人間ドックの費用は、原則として医療費控除の対象外となる。しかし、ケースによっては対象となることもあるため注意したい。本記事では、どのようなケースであれば医療費控除の対象となるのかについて解説し、人間ドック費用の助成制度についても紹介する。

人間ドックと健康診断の違い

人間ドックの費用は医療費控除の対象になる ? 知っておきたい助成制度も紹介
(画像=fpdress / stock.adobe.com)

まず混同しがちな「人間ドック」と「健康診断」の違いについておさらいしておこう。どちらも病気の有無や健康状態などを医師が診察・診断することに変わりはない。しかし、人間ドックのほうが検査項目は多く、健康診断では分からない病気を早期発見しやすい傾向だ。

法的義務に関しても異なり、人間ドックには企業に対して実施を義務づける法律はない。一方で健康診断は、常時雇用する労働者を対象に実施することが労働安全衛生法で企業に義務づけられており、企業に勤めている人は1年に1回、定期健康診断を受けることになる。

人間ドックにかかる費用の相場

人間ドックは、勤務先が福利厚生の一環として費用の全額もしくは一部を負担してくれるケースもあるが、基本的には自己負担だ。では、人間ドックにかかる費用の相場はどの程度なのだろうか。

人間ドックの費用は、検査する内容や項目数、医療機関によってかなり料金に幅があるものの、一般的には1~5万円程度の費用が発生する人間ドックを受診する人が多い傾向だ。中には、しっかりと病気の有無を調べようと5万円以上のプランを選ぶ人もいる。

人間ドック費用が医療費控除の対象となる要件

人間ドックは、病気やケガの治療を行うことを目的としていないため、かかった費用は医療費控除の対象にはならない。

しかし人間ドックを受診した結果、病気が見つかり、引き続き治療を行うことになった場合は、病気の治療費と人間ドックの費用を合算し、医療費控除の対象にできる。

人間ドック費用の助成制度

「病気が見つからなければ医療費控除の対象にはならいないから人間ドックの受診を控える」というのは、健康に対するリスクを抑える視点から考えれば、決して褒められた選択とはいえない。ここでは、人間ドックの費用負担をなるべく小さくするために、自治体における助成制度の例を紹介する。

東京都府中市の例

例えば東京都府中市では「人間ドック受診費用助成制度」を設けており、20歳以上、市税を完納していることなどの条件をすべて満たした人に対して助成を行っている。助成条件を満たした場合、受診料の2分の1 (上限1万円) を助成してもらえる。助成の申請は、年度ごとに1回のみだ。

ただし、助成を受けるために必要な検査項目が決まっており、一部の項目を受けていないケースでは助成の対象外となるため、事前に府中市の公式サイトで内容をチェックしておきたい。

東京都小平市の例

東京都小平市でも補助を行っている。30歳以上の国民健康保険の加入者に対し、人間ドックや脳ドックを受診した際、人間ドックだけなら1万円、脳ドックも合わせて受診した場合は2万円の補助が用意されている。

なお、小平市の場合も補助の申請は年度ごとに1回のみで、人間ドックの検査項目についても細かく指定があるため、注意したい。

人間ドック以外の助成制度や自治体サービスもうまく活用しよう

人間ドックに限らず、各自治体でさまざまな医療費や検診費用の助成制度が用意されているため、積極的に利用を検討したいところだ。

例えば東京都では、帯状疱疹ワクチンの接種費を補助する区市町村に対して補助事業を行っている。この補助事業を活用すれば、費用の2分の1の補助を受けることが可能だ。ただし、ワクチンの種類によって1回あたりの補助上限金額は、5,000~1万円となっている。

また、骨粗しょう症検診を無料で実施している自治体もある。大阪市は、年度末時点で18歳以上となる市民を対象に無料の検診を実施しており、検診を希望する場合は保健福祉センターに電話で予約すれば受診可能となる。

こうした助成を受けるためには、原則「申請」が必要となることを覚えておきたい。対象であっても申請をしなければ、費用負担を減らす機会をみすみす逃すことになる。申請が可能な期間は、自治体・制度によって異なるため、しっかりと確認して早めに対応しよう。

「健康寿命」を伸ばすために

今後「人生100年時代」が訪れるといわれている。長生き自体は良いことだが、特に重要になるのが「健康寿命」だ。健康寿命とは「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」 (厚生労働省) のことを指す。健康寿命を伸ばすためにも、人間ドックや定期検診などは積極的に受けておきたい。

早期発見で治療可能な病気は多い。費用負担が減れば、検診を受けるハードルは下がるため、今一度、自分が住んでいる自治体の制度などをチェックしてみてはいかがだろうか。

(提供:大和ネクスト銀行


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