本記事は、中野信子氏の著書『世界の「頭のいい人」がやっていることを1冊にまとめてみた』(アスコム)の中から一部を抜粋・編集しています。

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(画像=spacezerocom/stock.adobe.com)

やらないことリストを作る。
── 制限時間を設けて、やるべきことだけをやる

目標達成のためには期限を設けよう

ドイツ人のEさんは、神経内科の優秀な女性医師。彼女は自分に適度なプレッシャーをかけることで、最高のパフォーマンスを発揮していました。

彼女の行動には、他にも興味深いことがあります。ここでは、それを紹介したいと思います。

自分にプレッシャーをかけることと関連することかもしれませんが、彼女は目標を達成するまでの制限時間というのを自分で定めていました。すると自動的に「やるべきこと」が明確になります。あとはただその「やるべきこと」をこなしていくだけです。

ただし、ここからが肝心なのですが、彼女がすごいのは、「やるべきこと」を考えると同時に、「やらないこと」を明確にしていたところにありました。Eさんが研究者としても医師としても一歩抜きん出て、皆に評価され、優れた成果をあげることができた秘訣は、この「やらないこと」を上手に見つけていくところにあったのです。

研究者の世界の話ではなく、もっと多くの人に身近な題材を例に説明します。

例えば、「TOEICで今年は800点以上を取ろう」という目標を決めたとします。「やるべきこと」は簡単ですよね。必要な教材を集めて勉強することです。

ただ、期限を今年中とすると、何でもかんでもやるというわけにはいきません。

そこで、「やらないこと」を、次に探さないといけないわけです。よくよく考えると当たり前のことなのですが、「やらないこと」まで最初に決める人は、意外と少ないでしょう。

意味があると思うことが無意味である場合も多い

では、どんなことをやめたらいいのでしょうか。

ありがちなのが、新しい参考書や問題集を買い続けること。買っただけで英語ができるようになった気分になってしまうのでしょうか。でも、教材を手元に置いておくだけでは点数は上がりません。つまり、こういう人は「新しい本を買う」のを「やらないこと」が必要です。

また、勉強するときにモチベーションが上がるからといって、勉強仲間を増やすのに精を出す人もいるようです。でも、800点以上を取るという目標からいえば、無駄が多い行動ともいえます。

目標はあくまで、スコアアップであり、勉強仲間を増やすことではないからです。

仲間が増えたところで、勉強をしないと、当たり前ですが点数は上がりません。

驚くべきことに、満点を取った人など、ハイスコアの人と友だちになると、それだけで自分がハイスコアを取ったように錯覚してしまう人がいるようです。ウソのようですが、これはTOEICに限らず、大学受験などでもよくある話なのです。

ハイスコアの人と知り合いになれば、いい勉強法を教えてもらったり、刺激は受けるでしょうから、これはこれでいいことです。しかし、そのあとに自分で勉強をしないと、まったく意味がないのです。

つまり、こういう人が決めるべき「やらないこと」は、「目標達成にはまったく無意味な人付き合い」となります。

期限が決められた目標を達成するには、できるだけ「やること」の数を減らすべきです。それで余った時間や労力を、「やるべきこと」にまわす必要があるわけです。

「この問題集さえやれば大丈夫だから、これだけは3回繰り返して、モノにしよう」というやり方が効果的なのです。できる限り単純にするようにしないと、目標達成のための方法を探し続けているだけで、あっという間に一年が終わってしまいます。また、目標達成ができなかったのに、「目標達成のための方法論を調査した」ということに満足してしまっている人も意外に多いようです。実に残念なことです。