地球儀/東南アジア
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2022年はオルタナティブ投資の民主化に向けた動きが高まる一方で、プライベートエクイティやベンチャーキャピタルファンドへの資金流入が減少するなど、変動の大きい1年だった。2023年のオルタナティブ投資市場には、果たしてどのような変化が待ち受けているのだろうか。海外投資家やアナリストが注目する5つのキーワードを見てみよう。

2023年はオルタナティブ投資のAUMが1,859兆を超える?

2023年のオルタナティブ投資に対する総体的な見通しには、ポジティブなものが多い。

たとえば、Pregin(*1)は2022年10月に発表したオルタナティブ投資見通し「The Future of Alternatives(オルタナティブの未来)」中で、2023年は世界のオルタナティブ投資の運用資産残高(AUM)が14兆ドル(約1,859兆2,681億円、2017年比50%増)に達すると予想。この予想は同社独自のデータとファンドマネージャー300人、機関投資家120人を対象とした調査結果に基づくものだ。


*1:ロンドンを拠点とするプライベート市場データ企業


オルタナティブ投資を中〜長期的戦略に組み込む投資家も増えており、調査に参加したファンドマネージャーと機関投資家の84%が「今後5年間でオルタナティブ投資への配分を増やす」と回答した。

2023年、重視すべき5つのキーワード

(1)PE、VCは中~長期的視野で

資金流入が活発化した2021年から一転、2022年のPE及びVC市場は急激に冷え込んだ。

Preginの2022年1~9月のデータによると、それぞれの調達額は4,050億ドル(約53兆7,846億円、2021年通年比41.8%減)、1,625億ドル(約21兆5,802億円、26.6%減)落ち込んだ。2023年も低迷は続くと予想する。

しかし、プライベート市場は依然として成長が期待されている領域であることから、中〜長期的な利益を狙う傾向が強まりそうだ。

(2)コモデティの高騰

海外投資家が引き続き注目しているのはコモデティ市場だ。

ゴールドマン・サックスは「2023年に最高のパフォーマンスが期待できる資産クラス」としてコモデティを挙げており、2023年のリターン率が40%を上回ると予想する。原料不足の長期化がコモデティ価格をさらに押し上げるというのがその根拠だ。

確かに、パンデミックによるサプライチェーンの混乱やロシア・ウクライナ戦争を背景にコモデティの価格は高騰しているものの、石油や天然ガス、金属といった原料不足を解消するための設備投資は乏しく、供給能力の向上にはつながっていない。

その一方で、シティグループを含む一部のアナリストは「経済が脆弱過ぎる」との理由から、コモデティが高騰し続ける可能性に懐疑的な見方を示している。

(3)ESG及びサステナビリティの規制強化

2023年もESG及びサステナビリティは、投資家にとって重要な投資判断の指標となりそうだ。

2022年6月23日付けの記事「世界的に広がるESG規制 加速するグリーンウォッシュの動き」でもレポートしたが、欧米や日本を中心にうわべだけの環境対策である「グリーンウォッシュ」を監視する動きが加速していることから、投資家の関心は各国のESG規制動向に向けられている。

ESG投資環境が整備されることにより、実態をともなわない企業やESG関連の金融商品が一掃され、市場の透明性が向上すると期待されている反面、ESG市場への投資規模が大幅に縮小する可能性が懸念される。

(4)新興及びフロンティア市場の成長 

すでにクローズエンド型ファンド(*2)の長期的な資金源として台頭しているアジアだが、2023年は米国と肩を並べる規模に成長した中国のVC市場に代わり、新たな新興及びフロンティア市場(*3)を探索する傾向が投資家間で高まりそうだ。


*2:資産を取り崩すことができないタイプの投資信託
*3:ベトナムやフィリピンなど、新興市場よりさらに規模の小さい市場


前述の調査で「現在は投資していないが今後5年以内に投資を予定している国・地域」として投資家が選択したのは、インド(33%)、新興アジア(27%、*4)、アフリカ(24%)、中国(23%)、ブラジル(22%)だった。


*4:日本以外の東・南アジア16カ国・地域


(5)高齢化社会が経済・投資に与える影響

もう1つ、2023年に投資家の関心がさらに高まると予想されているのは、高齢化社会が経済や投資に与える影響だ。

Brookings Institution(ブルッキングス研究所)のデータによると世界の高齢者数は7億5,000万人に達しており、2030年までに10億人、2050年までに50億人を超えることが予想される。

世界人口が高齢化とともに拡大を続けている近年、需要と供給のパターンが変化していることに加え、一部の国においては出生率の低下と相まって、社会を支える労働力の確保が困難になりつつある。労働力の減少は商品・サービスの供給不足を引き起こすほか、長期的には実質金利に圧力がかかるとの見方もある。

その一方で、老後の資産運用や高齢化社会のニーズに応える新たな商品・サービスの増加といったポジティブな展開も予想される。すでに高齢化先進国においては、ヘルスケアや医薬品、介護関連、高齢者専用のコンドミニアムやコミュニティといった産業が活発化しており、今後さらなる成長が予想される。

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常に変動している市場の動きを100%正確に予想することは不可能だが、これらのキーワードを投資戦略の参考にすることにより、2023年の市場の動きが予測しやすくなるかもしれない。