この記事は9月16日に青潮出版株式会社の株主手帳で公開された「GA technologies(ジーエーテクノロジーズ)【3491・グロース】日本の不動産テック、先駆け的存在 「RENOSY」「ITANDI」で業界のインフラに」を一部編集し、転載したものです。


GA technologiesは、ネット不動産マーケットプレイス「RENOSY(リノシー)」の開発・運営から始まり、現在までに不動産賃貸事業を効率化するITANDI(イタンジ)など、8社のM&Aを実施。不動産の売買・賃貸・仲介・管理に関わる商品・サービスを、ネットとリアルで一気通貫に提供している。2022年5月の宅地建物取引業法改正による業務の電子化を追い風に、不動産業界のインフラとなるべくシェア拡大を狙っている。

▼樋口 龍社長

GA technologies(ジーエーテクノロジーズ)【3491・グロース】日本の不動産テック、先駆け的存在 「RENOSY」「ITANDI」で業界のインフラに
(画像=株主手帳)

買い手・売り手のDXを推進

GA technologiesは、不動産事業のオンラインで完結する取引と、リアルなオペレーションを融合した商品・サービスを一気通貫で提供。独自のポジションを構築している。

2021年10月期の連結売上高は、前期比35.4%増の853億8,800万円、営業損失3,900万円。損失について同社は、成長のための先行投資およびRENOSYマーケットプレイス事業の市場シェアを早期に高める戦略を優先したためとしている。

売上高構成では、2016年から運営しているRENOSY(リノシー)マーケットプレイス事業が98%を占めて圧倒的だ。

『RENOSY』は、“住まい探しと資産運用を、もっとカンタンに。”をコンセプトに、「不動産投資」と、不動産の「借りる」「買う」「売る」「貸す」「リノベーションする」サービスを提供するオンラインサイトだ。

売上の9割超を占める収益不動産販売では、平均年収900万円程度、累計約30万人の会員に向け、AIが算出した最適物件を来社、あるいは WEB面談で提案。購入が決まれば、顧客×不動産会社×金融機関をつなぐプラットフォーム上でローン契約、融資実行、決済まで完了する。所有物件は同社がそのまま管理、アフターフォローも引き受け、内容は資産管理アプリ上で確認できる。

「不動産は開発・分譲、流通、投資・運用、管理、賃貸と大きく5つのカテゴリーがあります。開発はゼロから土地を購入し分譲する領域で、主なプレイヤーは財閥系。流通は自分で住む物件のため、必ず内覧が伴う。その中で我々はマーケットも大きく、内覧しなくても決まる、テクノロジーとの親和性が高い投資・運用、管理、賃貸を扱っています」(樋口龍社長)

また『RENOSY』のノウハウを同業他社に開放。メディア掲載や送客サービスでフィーを得るサードパーティビジネスも展開している。


■GA technologiesグループ事業概要

日本の不動産テック、先駆け的存在 ―― GA technologies(ジーエーテクノロジーズ)[3491・グロース]
(画像=株主手帳)

注:同社2022年10月期第2四半期決算説明資料を基に弊誌作成

粗利率80%超のSaaS事業

同社は2018年11月、“テクノロジーで不動産取引をなめらかにする”を掲げるIT企業のITANDI社を子会社化した。

ITANDIは、不動産リーシング業務(*1)のリアルタイムデータベース「ITANDI BB」、不動産賃貸業務のDXサービス群「ITANDI BB +」、セルフ内見型賃貸サイト「OHEYAGO(オヘヤゴー)」など、不動産事業者向けのSaaS事業(*2)と、消費者向けの不動産賃貸サービスの開発・運営等を手掛けている。とくにSaaS事業の賃貸不動産の電子入居申込市場で、約7割のシェアを持つトップ企業だ。

「導入が多い理由は、賃貸・管理領域の不動産はなかなか人を採用しにくい、慢性的な人材不足があったこと。2つめはコロナ禍においてはシステムを導入し、業務効率化や店舗に出勤せずとも業務を回せる仕組みを入れないと、現実的に仕事が出来なくなったこと。3つめは法改正で、賃貸・売買契約の重要事項説明の非対面化や契約書などの書類手続きの電子化が進んだことがあると思います」(同氏)

現在も宅地建物取引業法改正で引き合いが増えており、また80%超という高い粗利率でグループの収益への寄与が期待されている。加えてグループ内の『RENOSY』は、ITANDIのSaaS事業の顧客でもある。プロダクトの改善や開発などで連携できるシナジーも双方の強みとなっている。

「今までは仲介会社や管理会社がそれぞれ基幹システムを導入し、連携できずに困っていました。我々のサービスは、シームレスに連携でき、業務が効率化できます。業界のインフラになることを目指しています」(同氏)


■ITANDI リアルタイムデータベースの活用

GA technologies(ジーエーテクノロジーズ)【3491・グロース】日本の不動産テック、先駆け的存在 「RENOSY」「ITANDI」で業界のインフラに
(画像=株主手帳)

注:同社2021年10月期通期決算説明資料から引用

〝金融に近い〟アプローチ

同社は2018年からITANDIをはじめとして、8社に及ぶ企業と積極的なM&Aを実施している。

『RENOSY』の商品ラインナップは、当初の中古コンパクトマンションから、新築マンション、新築・中古アパート一棟、そして海外不動産と拡充されていった。中華圏の不動産投資家に日本の不動産投資用物件を紹介する不動産プラットフォーム『神居秒算』、タイ国内の外国人向け不動産賃貸仲介事業『ディアライフ』の取得は、インバウンド、アウトバウンド両面の不動産等投資を狙ってのことだ。

「投資用不動産は、日本の人がタイの物件、中国の人が日本の物件、タイの人が日本の物件をクロスボーダーで取引できます。それは投資だから、家賃、価格、利回りなど数値化できるため金融と同じ概念で、物件を内見せずにネット不動産で実現できるため。我々は不動産と言っていますが、より金融に近い概念でやっています」(同氏)

今後もシナジーのあるM&Aを含め、テックとリアルで蓄積した資産を活かせる領域を拡大させていくという。

*1:リーシング:賃貸物件の借り手(入居者)がつくまでのサポート業務
*2: SaaS:「Software as a Service(サービスとしてのソフトウェア)」の略。クラウドで提供されるサービスのこと


2021年10月期 連結業績

売上高853億8,800万円前期比 35.4%増
営業利益▲3,900万円
経常利益▲4億3,100万円
当期純利益▲12億6,900万円

2022年10月期 連結業績予想

売上収益1,100億円
営業利益5億円
当期利益▲3億5,000万円

注:2022年10月期からIFRSを適用

*株主手帳10月号発売日時点

樋口 龍社長
Profile◉樋口 龍(ひぐち・りょう)社長
1982年11月、東京生まれ。幼少期よりサッカーを始め、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成選手として所属。24歳でビジネスへ転向。2013年にGA technologiesを設立。ネット不動産マーケットプレイス「RENOSY」の開発・運営を始め、不動産ビジネスのDX推進に取り組む。2018年、創業から5年で東京証券取引所マザーズ(現グロース)に上場。