した。
「当社は、中小企業が集まった塊みたいな会社です。既存の事業はもちろん伸ばしていきますが、今のイチネングループに何かメリットがあるならば、これからも積極的にM&Aをやっていきます」(同氏)
今後さらに中国、ASEAN諸国などの市場開拓も進めていき、中期目標は営業利益100億円、自己資本600億円超、自己資本比率28%超。長期経営計画では、売上高2000億円超、営業利益200億円超を掲げている。
2022年3月期 連結業績
売上高 | 1206億4400万円 | 前期比 7.1%増 |
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営業利益 | 86億2300万円 | 同 14.7%増 |
経常利益 | 87億2800万円 | 同 16.2%増 |
当期純利益 | 56億4600万円 | 同 87.2%増 |
2023年3月期 連結業績予想
売上高 | 1220億円 | 前期比 1.1%増 |
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営業利益 | 76億6000万円 | 同 11.2%減 |
経常利益 | 77億円 | 同 11.8%減 |
当期純利益 | 48億8000万円 | 同 13.6%減 |
*株主手帳7月号発売日時点