この記事は2022年12月1日に青潮出版株式会社の株主手帳で公開された「霞ヶ関キャピタル [3498・グロース]不動産の開発と投資ファンド組成で拡大今期は売上高、利益の最高更新目指す」を一部編集し、転載したものです。


霞ヶ関キャピタルは、物流施設やアパートメントホテルの開発を手掛ける「不動産デベロッパー」だ。

同社は一般的なデベロッパーと異なる高回転型のビジネスモデルを展開し、不動産に係るソーシングから竣工後のファンドマネジメントに至るまでの企画力・コンサルティング力を生かし業容を拡大。足元ではヘルスケア関連施設開発やレジデンスファンドの組成などへの参入も公表している。

2022年8月期は過去最高の売上高207億8,000万円、営業利益21億4,100万円で着地。2021年に始動した中期経営計画では、新しいビジネスモデルを発表した。将来的には、個人投資家向け小口化商品への進出も目指す。

▼河本 幸士郎社長

霞ヶ関キャピタル
(画像=株主手帳)

売却と運用で不動産を回転 プロジェクト総額1,958億円

同社は「不動産デベロッパー」として多種多様な不動産開発を手掛ける。しかし、従来型のデベロッパーとのビジネスモデルとは異なる。仕入れた土地に合わせて高付加価値を生み出す不動産開発を得意とし、土地の企画が完成した段階で不動産開発ファンドに売却、投資家と共同で開発を行う。

土地売却までの期間が約6カ月と非常に短い高回転型の開発と、不動産開発のライフサイクル(企画・開発・運用の各段階)を通じたアセットマネジメントの2本柱で構成された独自のビジネスモデルを展開している。

「6カ月という短い期間で物件を回していくことで、収益が大きくなり、マーケットのリスクにもさらされにくくなる。しかしこの方法には商品の仕込み力、企画力が必要。当社のようなビジネスモデルの会社は他にありません」(河本幸士郎社長)

同社は急速に開発実績を積み上げており、2022年8月末時点で合計1,958億円のプロジェクトが進行中。これは前年度と比較すると107.6%増と大きな進捗を見せている。また、同社は上場以来継続して売上高を更新しており、2022年8月期は過去最高の売上高207億8,000万円、営業利益21億4,100万円を達成した。

「箱だけ作ってもうかる時代はとっくに終わっています。我々が運営のところまで入って、ソフト面でも物件の価値を上げ、他が追随できないような体制を作りたいと思います」(同氏)

合弁会社設立で収益アップ 環境対応型物流施設を開発

上場3年目を迎えた2021年、同社は2026年8月期までの中期経営計画である「霞ヶ関キャピタル2.0」を始動。物件の開発から完成までを、同社とパートナー企業との合弁会社で実施する新しいビジネスモデルを発表した。合弁会社の出資比率に応じて売却益を受け取れるため、収益化のタイミングは遅くなるが得られる利益の総額は大きくなる。

まず物流施設開発からこのモデルを適用。2021年12月には、物流施設開発の合弁会社を設立し、2,000億円規模の物流施設の開発プログラムを開始した。

「開発施設の多くはノンフロンの賃貸冷凍冷蔵倉庫です。2030年の冷媒用フロンガス全廃規定により、需要の急拡大が予想されます。環境に配慮した施設であることから投資家からの人気も高い。さらに自動の冷凍冷蔵倉庫を計画しています。各階の床を取り払い立体自動倉庫にすることで、デッドスペースなくきっちり商品を詰められ、収容力は従来より大きくなる。床を作らないので建築費も安い。またトラックが商品を積み込む時間を指定できる仕組みなので、業界の課題である運転手の労働時間短縮にも役立つと考えています」(同氏)

中期的には、この収益モデルをホテルや、ホスピス住宅などヘルスケア関連施設にも拡大する予定だ。

不動産ファンドで地方再生 人材の集まる企業目指す

また同社は、中期経営計画で「AUM(運用資産残高)を積み上げ、安定収益の加速を拡充させる」ことを成長戦略の柱としている。その一環として賃貸住宅を対象不動産としたレジデンスファンドの組成にも取り組む。

すでに三井物産デジタルアセットマネジメント社と共同で、都心の賃貸住宅を組成した約189億円規模のファンド運用を1号案件として開始。将来的には小口化して個人への販売も視野に入れる。

「本来の目的は地方創生です。地方にも優良な資産がたくさんありますが、J-REITにも私募ファンドにも組み込まれず放置されている。こういった物件でファンドを組み、小口化することで地元の人が購入できれば地域活性化につながる。東京へのお金の一極集中を是正したいです」(同氏)

同社のさまざまな新規事業はアイデアにあふれている。その源泉は社員の企画だという。年に1度全社で行う企画コンペには、100以上のアイデアが寄せられる。

「優秀な人でアイデアがあってもビジネスにつなげられない。それなら霞ヶ関キャピタルというプラットフォームを使ってください、という会社にしたい。そして優秀な人材を集める吸引力を持った存在になりたいと思っています」(同氏)

▼「FAV HOTEL 熊本」テラス外観

リソルホールディングス
(画像=株主手帳)

▼ 物流施設「LOGI FLAG」外観

リソルホールディングス
(画像=株主手帳)

2022年8月期 連結業績

売上高207億8,000万円前期比 45.4%増
営業利益21億4,100万円同 61.2%増
経常利益17億3,200万円同 67.0%増
当期純利益10億1,800万円同 28.3%増

2023年8月期 連結業績予想

売上高265億円前期比 27.5%増
営業利益32億円同 49.4%増
経常利益27億円同 55.8%増
当期純利益18億5,000万円同 81.7%増

*株主手帳2022年12月号発売日時点

河本 幸士郎社長
Profile◉河本 幸士郎(こうもと・こうしろう)社長
1973年生まれ、兵庫県出身。1999年明豊ファシリティワークス入社。2003年グローバンス入社。2006年グロブナー・ファンド・マネジメント・ジャパン・リミテッド入社。2014年合同会社フォルテ(現霞ヶ関キャピタル)入社。2015年代表取締役社長(現任)。