富裕層に不動産のベストパートナーを LeTechとZUUが推進する不動産DXの未来を拓く「Best Partners Navi」 開発秘話に迫る

不動産DXを推進する株式会社LeTech(リテック)が、不動産を保有する富裕層と独立系の資産アドバイザーであるIFA(金融商品仲介業)向けに不動産売却サイト「Best Partners Navi」をリリースした。
本サービスの開発を伴走したフィンテックプラットフォームの展開や富裕層向けウェルスマネジメント事業を展開する株式会社ZUUの斎藤暢人氏、永崎智晴氏とLeTechの藤原寛氏、落合崇道氏に本プロダクト開発の背景について話を伺った。

株式会社LeTech 取締役 営業本部長 藤原 寛
大阪府出身。
関西大学(工学部土木工学科)卒業後、不動産会社(総合デベロッパー)にてレジデンスの開発等を経験し、その後ショッピングセンター開発会社にてショッピングセンターの企画・開発・運営等の経験を経て、2012年 6月に株式会社LeTechへ入社、2015年4月に取締役大阪本店長へ就任。2018年に株式会社LeTechの東証マザーズ市場上場を果たし、2020年8月より取締役営業本部長に就任(現任)。不動産デベロップメント事業を中心とした営業面全業務に加えて、不動産DXに係る新規事業創出の責任者として担務しており、今回開発した不動産プラットフォーム事業においても、パートナーとの提携協議、事業構想立案フェーズから携わる。
株式会社LeTech 経営企画部担当部長 落合 崇道
大阪府出身。
神戸大学(経営学部経営学科)卒業後、情報通信サービス企業に入社。
ICTシステム・サービスに関する業務と、経営企画や商品戦略、新規事業創出に関する業務を経験。2021年7月、よりスピード感を持って新規事業創出にチャレンジすべく、株式会社LeTechに入社。不動産業界の内/外、両方からの視点で、不動産DXの可能性を探求中。
株式会社ZUU 執行役員/グロースプラットフォーム・カンパニー長  斎藤 暢人
中堅・中小企業の戦略・組織マネジメントを専門とするコンサルティング会社で、三指に入るコンサルタントとして活動。 70社の戦略設計・推進、120社以上の経営分析と数百社の幹部コーチを務め、コンサルティング先に対する20本の事業起案と3事業の実現を果たす。 超大手企業のインキュベーションリーダーとしてヘッドハントを受け、2年で売上3億円になる事業をゼロベースで構築。その後事業開発の部門長として、複数の新事業アイデアの推進マネジメントの伴走を行い、推進責任者を務める。 ZUUにジョインしてからは、CEO officeにて事業開発を行うとともに、メディア事業を管掌。その後、鬼速エンジニアリング事業管掌を経て、2022年4月より現職に就任。
株式会社ZUU システム開発部 部長 永崎智晴
オンライン証券トレードシステム構築に携わった後、エグゼクティブコーチングファームにてシステム開発を管掌し、グローバル最大級のコーチングファームへ成長することに貢献。ZUUにジョインしてからは、自社開発CMS「MP-Cloud」の数十件の構築を中心に、ITによるクライアントの事業ブーストを進めている。

社名を「LeTech」と改め、不動産のDX化に積極的に進出

斎藤(ZUU) 「Best Partners Navi」についてお伺いする前に、まずは簡単に会社の変遷について教えていただけますか?

藤原(LeTech) 当社はもともとリーガル不動産という社名で、任意売却の仲介を中心にスタートしました。社名にもあるように法律家の方々と寄り添いながら債権債務の整理をし、不動産の処理を行っていくという業務が主軸となっていました。当初は、まだこの分野に大手が参入しておらず、ニッチな分野として当社に活躍の余地があったわけです。

しかし、リーマンショックが契機となり、2009年に「中小企業金融円滑化法案」が国会で可決されました。ご存じの通り、借り入れの条件を緩和するなど、中小企業の資金繰りをサポートするという法律です。日本経済にとっては素晴らしい法律でしたが、倒産件数が激減するなど、我々にとっては結果的に“逆風”となってしまったわけです。そこで、兼ねてから転身を考えていたデベロッパーに会社として舵を切ったわけです。

そして、2021年2月に社名をリーガル不動産からLeTechに変更しました。古い体質の不動産業界は、他の業界に比べてDX(デジタルトランスフォーメーション)化が遅れています。我々は、不動産とテクノロジーを融合することこそが、未来のマーケットを切り開くはずだと考えました。

キーワードは「信頼性」と「公平性」

斎藤 今回リリースした「Best Partners Navi」は、物件を売却したい富裕層に「不動産のベストパートナー」として、IFAのパートナー事業者選びをサポートする試みですね。このビジネスモデルに至った経緯を教えていただけますか?

藤原 残念なことですが、不動産業界というのは、一般の方々の多くから「信用できない」と思われているようです。これには、不動産のプロとの間で情報格差があり、かつ不動産会社間の取引の実態が見えにくいといった要因もあります。誤解を恐れずにいえば、これまで業界の一部では、信頼性や公平性に欠ける対応を実施してきたということも否定できないと思います。特に富裕層の方々にとっては、さまざまな不動産会社がアプローチしてきますので警戒心を抱かれているはずです。そこで、本当に信頼できる誠実な不動産会社を見つけていただくために不動産取引のデジタル化を行い、それをプラットフォーム化することを考えました。
不動産会社の取引履歴や評価を“視える化”することで、富裕層にとっては、誠実な対応を行い続けている不動産会社を選ぶことが可能になります。また、不動産会社にとっては、誠実な対応を徹底することで顧客から選ばれる可能性が高まります。双方にとって“Win-Win”になる、新しい仕組みを創出したいと考えています。

Best Partners Navi

斎藤 プラットフォーム化し、可視化することで、富裕層の方々とIFAの双方が不動産会社を選べるようになるわけですね。

藤原 その通りです。あくまでも主役は富裕層の方々であり、IFAです。ですので、不動産会社が顧客を選ぶのではなく、その方々に複数の提案の中から信頼できる不動産会社を選んでいただけるきっかけになるのではと考えたわけです。このプラットフォームが浸透していくことで、不動産業界の信頼性や公平性も高まると信じています。開発にあたっては、当社の落合からご説明させていただきます。

Best Partners Navi

落合(LeTech) 先ほどから挙がっています「信頼関係」や「公平性」というキーワードについては、IFAともすんなり合意はできたのですが、もともと不動産のニーズは多岐にわたっています。まず手始めとして「物件を売りたい」というニーズにお応えできるようなプラットフォームが出来上がりました。今後は「不動産を買いたい」とか「保有している不動産の価値を知りたい」、「不動産の活用方法を提案してほしい」といったさまざまなニーズにもお応えできるようなプラットフォームに仕上げていきたいと考えています。

とはいえ、開発やリリースに時間をかけていては時代の変化に対応できません。そこで今回は、プラットフォームを構築しながら機能改善していくといったアジャイル(すばやい)な開発にこだわりました。それをできるだけ安価にかつ最新の技術を使って仕上げていきたいと考えたわけです。そんなときにZUUさんからアジャイルに開発するための「ノーコード」という仕組みをご提案いただきました。

DX先進国である米国の「ノーコードツール」を活用

永崎(ZUU) 提案させていただいた「ノーコード」とは、プログラミングの知識やスキルがなくてもウェブアプリを開発できる仕組みのことです。専門的なITエンジニアが不在でも、安価にデジタル化を推進できるわけです。すでにLeTechでは、「YANUSY(ヤヌシー)」という不動産プラットフォームを運営していましたが、「これをもっと活かしたビジネス展開ができないか」との相談を受けたのがきっかけでした。

落合 はい。ビジネス展開の相談をスタートしたのは、2021年の10月頃だったと記憶しています。本プラットフォームについては2022年5月に基本構想が固まりましたが、開発に着手してからは約3カ月間という短期間でリリースしていただきました。恐らく、従来からの手順で開発していたとしたら、少なくともリリースまでに1年間は必要だったのではないでしょうか。

永崎 打ち合わせを重ねていく中で、まずは時間をかけずに立ち上げなければならないということを強く感じました。最初は、さまざまなご要望をいただきましたが、実際に見積もっていくと、時間や費用が必要な提案も少なくありませんでした。仮にそれらをつくり上げたとしても、実際に活用していただけるものになるのかという疑問も残っていました。

そんな時、外部のリソースなどを検討していく中で、不動産DXの先進国である米国で最も活用されている「Bubble」というノーコードツールを見つけ、それをご提案させていただきました。これまでもLeTechとZUUでは、スクレイピングソフト「Octoparse」を使った「YANUSY Funding」 など、ZUU開発のCMS「MP-Cloud」上で、ノーコードツールを利用した高速で低コストな開発を進めてきました。

YANUSY Funding
(画像提供:LeTech)

着手して、約3カ月間で今回の「Best Partners Navi」がリリースされたわけですが、不動産の売り手と買い手を直接マッチングするプラットフォームは日本でも増えてきています。その中で、不動産のDX化の波に乗っていたものと言えると思います。

落合 これまでも売り手と買い手をマッチングするプラットフォームはなかったわけではありません。しかし、それらの多くは情報を入力すると営業電話がかかってくるといった、あくまで営業ツール的な存在でした。一方、「Best Partners Navi」では、富裕層と不動産会社の間にパートナー(IFA)が介在し、複数の不動産会社を比較するといったモデルに仕上がっています。私の知る限りでは、これまでになかったビジネスモデルです。

不動産に関するコンシェルジュ的な機能も視野に

斎藤 今後、このプラットフォームにおけるビジョンのようなものは描かれていますか?

落合 現在、IFAからさまざまなニーズが出てきています。また、今回の取り組みをポジティブに受け止めていただいている不動産会社も多く、もっと富裕層の方々とコミュニケーションを取れるような機能を追加してほしいとのご要望もいただいています。現在は不動産売却の仕組みのみですが、これが軌道に乗れば、不動産を買いたいニーズですとか、不動産に関するコンシェルジュ的な機能もプラットフォームに実装していけると思います。ノーコード環境を活用することで、機動的に機能を強化していきたと考えています。また、この仕組みはIFAだけではなく、弁護士や税理士と言った富裕層のコンサルティングをされる方々を巻き込んだ大きなプラットフォームに広げていけるのではと考えています。

藤原 富裕層の皆様の資産ポートフォリオの不動産部分をしっかりサポートできるような仕組みを築きあげていければ、いろいろな業種の方々との協業も成り立つはずです。よく日本人は資産形成が上手じゃないと言われます。不動産を実需としての資産ではなく、ぜひ金融資産の一部と考えていただければと思っています。そのうえで、日本の方々の金融リテラシーの向上に役立つようなプラットフォームに育つことができれば、このビジネスは大成功と言えると思います。そのスタートとして、まずは富裕層の方々やそのコンサルティングを手掛ける方々に役立ててもらえるようなプラットフォームでありたいと考えています。

落合 富裕層の方々はこれまでも当然のように不動産会社と接点があったはずです。「本当にこれでよかったのか」とか「ほかの選択肢はないのか」と思ったときに、弊社の「Best Partners Navi」を活用していただければ、これまでとは異なる提案ができるかもしれません。富裕層の方々に信頼していただき、プラットフォームの価値を認めていただけるのではと自負しています。

一方、富裕層を顧客に持つIFAにとっては、システムを活用いただくことで、富裕層の方々とこれまでよりも踏み込んだコミュニケーションが取れるはずです。その中で公平性と透明性を打ち出していけるようなプラットフォームにできればと考えています。

永崎 Web3.0ではメタバースを通じたプラットフォームの新たな付加価値も注目を集めています。ユーザーの期待を超えるプロダクトに成長させていけるように、これから我々も伴走パートナーとしてご協力させていただきたいと思います。

斎藤 新しい不動産DXの未来を拓く、これからの発展も益々楽しみなサービスになりそうですね。ありがとうございました。