デジタルツインの仕組みと必要となる技術
デジタルツインの仕組みと、それを実現する技術について簡単に確認しておこう。
デジタルツインの仕組み
デジタルツインでは、集められたデータによりモデルを構築し現実の世界とそっくりな環境を作り上げる。航空機・風力タービン・工場ラインなどの物理的オブジェクトに搭載されたセンサー・カメラなどが、多様なデータを生成。これらのIoTデータが処理システムに送信され、デジタル・コピーとして反映されることで仮想モデルの構築が可能となる。
モデル構築の手法は、機械的モデルや計算モデルを使った方法があるが、さまざまなモデリングの組み合わせにより精度が増し、用途の先鋭化と時間経過によって確実性を高めることが可能だ。仮想モデル内でのシミュレーションの実施や状況の調査・分析を行うことにより同条件下で現実空間に発生する事象を確認できる。
デジタルツインを実現する技術
デジタルツインを支える技術には、主に以下の4つが挙げられる。
デジタルツインでは、上記の技術により数値データに基づいて作られた空間を人間が理解しやすい具象化された形で表示。現実の空間内で起こることと同様の現象を再現できるようになる。
デジタルツイン実現へのステップと導入課題
デジタルツインを実現していくためのステップと一般的に見られる課題を解説する。
デジタルツイン実現のステップ
・デジタルツインによるビジネス価値向上の明確化
デジタルツインは、非常に有用な技術だ。しかしどのように優れたものでも「自社に合っていない」「使い方を間違えている」といった状況ではまったく意味をなさない。それどころか、経済的、人的コストを注ぎ込む分、効果を上げられないと重く負担が残る可能性もある。そのためデジタルツインが自社業務のどの分野に貢献するのか、現状の課題を解決し得るのかを十分に吟味しなければならない。
経営面から見た場合、投資の価値があるのかを見定め、企業としての課題解決において方向性を一致しておきたい。例えば部品開発において「現状のままでは解決への検証が進められない」といった現場の声が聞かれ、それが事業の根幹に大きく関わっている場合には一考の余地がある。スモールスタートを行い自社事業への貢献が確信できれば適用する部署を拡大していく。
・利用データの確認
デジタルツインの実現にあたり、「デジタル化されている有用なデータはどの程度あるのか」「実施に必要だが活用可能となっていないデータの対応をどうすべきか」などを確認する必要がある。またIoTによるデータ収集システムの確立や外部とのコラボレーションの可能性も探りながら、モデル構築が可能となるだけの素材を調達できる環境を整備する。
・データ基盤・システムの構築
デジタルツインのモデル化に向けてリアル空間を再現するための土台を構築する。デジタルツインの構造や表現方法、既存のシステムとの相互運用性、セキュリティ面といった点を確認しながらデータを正しく活用可能とするコンテキスト化を目指す。特に安定的な継続運用を行ううえでは、セキュリティレベルの維持が不可欠となる。
・収集データとの接続
デジタルツイン構築後、リアルタイムで収集されるデータとの接続を行う。シミュレーション・分析を実施しながら必要に応じて機械学習など多様なモデリングとの組み合わせを検討する。デジタルツインは、活用しながら進化し続ける技術だ。実務への適用と継続的な改善を行うことで精度を高めることが期待できる。
デジタルツイン導入の課題
デジタルツイン導入の大きな障害となるのが、費用面での負担だ。リアルタイムで発生し続ける膨大なデータ量を扱うためには、強固なシステム構築が不可欠となる。IT関連の助成費や生産性向上の取り組みに対する補助金など公的な支援の活用も視野に入れた資金確保の必要があるだろう。デジタルツインの実現まで環境整備に思った以上の時間がかかる場合もある。
システム内で活用するためには、さまざまな形式で存在しているデータの統合が必要だ。IoT機器との接続状況の安定化は、継続的な運用に不可欠であり「正しく双子の環境となっているのか」について随時検証していかなければならない。適用する業務内容によっては、実センサーが取り付けられていない部分まで推定的に計測できるバーチャルセンサーを取り入れるなどの検討も必要となるだろう。
もとよりモデリングが最適化されるまでには時間がかかるため、デジタルツインによる成果が明らかになるまで相当の期間を要することを覚悟しておかなければならない。