本記事は、中村英泰氏の著書『社員がやる気をなくす瞬間 間違いだらけの職場づくり』(アスコム)の中から一部を抜粋・編集しています。

あいさつこそ、心理的な距離を縮める最強のツール

お互いにお辞儀をする正装の若い中国人と白人のビジネスマン
(画像=pressmaster/stock.adobe.com)

私たちは、離れている人とは、関係性を築くことはできません。

ここでいう、離れているとは「物理的な距離」と「心理的な距離」の両面です。

職場の「関係密度」を高めるためには、距離を縮め、信頼しあうことが欠かせません。

ここで考えなければならないのは、信頼しあう関係を築くことの必要性です。

時に、「職場とはお金を稼ぐ場所であり、報酬さえもらえればそれでいい」と言い切る強固な人と、面談の機会をいただくことがあります。

私自身が過干渉なタイプではないので、深くはかかわりませんが、興味があって次のような質問をします。

「報酬さえと言うのであれば、1円にもならない人間関係は面倒ですよね」
「報酬さえもらえるように、常に1人で過ごせる道を模索していますか」
「あなたは、最終的に報酬さえ得られれば、ほかの社員がどうなってもいいのですか」
「今日も、お金にならない時間が面倒なら、終始黙っていることも、欠席することもできるはずですが、あなたはずっと話されています。なぜですか」

すると、うまくいかなかった過去の人間関係に限界を感じて、いつしかお金を中心に物事を考えるようになったと内心を打ち明けることがあります。

もちろん、例外はありますが、強固なタイプの人であっても、自分が1人でなにかを成せるわけではないと知っていて、心の底では信頼のある関係性が必要だと感じているのです

そして、信頼のある関係性を築くためには、これまで述べてきたように、接触の量と質が大切になります。

この量と質を満たし、なおかつ非常に簡単に実行できるのがあいさつです。

あいさつは、関係性が築けていなかったり、深められていなかったりする相手にも関係なく、毎日、くり返し、気軽に声をかけられる絶好の接触機会です。

あまりにも上の立場の人に対しては、あいさつしてよいものかどうか迷うかもしれませんが、きちんと聞こえる声で、礼儀正しく行えば、プラスのイメージになります。

そのため、サイロやスラブ、バウンダリーといったものが生み出す「心理的な溝」もあまり気にせず、どんどん接触してください

あいさつは、心理的な距離を縮めるために人が生み出した最強のツールなのです。

あいさつの3段活用を意識する

あいさつを単に儀礼的で形式的なもので終わらせず、さらに接触の質を高めるために、次の3つの段階を意識して、あいさつにプラスアルファ付け加えてはいかがでしょうか。

具体的な例を次に挙げてみました。

段階を上げていくことで、互いの関係をつなぐ信頼のフックの大きさが格段に変わっていくのが、実感できると思います。

・儀礼的で形式的な段階
「おはようございます」、「お疲れさまでした」

・相互を一人称で認めていることを伝える段階
「〇〇さん、おはようございます」

・相手の行動に対して認めていることを伝える段階
「〇〇さん、おはようございます。昨日は、□の件で残業お疲れさまでした。助かりました」

・相手の変化に対して認めていることを伝える段階
「〇〇さん、おはようございます。昨日は、□の件で残業お疲れさまでした。助かりました。△の資料少し見たけど、理想的だよ。おかげでD社への提案に早く入れるよ」

いかがでしょう。ここにお伝えした会話を中心としたバーバルコミュニケーションに、次の項で紹介する表情やしぐさという言語を使わないノンバーバルコミュニケーションを加えると、さらに質は高まります。

社員がやる気をなくす瞬間 間違いだらけの職場づくり
中村英泰(なかむら・ひでやす)
株式会社職場風土づくり 代表 ライフシフト大学 特任講師
1976年生まれ。東海大学中退後、人材サービス会社に勤務したのち、働くことを通じて役に立っていることが実感できる職場風土を創るために起業し、法人設立。 年間100の研修や講演に登壇する実務家キャリアコンサルタント。

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