本記事は、桑野麻衣氏の著書『「また会いたい!」と言われる 一流の話し方』(明日香出版社)の中から一部を抜粋・編集しています。

×雑に押しつける
△丁寧に指示を出す
→ ○相手にとってのメリットを伝える

お願い
(画像=taka/stock.adobe.com)

あなたは任せることが得意ですか?

職場に部下や後輩ができると「仕事を任せる」必要性が出てきます。誰もがはじめは仕事を任される側なので、いざ任せる側になると苦手意識が出てくる人も多く見られます。

仕事を任せる側は、その仕事の必要性を理解しています。その上で「この仕事を任せよう」となるわけです。しかし、その仕事をはじめてする人は、当然ながら理解していません。「これ、やっておいて」「あとはよろしくね」などと押しつけるだけでは、当然ながらやる気になってもらえないのです。

さすがに丸投げは良くない、と丁寧に指示をしてくれる上司もいます。「何をしてほしいのか、順を追って説明するね。まずはこのファイルを開けて、次に……」と手順をわかりやすく教えてくれます。一通り説明を終えた後には「わからないことが出てきたら遠慮なく聞いてね」とフォローも大切です。

ただ押しつけるよりはよっぽど良いのですが、実はこれでは「やらされている仕事」には変わりないのです。教えてもらえる分、不満はそこまで抱きませんが仕事の目的や意味はわからずじまい。結果として時間もかかってしまい、やる気も下がり、成長にも繋がりにくくなります。

やる気を自然と上げる任せ方

相手に行動してほしい時には、「明るい未来(=メリット)」を相手に想像してもらう必要があります。その仕事をすることで、どんな明るい未来を手にすることができ、どのようなメリットがあるのかを想像することで、相手のやる気は自然と上がります。

私はジャパネットたかたで働いていた時に、このことを当時の社長、髙田明氏から学びました。ジャパネットたかたの通販番組を見ていると、その商品の性能(スペック)の高さの説明は最小限に抑えていることがわかります。

例えばウォーターサーバーを紹介する場合、機能や値段の説明に加え、「このウォーターサーバーがお家にあれば、いつでも安全で美味しい富士の天然水が飲めますよ」「定期的に自宅に水が届くから、買い物で重い水を買ってくる必要がなくなりますよ」と生活でのメリットを複数、視聴者に必ず伝えています。このように、その商品を使うことでどのような豊かな生活が待っているのか、その便利さからどれほどの生活の変化が起きるのかを伝えることを大切にしているのです。

業務の手順や、その業務が会社や組織にとってどれほど重要であるかを伝えることも、確かに仕事のうちです。しかし、人は論理で納得し、感情で動くもの。行動してもらいたい時には、感情へのアプローチが必要です。

「この仕事は1からクライアントと関係性を築いて受注する経験ができるから、今後の自信にも繋がるよ」「この仕事を覚えると、これまで3時間かかっていた仕事が1時間もかからないでできるようになるよ。そうしたらもっと他の仕事にも挑戦できるね」と相手のメリットを意識して伝えてみてください。

POINT
任せる相手に、明るい未来を想像してもらう

×自分の要望を押しつける
△相手の要望を聞く
→ ○相手の要望に合わせた選択肢を準備する

お願い,依頼
(画像=uismolinero/stock.adobe.com)

営業や交渉など、ビジネスシーンには相手の「Yes」がほしい場面が多くあります。相手を騙したり、欺くような真似で無理やり引き出すのはもちろん論外です。一流は、相手目線に立つことを忘れずに、自然と「Yes」を引き出します。

「Yes」をほしいがあまりに、自分の要望を押しつけてくる人がいます。いわゆる押し売り営業のパターンです。大切なのはどうにか自分の主張を押し通すこと。こちらの了解をもらうことが目的に感じるので、気持ちの良いコミュニケーションにはなりません。

あくまで「あなたのお役に立ちたい」気持ちを伝えることが、「Yes」を引き出す要となります。そのために、まずは相手の要望をしっかりと聞くことからスタートします。

ただ、そうは言っても相手の要望を1から聞き、すべて叶えることは、難しいです。相手の言いなりになるだけでは、状況によってはこちらが損をする結果にもなりかねません。また、いきなり「あなたの要望を聞かせてください」と言われても相手は困ってしまいますよね。自分の望んでいることを、完璧に言葉にするのは誰でも難しいです。

相手に合わせて、選択肢を絞る

あなたは洋服屋さんの店員で、ワンピースを探しているお客様がいたとしましょう。お客様は「ワンピースを探していて……」としか言いません。そこで、「どのような場面で着用されるワンピースですか?」「色や柄のご希望はありますか?」というように、お客様の要望を聞いて言語化のお手伝いをします。お客様の要望がわかったら、「それでしたら、こちらのAとBのワンピースがおすすめです」と、選択肢を用意します。これにより、「買いたい」というお客様の「Yes」を引き出しやすくなります。

営業スキルの1つで「二者択一話法」というものがあります。YesかNoは聞かずに、「Aにしますか? それともBにしますか?」と聞くシンプルな質問技法です。すでに「Yes」が前提になっているので、相手にストレスをあまり感じさせずに同意をもらえます。その方法と同じ仕組みです。

このように相手に合わせた選択肢を準備しておくことで、「Yes」を自然と引き出すことができます。

選択肢の数が多すぎると、選ぶことを手間に感じさせてしまいます。「今月だったらいつが都合良い?」という質問よりも、「来週の水曜と金曜はどちらが都合良い?」のほうが答えやすいですよね。選択肢を絞ることは相手への配慮に繋がります。ただ、関係性や内容によっては、2択ばかりで話すと尋問を受けているような気持ちになるので要注意です。

「AとBではどちらが良いですか?」「では、このCとDであればいかがですか?」と矢継ぎ早に聞かれれば、コントロールされているように感じさせてしまうかもしれません。

このやり方は、無理やり同意をもらうためのずる賢いテクニックとして使わないでください。相手の役に立つことを前提として「Yes」を引き出せてこそ、一流なのです。

POINT
相手が望んでいること、考えていることをまずは言語化する
=「また会いたい!」と言われる 一流の話し方
桑野麻衣
あなたの心に火をつける!人材育成・コミュニケーション教育者
1984年埼玉県生まれ。学習院大学卒業後、全日本空輸株式会社(ANA)に入社。グランドスタッフとして、7年間で100万人を超えるお客様サービスに携わる。最重要顧客DIAMOND会員専用カウンターのサービス責任者、教育訓練インストラクターを務める。ANA在籍中、オリエンタルランドに出向し、ディズニーのサービスや教育を学ぶ。その後ジャパネットたかたや再春館製薬所グループ企業にて教育研修を担当し、独立。現在では、コミュニケーション、リーダーシップ、接遇マナー等をテーマに新入社員から管理職、中学生から経営者、医療業界など幅広い層に向けて、企業研修や講演を行い、これまでの受講者は50000名を超える。
著書には『好かれる人の話し方、信頼される言葉づかい』『部下を元気にする、上司の話し方』『オンラインでも好かれる人・信頼される人の話し方』(以上、クロスメディア・パブリッシング)がある。『PRESIDENT』『AERA』『with』『MORE』『CLASSY.』『Oggi』『美人百花』などメディア出演も多数。

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