銀行で融資を申し込む際には、決算書のほか必要に応じて試算表や事業計画書などさまざまな資料の提出が必要だ。そのなかに現金の収支を説明するのに必要となる「資金繰り表」と呼ばれるものがある。しかし資金繰り表をどのようにして作成すればよいのか分からない経営者も多いのではないだろうか。

「資金繰り表」は、銀行融資を受けるためだけに作成するものではない。ただし、銀行から提出を求められなくとも融資を受ける際には、作成しておいたほうがよいだろう。この記事ではなぜ資金繰り表を作成する必要があるのか、その目的や作成方法について解説していく。

目次

  1. 銀行から融資を受けるときに必要となる書類
    1. 銀行融資を申し込むときの手順
  2. 資金繰り表をなぜ作る必要があるのか
    1. 資金繰り表とはどのようなものか
    2. 資金繰り表を作る目的とは
    3. キャッシュフロー計算書との違い
  3. 資金繰り表を作成する方法
    1. 資金繰り表の作成方法
    2. 資金繰り表を作成する際の注意点
  4. 資金繰り表作成の習慣化を
銀行融資に必要な資金繰り表の作成方法を詳しく解説
(画像=kyo/stock.adobe.com)

銀行から融資を受けるときに必要となる書類

銀行から融資を受ける際は、決算書や試算表、受注明細などさまざまな資料の提出を求められることがある。最初に銀行融資の申し込み手順と融資に必要となる書類について確認しておこう。

銀行融資を申し込むときの手順

1. 融資の申し込み
申し込みから審査を経て融資が実行されるまでには、一定の時間がかかる。特に初めて融資を申し込む際には、銀行としても取引実績がなく融資先の内容を詳しく把握していないため、1ヵ月以上かかると思ったほうがよいだろう。融資の申し込みの際には、どのような資料が必要となるかを銀行担当者にあらかじめ相談してそろえておくとスムーズだ。

2. 融資審査・面談
融資の審査は、その企業の事業の継続性・安定性・返済能力などさまざまな角度から行われる。融資の担当者との面談の際には、入出金の予定や今後の売上の見込みを聞かれるケースが多い。また申込時に提出した書類のほかにもさまざまな資料の提出を求められることがある。

【融資を申し込みするときに必要となる主な書類】

融資を申し込みするときに必要となる主な書類

3. 融資の実行
審査が通って契約手続きが終われば、融資が実行される。設備資金の融資を受けた場合は、口座入金後、資金使途(使いみち)が申込内容と相違ないかを確認するために領収書や振込先の記録の提出を求められる。

資金繰り表をなぜ作る必要があるのか

資金繰り表は、企業の経営状態が良好な場合や融資に不安がないと判断された場合には提出を求められないこともあるため、必ず求められるものではない。それでも銀行の融資を受ける際には、作成しておいたほうがよいだろう。

資金繰り表は、なぜ作成する必要があるのだろうか。ここでは、資金繰り表を作成する目的について解説する。

資金繰り表とはどのようなものか

中小企業は、大企業に比べると経営体力面が劣ることもあって、銀行は事業の継続性や返済能力について慎重に審査を行っている。そのため中小企業が銀行などからの融資を受ける際には、具体的な数字が証明できる資料を求められることが多い。

資金繰り表は、現預金の流れと残高の推移を過去の実績から把握し、今後の現預金の動きを予想して会社の経常収支を確認するために作成するものだ。

作成方法は、現預金の入出金の流れを現金出納帳や預金通帳を集計してそのまま表に落とし込み、今後の入金予定や出金予定を過去の実績や現在の見込みから予想して作成していくだけのものだ。そのためきわめてシンプルなものといえる。しかし資金繰り表上では、最終的に翌月へ繰り越す現預金の残高は、必ずプラスにならなければならない。

なぜなら繰越残高がマイナスとなれば、現預金にマイナスはないため、破たんを意味するからだ。

資金繰り表を作る目的とは

資金繰り表は、資金の流れを把握することで資金ショートが起こらないよう、事前に資金調達をするタイミングを確認する目的で作成する。上述しているように資金繰り表は、銀行融資を受けるためだけに作成するものではない。しかし銀行から融資を受ければ確実に毎月の返済を履行していく必要があるため、資金繰りの管理はより一層厳格に行わなければならなくなる。

そのため銀行から融資を受けるのであれば、資金繰りを把握するためにも資金繰り表は作成しておきたい。入金予定や支払予定を把握していなければ、月末に突然資金不足で「銀行の返済ができない」「従業員の給与が支払えない」「取引先への支払いができない」といった事態が発生しかねない。現預金がなくなり支払いや返済が滞れば、企業は破たんすることもある。

銀行で融資を受ける予定がなくても、経営者であれば資金の流れを常に把握しておかなければならない。資金不足の解消には、売上代金の回収期間を早くして仕入資金などの経費の支払期間を遅くする工夫が必要だ。それができない場合は、銀行融資などで資金調達をしなければならない。資金繰り表で資金管理をしていれば、資金不足に備えて迅速な対応が可能となる。

キャッシュフロー計算書との違い

資金繰り表と同じく資金の流れを説明するものにキャッシュフロー計算書と呼ばれるものがある。資金繰り表は、現預金の残高と資金の収支をリアルタイムに管理し、将来の資金繰りを予想するためのものだ。一方、キャッシュフロー計算書は、決算期など過去の現預金の増減と資金の流れの理由を「営業活動」「投資活動」「財務活動」の視点から説明するためのものである。

資金繰り表は、直近の資金の現預金残高の推移から資金繰りを把握し、将来に向かって資金ショートが起きないように現預金残高を予想するために作成する。将来資金不足に陥ることがないかを事前に把握できれば安定した経営ができるようになるだろう。