本記事は、桑野麻衣氏の著書『「また会いたい!」と言われる 一流の話し方』(明日香出版社)の中から一部を抜粋・編集しています。
一流は、自分も相手も尊重する「アサーティブ」
一流だなと感じる人は空気を読みすぎることなく、言うべきことはきちんと言います。だからと言って、好き勝手に言いたい放題言っている印象もありません。この違いを、3つのコミュニケーションスタイルから見ていきましょう。
アグレッシブコミュニケーション
相手に対して攻撃的な主張をするコミュニケーションタイプです。自分がwinであるのに対し、相手はloseの関係性です。
例えば、人から無理なお願いをされた時、強い口調で「忙しいので無理です」とだけ言い放ってしまう人は、このタイプです。たとえ発言の内容が間違っていなくても、周りの人から拒絶されてしまう可能性があります。
ノン・アサーティブ(パッシブ)コミュニケーション
受け身で自己主張をしないコミュニケーションタイプです。相手はwinですが、自分自身はloseの関係になってしまいます。忙しい時に無理なお願いをされても「あ、はい。わかりました……」と断り切れずに言ってしまう人は、このタイプに当てはまります。
他者に気遣いができるとも考えられますが、消極的で何を考えているのかわからない、とマイナスの評価に繋がることも多いです。人によっては、曖昧な物の言い方や言い訳がましさ、被害者意識が垣間見える話し方が癖になってしまっている場合もあります。
アサーティブコミュニケーション
これまでの2つのちょうど中間に位置するのがアサーティブコミュニケーションです。まさに自分も相手もwin-winの関係を構築できます。
相手の言い分を尊重した上で、自己主張をします。人から無理なお願いをされた時には、「今は明日の午前中までに終えなければならないAという仕事を抱えているので、対応するのは厳しいです」とまずは現状を伝えつつ丁重に断ります。その後「明日の午後からであれば対応が可能ですが、それでもよろしいでしょうか?」と代替案を自ら提案します。こうすると、相手のお願いを断ってはいますが、マイナスの印象になることは避けられます。
せっかく人と会話をするなら、短い時間で気持ちの良い信頼関係を築きたいものです。そのために、普段から自分の言いたいことや感情を言葉にする練習をしておきましょう。すると、相手が正しい温度感で受け取れるような言葉のチョイスや伝え方ができるようになります。
今のあなたはアグレッシブ、ノン・アサーティブ、アサーティブの中で、どのコミュニケーションタイプが近いでしょうか? 仕事の時はアサーティブだけど、プライベートではアグレッシブになってしまうなど、場面や相手によって違うかもしれません。アサーティブな話し方ができるようになれば、人間関係の悩みの大半は消えるはずです。ぜひご自身の課題に合わせて、日々練習してみてくださいね。
- POINT
- 普段から自分の考えを言葉にする練習をする
ほど良い距離感を取るためにしていること
話し方の悩みでよくあがるテーマが「距離感」です。
距離感を近づけようとして馴れ馴れしくなってしまうこともあれば、ほど良い距離感を取ろうと意識しすぎてまったく距離が縮まらないこともあります。正解が1つではないので難しいと感じるのも当然です。
しかし、どのような場面でも人との距離感をうまくつかめる人がいるのも事実です。そのような人たちは、どのような点に気をつけているのでしょうか。
自分のことを隠す人と、距離感を縮めることは難しいでしょう。何を考えているかわからない相手には、自然と警戒心が生まれます。
あなたは「自己開示」という言葉は聞いたことがありますか? 意味は文字通り、ありのままの自分を素直に開示することです。飾らない〝素〟の自分をさらけ出したり、素直な感情表現や本音での会話をすることが自己開示に繋がります。
ちょっとした日頃の悩みや苦手なことを打ち明けることで、親近感を持たれることがありますよね。講演先で「旅行や出張は大好きだけど、地図を読むのが苦手で方向音痴すぎて本当に困っています」なんてお話しすると、笑ってくださるだけに留まらず「地図を描きましょうか?」「車でお送りしましょうか?」とあたたかい声をよくかけていただきます。何も重たい過去のエピソードをカミングアウトする必要はないのです。あなたの日頃の悩みや、苦手に感じることを素直に話してみてください。
初対面のうちから自己開示をすることで、相手に安心感や親近感を持ってもらえれば「この人ともっと仲良くなりたい」「この人のことをもっと知りたい」と良い人間関係を育むことができます。ビジネスシーンであれば「この人から買いたい」「長く付き合っていきたい」という意味にも繋がります。
「自己開示」のポイント
しかし、実は自己開示をする上で気をつけるポイントがあります。他人の自己開示に好感を持てた経験と、好感どころか嫌悪感を持ってしまった経験はないでしょうか。本人は自己開示をしているつもりなのに、どこか自分に酔っている印象を受けることがあります。
このような印象を受ける人は「自己呈示」になっている可能性が高いです。「自己呈示」というのは印象操作の一種で、自分をより良く見せようと呈示(アピール)することを指します。「自己開示」は〝相手〟に安心感や親近感を持ってもらうことを目的としているのに対し、「自己呈示」は〝自分〟を良く見せることを目的としているのです。
自己呈示をすること自体は、決して悪いことではありません。人は誰しも「人から良く思われたい」生き物です。社会では、自然と自己呈示せざるを得ない場面もあります。しかし、無意識で癖になっている人や、自分に酔いやすい人は要注意。相手から思うようなリアクションがなかった時に「あれ?」と思った時が、自己呈示のサインです。
先ほど述べたように、〝喜怒哀楽〟を言葉にするだけでも十分な自己開示になります。自己呈示よりも自己開示を意識することで、気持ち良く相手との距離を縮めていきましょう。
- POINT
- 素直な気持ちを表現するだけで、自己開示ができる
1984年埼玉県生まれ。学習院大学卒業後、全日本空輸株式会社(ANA)に入社。グランドスタッフとして、7年間で100万人を超えるお客様サービスに携わる。最重要顧客DIAMOND会員専用カウンターのサービス責任者、教育訓練インストラクターを務める。ANA在籍中、オリエンタルランドに出向し、ディズニーのサービスや教育を学ぶ。その後ジャパネットたかたや再春館製薬所グループ企業にて教育研修を担当し、独立。現在では、コミュニケーション、リーダーシップ、接遇マナー等をテーマに新入社員から管理職、中学生から経営者、医療業界など幅広い層に向けて、企業研修や講演を行い、これまでの受講者は50000名を超える。
著書には『好かれる人の話し方、信頼される言葉づかい』『部下を元気にする、上司の話し方』『オンラインでも好かれる人・信頼される人の話し方』(以上、クロスメディア・パブリッシング)がある。『PRESIDENT』『AERA』『with』『MORE』『CLASSY.』『Oggi』『美人百花』などメディア出演も多数。※画像をクリックするとAmazonに飛びます