本記事は、中野信子氏の著書『世界の「頭のいい人」がやっていることを1冊にまとめてみた』(アスコム)の中から一部を抜粋・編集しています。
楽観主義者である。
── 「なんとかなるさ」ではなく「やればできる」
才能ではなく自分の努力を信じる
フランスの研究所時代に1番仲の良かった同僚、アルジェリア出身の女性研究者Fさんの話をしましょう。彼女の性質として特筆すべきことに、「楽観主義である」ということがあります。
ここでいう「楽観主義」は、物事を「なんとかなるさ」と脳天気に考えるという意味ではありません。彼女の楽観主義のポイントは、「やればできる」と考えているところ。つまり、自分の力を信じているのです。
これは「自分に特別な力がある」と思い込むことではありません。「誰にでも、できることをきちんとやれば、絶対に結果が出る」と信じるということです。
誰もが「すごい」と思う成果をあげても、Fさんは、「自分に特別な才能があったからだ」と考えることはありませんでした。そうではなく、「自分がちゃんと準備をしただけ」と考えるのです。
そのように自分の力を信じているFさんは、自分だけでなく、他の人にも「やればできる」力があることを信じていました。こうした他者への信頼があると、変にかしこまったり、威張り散らすことがなく、対等に付き合っていけるのです。
「それぞれの人間には立場というものがあるけれど、個々の持つ可能性には基本的には差異がない」と考え、そこに上下の区別をつけることなく、対等に接していくのが彼女の流儀です。この接し方が、職場の中で信頼を生み、結果的にいいチームを作っていける基礎になっていました。またそれが、彼女の人間的な魅力となって輝いていたのです。
楽観主義はチームビルディングに必要な考え方
「やりたいことができるように準備して行動すれば、目標は必ず達成できる」とFさんは考えて、行動しています。
何かを達成するのには時間が必要だということも、自分の体験からわかっているので、仲間の成長を辛抱強く待つことも心がています。また、時間がかかることがわかっているから、無駄な時間を使ってしまわないように注意するクセもついていきます。結果として横道にそれることなく、目標に向かって最短ルートを設定できるのです。
Fさんは、誰もが「やればできる」と信じているので、誰かと一緒にチームを組んで何かを達成していくことが苦になりません。そして、仲間がやりやすい状態を作る工夫をするのです。こうした協力関係が築けるのも、楽観主義者の際立った特徴といえるでしょう。
それでは、楽観主義の人は、どうして困難に立ち向かうことができるのでしょうか?
また、私たちは、どうすればこのような楽観主義を身につけて、困難に立ち向かえるのでしょうか?
何か新しいことをやるときには必ず、いいことも悪いことも起こるものです。そとき、「やればできる」がベースにあると、あったことをそのまま、「現実である」と受け入れることができます。良い結果を出していくには、現実を受け入れて、それについてどう対処するかを考えることが必要です。時には、非情なまでに現実的になる必要もあるでしょう。
「こんな仕事は私にはできない……」「こんなことは嫌だ」という感情は誰にも起こるものです。でも、楽観主義の人はそういった好き嫌いという感情に支配されずに、非常に合理的な判断をします。嫌いだという感情があっても、目標のためにそれが必要なら行動する。ただそれだけなのです。