この記事は2022年12月12日に「第一生命経済研究所」で公開された「景気予測調査から見た四半期決算見通し」を一部編集し、転載したものです。


景気ウォッチャー調査
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売上高・経常利益とも計画上方修正

2022年12月12日に公表された2022年10~12月期法人企業景気予測調査は、2022年11月下旬にかけて資本金1千万円以上の法人企業に対して行った景気予測調査であり、今期の業種別企業業績計画を予想するための先行指標として注目される。

そこで本稿では、2023年1月下旬からの四半期決算発表で、今年度の企業業績計画の上方修正が見込まれる業種を予想してみたい。

下図は、法人企業景気予測調査の調査対象企業の各調査時期における売上高と経常利益計画の今年度見通しの前回からの修正度合いを見たものである。

まず売上高を見ると、製造業・非製造業とも増収率が上方修正となっている。このことから、四半期決算でも今期の売上高計画が上方修正される業種には注目が集まるものと推察される。

一方の経常利益は、製造業・非製造業とも上方修正となっているが、予想以上の円安の進展などにより、製造業は増益計画に修正されている。このことから、2023年1月下旬からの四半期決算発表では、製造業を中心に今年度利益計画の上方修正が期待される中、非製造業での上方修正は小幅にとどまるものと推察される。

第一生命経済研究所
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良い意味での増収率大幅上方修正は「娯楽」のみ

以下では、2023年1月下旬からの四半期決算で、今期売上高計画で上方修正が予想される業種を見通してみたい。下表は業種別売上高計画を前年比と前回調査からの修正率で比較したものである。

第一生命経済研究所
(画像=第一生命経済研究所)

結果を見ると、2022年度は「鉱、採石、砂利採取」以外の全業種で増収計画となっている姿は前回と変わっていない。こうした中で、前年比の上方修正率が高い業種は「石油・石炭製品」「電気・ガス・水道」「娯楽」「農林水産」であり、特に「石油・石炭製品」では+20ポイント以上の上方修正率となっている。

「娯楽業」については、各種観光支援策や水際対策の緩和等が進んでおり、移動や接触を伴う経済活動が正常化に向かう動きが織り込まれている可能性が推察される。

一方、「石油・石炭製品」や「電気・ガス・水道」「農林水産」については、次に見る経常利益計画では大幅減益もしくは赤字計画になっていることからすれば、想定以上の円安が進展したことなどに伴い化石燃料や仕入れ価格の水準がさらに引きあがったことによる価格転嫁の影響が大きいことが推察される。

「自動車」「鉄鋼」「その他物品賃貸」等が増益率大幅上方修正

続いて、経常利益計画から増益率の上方修正が期待される業種を見通してみよう。結果を見ると、多くの業種で減益計画となっており、これは国際商品市況価格高騰等に伴うコスト増が主因と推察される。

こうした中、増益率の上方修正が目立つ業種は「自動車」「鉄鋼」「その他物品賃貸」「その他輸送機械」「電気機械」等であり、いずれも2桁を大きく上回る上方修正率となっている。

第一生命経済研究所
(画像=第一生命経済研究所)

中でも「自動車」や「鉄鋼」「その他輸送機械」「電気機械」については、代表的な輸出関連業種であるため。この3カ月間で想定以上に円安が進んだことで利益が上振れしたことに加えて、想定為替レートが円安方向に修正された可能性も推察される。加えて、自動車や電気機械などでは半導体供給の改善効果も寄与しているものと思われる。

一方、「その他物品賃貸」も大幅増益計画に上方修正されている。ここに含まれるのは、映画・演劇用品賃貸業や貸衣装業などである。このため、各種観光支援策や水際対策緩和により国民のコロナに対する対応改善やインバウンド消費拡大が期待されていること等により、移動や接触を伴う経済活動に関連する物品賃貸の増加が寄与している可能性が推察される。

なお、日銀が2022年12月14日に公表する12月短観の業種別収益計画(大企業)は法人企業景気予測調査に比べて聞き取りのタイミングが若干遅いことから、円安や観光支援策・水際対策緩和などの影響をより織り込んでいる可能性が高いため、12月短観における大企業の収益計画も四半期決算と今期業績見通しを読み解く手がかりとして注目したい。

第一生命経済研究所 経済調査部 首席エコノミスト 永濱 利廣