不動産投資は現物資産を活用する堅実な投資ですが、誰もが100%成功すると決まっているわけではありません。投資ではリスク管理がとても重要ですが、それは不動産投資でも同じです。

あまり考えたくないことではありますが、うまくいかなかった時のことも想定し、どう行動するべきなのかを学んでおくことが大切です。

金融機関のローンを組んで収益物件を購入したものの、思い通りの賃貸経営にならずローンの返済が困難になった時の有効な解決法に、任意売却があります。すでに不動産投資に取り組んでいる方、これから不動産投資を始めたいと検討している方に向けて、任意売却の基本から任意売却を活用するべき場面、メリットやデメリットについて解説します。

任意売却の仕組みと基礎知識

不動産投資のリスク管理で知っておくべき「任意売却」の基本と注意点
(画像=tamayura39/stock.adobe.com)

任意売却とは、「任意」による不動産の「売却」のことです。不動産を担保に金融機関から借り入れたローンが返済困難に陥り、滞納が続くと通常は競売(けいばい)にかけられて処分されることになります。

しかしそれだと安く買い叩かれてしまい、ローンだけが残ってしまう可能性が高く、失敗した時のダメージがより大きくなります。最悪の場合は残ったローンの負担が大きすぎて自己破産を余儀なくされるケースもあります。

そこでローンが返済困難になった時点で不動産会社に依頼をして所有物件を売却するのが、任意売却です。任意売却は通常の不動産取引と同じなので、競売よりも高く売れる可能性が高くなります。高く売ることができればより多くの金額をローンの返済に充当できるため、失敗した時のダメージを軽減できます。

任意売却は住宅ローンを組んでマイホームを購入したものの返済困難になった人が用いる手法として知られていますが、投資目的で購入した不動産であっても同じことができます。

任意売却はメリットが多い

任意売却には、主に4つのメリットがあります。それぞれ1つずつ解説していきますので、今の時点でこの4点を押さえておいてください。

競売よりも高く売れることが多い

競売ではオーナーの意向に関わらず裁判所によるオークションで売却価格が決まってしまいますが、任意売却は通常の不動産取引なので売却価格も実勢価格に近いものになります。高く売ることができればローンの返済に充当できる金額が大きくなり、失敗のダメージを軽減できます。

条件によってはあまり高い価格で売れないこともありますが、それでも実勢価格で売れたという事実があるため、不満や禍根を残しにくく結果に納得しやすいメリットもあります。

人に知られることなく処理できる

所有物件が競売にかかると、競売の情報が公開されることになります。近隣の人や知人などに所有物件が競売にかけられていることを知られたくないこともあるでしょう。その場合は任意売却が有効です。

任意売却は通常の不動産取引なので情報が公開されることはなく、人に知られずに処理したい場合にも適しています。

自己破産を回避できる可能性がある

ローンの返済が困難になり、競売で処分したとしても多くの場合、ローンだけが残ってしまいます。この金額が大きいとダメージが大きく、自己破産を余儀なくされることもあります。

任意売却であれば競売よりも高く売れる可能性が高く、高く売れることによってローンを多く返済することができれば、自己破産を回避できる可能性も出てきます。

任意売却の注意点

メリットの次に、任意売却の注意点についても解説しておきましょう。意外に注意点も多いので、3つのポイントをしっかり押さえておいてください。

任意売却は債権者主導で進められる

任意売却は、債権者である金融機関が損をしない条件でのみ行うことができます。自分主導で進められるものではなく、金融機関から条件が提示された後に、任意売却を行うかどうかの選択が可能です。

そもそも任意売却は認めない方針の金融機関も存在するため、任意売却を希望したとしても必ずできるわけではないということを認識しておきましょう。

任意売却前のローン滞納で信用情報が傷つく可能性がある

任意売却に至る経緯を考えると、ローンの返済が困難になった時点で数ヵ月間の滞納をしていることが大半です。滞納が3ヵ月以上続くと信用情報機関に情報が記載され、いわゆる「ブラックリスト」扱いになります。

信用情報機関に滞納の情報が記載されることによる不利益は、任意売却であっても回避することはできません。

競売開始に間に合わないことがある

ローンの滞納が続いている状態を放置していると、金融機関は強制的に物件を競売にかける手続きを始めます。この期間は3ヵ月から半年程度なので、この期間のうちに任意売却を完了できなければそのまま競売手続きに入ってしまいます。
くれぐれも金融機関からの連絡は無視しないことです。

任意売却を余儀なくされる事態にならないために

任意売却は競売より有利に処理できる可能性が高いため、万が一の時に備えて押さえておきたい知識ですが、不動産投資を成功させて任意売却のことを考えずに済むことのほうがはるかに重要です。

不動産投資には専門的な知識や経験を要しますが、初心者に十分な知識や経験はありません。そこで重要になるのが、不動産投資に精通しているプロの知見です。優良な不動産会社をブレーンにして、物件選びから管理などさまざまな場面で活用できれば、不動産投資は成功にぐっと近づきます。

近年では本業を持っている人が副業として不動産投資に参入するケースが増えており、供給物件が増えていることもあって優良な物件とそうでない物件に二極化する傾向が見られます。優良物件をしっかりと選んで不動産投資を成功に導くためにも、パートナーにする不動産会社は慎重に検討しましょう。

さまざまな投資の中でも不動産投資はミドルリスクに分類されており、物件選びを間違えなければ失敗する確率はそれほど高くはありません。成功すれば安定的な収入の確保や資産形成、生命保険効果など多くのメリットが得られるので、まずは不動産投資に強く信頼できる不動産会社の見極めから始めてみてはいかがでしょうか。

(提供:Incomepress



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