保険の営業担当者は、たびたび顧客に「変額保険」への加入を勧める。しかし、変額保険は仕組みが複雑な保険である。その仕組みを理解しないまま契約してしまって後悔する人も少なくない。この記事では、変額保険とはどんな保険なのか、どこに注意すればよいのかを解説する。せっかく「安心」を手に入れるために保険を検討しているのだから、商品の性質をきちんと把握し、リスクを理解したうえで加入しよう。

変額保険とは

保険営業に「変額保険」を勧められたときに注意すべきこと
(画像=NanSan/stock.adobe.com)

まず、変額保険とはどのような保険なのか、基本を整理しておこう。

変額保険とは

変額保険は、将来受け取れる金額が変動する保険だ。「もしものときに備える」という保険本来の役割だけでなく、資産運用の役割も兼ねている点が大きな特徴である。

変額保険を契約すると、保険料として支払った金額の一部が、保険会社や契約者本人の選択した方法で運用される。運用がうまくいけば将来受け取れる金額が多くなり、運用が不調だと少なくなる。米ドルなど外貨で運用するものは、為替変動の影響も受ける。

「保険金(亡くなったときや満期を迎えたときに受け取れるお金)」や「解約返戻金(解約したときに受け取れるお金)が運用結果によって左右されるため、大きな利益を得られる場合もあれば、損失が出る場合もある。

このような特徴から、変額保険は通常の保険と比べて「ハイリスク/ハイリターン」といえる。加入を検討する際は、リスクを理解し、許容できるかどうかを判断する必要があるだろう。

変額保険の種類

ひとくちに「変額保険」といっても、いくつかの種類がある。営業担当者からおすすめされた変額保険がどれにあたるのか、確認しておこう。

・有期型

有期型の変額保険には「満期」がある。満期までに亡くなれば死亡保険金を受け取ることができ、満期以上に長生きできた場合は満期保険金が受け取れる。また、満期までに解約した場合は、解約返戻金が受け取れる。

もちろん、受け取れる金額は運用結果次第で変動する。死亡保険金については最低保障が設けられており、運用がうまくいかなくても受け取れる「基本保険金」と、運用がうまくいったときに上乗せされる「変動保険金」に分かれている。

ただし、満期保険金と解約返戻金には死亡保険金のような最低保証がない点に注意しよう。

たとえば運用がうまくいっていない状態で長生きした場合、受け取れる金額が「思っていたよりずっと少なかった」「支払った保険料より少なくて損をした」ということもありうる。短期間で解約した場合の解約返戻金は、特に目減りしやすいので要注意だ。

・終身型

終身型の変額保険には満期がない。解約しない限り、保障が一生涯ずっと続く。満期保険金はなく、死亡保険金と解約返戻金のみに限定される。有期型同様、死亡保険金には最低保証があるが解約返戻金にはない。

・変額個人年金保険

個人年金保険は、保険料を支払ってコツコツと積み立てていき、契約時に決めたタイミングが来たらそれまで積み立てたお金を少しずつ受け取れる仕組みになっている。「自分で自分の年金を用意する」ための保険ともいえる。

変額個人年金保険は、将来少しずつ受け取る「年金」や亡くなった場合に受け取れる「死亡給付金」の金額が運用結果次第で変動する。最低保証があるかどうかは選択する商品によって異なるため、よく確認しておこう。

変額保険で確認すべきポイント

変額保険に加入するなら、以下のような項目は最低限確認しておきたい。

・変額保険の種類(有期型? 終身型? 個人年金?)
・どんなときにいくらくらいお金を受け取れるのか
・基本保険金額(最低限受け取れる金額)の有無と金額
・途中で解約することになった場合はどうなるのか
・保険料はいつまでいくらずつ支払うのか
・保険料の支払いが免除される条件
・(変額個人年金保険の場合)年金はいつまで受け取れるのか

近年は、変額保険の中でも「ガンと診断されたらその後の保険料支払いは不要」「禁煙や血圧の改善で積立金アップ」など、独自の特徴を持つものが登場しつつある。

そのため似たような名前で同じような内容の保険に見えても、実は大きな違いがあることも。思い込みで判断を避けるためには、いくつかの変額保険で見積もりを取るなどして、具体的な内容や保険料を比較してみるのがおすすめだ。

変額保険の仕組みは少々複雑で「わかりにくい」と感じる人も多い。しかし、自分のお金(資産)に直結する重要なことなので、しっかり理解しながら話を進めるようにしよう。

変額保険のメリット

変額保険の長所について整理しておこう。保険の営業担当者が「変額保険のメリット」として説明するのは、以下のような点だ。

保険と資産運用を兼ねる

亡くなったときに備える保障機能と、長生きに備えて資産を増やす投資機能、変額保険ならどちらの機能も付いている。

「自分や家族のために保険や投資を考えなければならないけれど、正直よくわからない」という人には、これ1つ(変額保険)でどちらの問題も解決できる「お手軽感」は魅力だろう(ただし後述するが、保険と投資は本来分けて行ったほうが効率的だ)。

変額保険は老後資金や教育資金を確保する手段となるほか、相続税対策として利用されることもある。

同じ保障の定額終身保険と比べると保険料が安いことが多い

保険金の金額が変動する「変額保険」に対し、一定額に決められていて変動しない保険のことを「定額保険」と呼ぶ。

同じ保障額で終身型なら、変額保険のほうが定額保険よりも保険料が安い傾向にある。保険会社にとって定額保険は、運用結果にかかわらず常に一定の保険金を出す必要があるため負担が大きく、その分保険料も割高に設定される。

運用リスクを契約者が負う代わりに保険料が安いのが変額保険、保険会社が負う代わりに保険料が高いのが定額保険と考えよう。

うまくいけば利益が出る。インフレにも強い

変額保険は、運用に成功すれば大きな利益を得られる可能性がある。これも大きなメリットだが、さらに、運用しているからこそ「インフレに強い」という側面もある。

たとえば貯金で500万円を用意していても、インフレ(物価高)が進んでお金の価値が下がってしまったら、同じ500万円でも購入できるものが少なくなり資産が目減りしたも同然になる。

しかし運用していれば、景気がよくて株価が上昇しているときは受け取れる金額が多くなる。目減りさせることなく、波に乗って増やすことも可能なのだ。

生命保険料控除が受けられる

変額保険の中には「生命保険料控除」を受けられる条件を満たすものもある。生命保険料控除の対象になる変額保険なら、年末調整や確定申告の際、加入していることを申告すると所得税や住民税が減額される。

変額保険のデメリット

変額保険に関するトラブルを避けるためには、メリットだけでなく、デメリットやリスクを把握しておくことが肝心だ。以下のような点に気を付けよう。

元本割れのリスクがある

変額保険の大きなデメリットは、元本割れするリスクがある点だ。運用がうまくいかなければ「何年も(何十年も)コツコツと保険料を支払い続けてきたのに、最終的に受け取れた金額は、今まで支払ってきた保険料の総額を下回っていた」という事態もありうる。

投資では、基本的にリスクとリターンが比例する。変額保険は定額保険より「ハイリスク/ハイリターン」で、利益を狙える代わりに損失も覚悟しておく必要がある。

また、途中で解約すると損になる可能性が高い点も要注意だ。解約するのが早ければ早いほど「解約控除」と呼ばれるコストが多く差し引かれるため、手元に戻ってくる解約返戻金が少なくなる。

保険が満期を迎えるまでに、不慮の事故や子どもの進学などでお金がかかったり、給与が下がったり仕事を失ったりするかもしれない。「途中で保険料が払えなくなり、契約を続けられなくなった」とならないよう、あらかじめよく考えて契約しておきたい。

デフレに弱い

「インフレに強い」というメリットと、「デフレに弱い」というデメリットは表裏一体だ。

どんどん景気が良くなり株価が上がっていく経済状況が続けば、運用もうまくいってお金が増える可能性も高いだろう。しかし、みんなが節約して経済が回らず、デフレが進んで景気が悪くなって株価も上がらない……といった状況が続くと、当然運用もうまくいきにくくなる。

保険と投資はわけたほうが低コストで済む

変額保険は保険と投資の機能を兼ねるが、そのぶん余計なコストがかかっている。変額保険は、掛け捨ての保険に比べて保険料が高く、投資信託に比べて手数料が高い傾向がある。帯に短し襷(たすき)に長し。保険としても投資としても中途半端になりやすい。

無理に1つにまとめるより「保険は保険、投資は投資」とそれぞれ別に取り組んだほうが、保険料や手数料を抑えながら同様の効果を得られるため効率がよい。しかも、保険か投資のどちらかが不要になってやめたいときも自由にコントロールできる。

ちなみに、変額保険のメリットとして「生命保険料控除」があるのは先述のとおりだ。しかし生命保険料控除は定額保険でも対象になる。

さらに同じ「自分の年金を自分で作る」「老後に向けて運用する」という目的なら、変額個人年金保険よりiDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)のほうが控除額の上限が高く税負担を軽減する効果が高い。

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なぜ変額保険はトラブルが多いのか?

上述のとおり、変額保険にはメリットもデメリットもある。人によっては、あるいは場合によっては変額保険への加入が最適解となることもある。

しかし「変額保険はやめたほうがいい」といった話を聞いたことがある人もいるだろう。実際、加入したあとに「こんなはずではなかった」と後悔したり、トラブルになったりするケースもある。金融庁や国民生活センターが注意を呼び掛けているほどだ。一体なぜなのだろうか。

デメリットを把握しないまま契約してしまう人が絶えない

前述のとおり、変額保険には元本割れのリスクなど気を付けたい点がある。しかし保険を契約する際には、営業担当者が熱心に説明する「メリット」や「運用がうまくいったときのシナリオ」ばかりに気を取られがちだ。

運用成果が最悪のケースではいくら損する可能性があるのか、途中で解約することになったらどうなるのか、など自分にとってよくない場合についてもシミュレーションして確認しておこう。

変額保険は、保険を使って半強制的/自動的に資産運用を進められる点に魅力を感じる人や、知識を身に付ける時間や手間を省いて投資にチャレンジしたい人にとっては有力な選択肢になりうる。しかし、元本割れを絶対に避けたい人や満期まで継続できない人、自分で投資商品を選択できる人にとっては魅力が薄く、デメリットが目立ってしまう。

変額保険の保険料は月数万円に及ぶこともあり、決して安くはない。大切なお金を投入するのだから、本当に自分の希望に合致した商品なのか、他にもっとよい選択肢はないのか、契約前にあせらずよく考えよう。じっくり検討して納得したあとに加入しても遅くない。

保険の営業担当者が誤った説明をしている場合も

変額保険にトラブルが多いのは、なにも顧客側のせいばかりではない。残念ながら、営業担当者に問題があるケースも散見される。

金融庁が定めた「顧客本位の業務運営に関する原則」では、保険などの金融商品を販売するときは、顧客の知識量や経験にあわせて、損失のリスクなども含めて充分に説明して理解を得たうえで、ニーズに合った商品を推奨することが基本とされている。当然といえば当然のルールだ。

また、変額保険は資格試験に合格して登録を受けた「変額保険販売資格者」でないと勧誘や契約ができないというルールがある。

しかし中には、変額保険なのに金額が変動するリスクを説明せず「元本保証(元本割れしない)」と虚偽の説明をしたり、高齢で認知症の症状がある人に多数の契約をさせたりと、犯罪まがいの勧誘を行う営業担当者もいるようだ。

国民生活センターが金融庁の審議会に提出した資料によれば、実際に以下のような相談が寄せられている。

・満期になったお金のことと訪問があり、「いい商品がある」「プラスになり、マイナスにならない」と勧められた。2~3年後に使う予定があると尋ねたが、大丈夫だと契約を急がされた。てっきり預金だと思っていたが、解約したら損失が出た。

・節税のためと勧誘され「5年満期で元本割れしない」「死亡保険金は税金がかからない」と説明があったので変額個人年金保険を契約したが、10年満期の商品で、税金がかかることがあると分かった。

・「好きな時に保険料の支払いは止められる」と説明を受け変額保険を契約した。半年後、払い続けることが困難なので、支払いをストップすると連絡したら、解約するしかないと言われた。

・契約後に説明書がどっさり届いたが「読まなくていいです。読んでも分かりませんから」と言われた。担当者を信用していたので変なことはしないだろうと思っていた。

(出典:国民生活センター「リスク性のある金融商品(特定生命保険・投資信託)に関する消費生活相談について」2019年10月)

変額保険はもともと仕組みが複雑でわかりにくいこともあり、よくわからないまま「なんとなく」「営業担当者が言ったとおり」に契約を結んでしまう人も多い。

しかし想定外のことが起きて不利益をこうむるのも、トラブルに対応するのも、損失分をどうやってカバーするか考えるのも、すべて営業担当者ではなく自分自身や家族だ。

変額保険の仕組みや保険料/保険金の金額、デメリットなど契約内容をきちんと理解してから契約するようにしよう。「リスクを説明しない担当者からは契約しない」「理解できない商品には手を出さない」というのも選択肢の1つだ。

変額保険の代わりに検討すべき投資商品

先述のとおり、変額保険は保険と資産運用を兼ねようとしているために中途半端になっている面がある。

「安い保険料で『もしも』に備えたい、安い手数料で資産運用に取り組みたい」なら、変額保険ではなく、掛け捨ての保険に運用商品を組み合わせたほうが希望を叶えられる可能性が高い。中途解約やリスクのコントロールもしやすいだろう。

では、変額保険に加入せず自分で資産運用に取り組む場合、どんな金融商品を選択すればよいのだろうか。ここでは、投資初心者でも取り組みやすいよう、リスクやコストが比較的低く手間のかかりにくい運用商品を紹介する。

投資信託

投資信託は「いろいろな投資先の詰め合わせ」のような金融商品だ。投資家から集めたお金を、投資のプロがさまざまな投資先に配分して運用する仕組みになっている。

変額保険の中には、契約者が選択した投資信託で運用するものもある。しかし、わざわざ変額保険を通さなくても、自分でより幅広い選択肢からより手数料の低いものを選択して投資することが可能なのだ。

投資信託は、投資家自身が投資先の地域や企業について個別に分析したり選んだりする必要がなく、プロにおまかせで運用できるので投資初心者にも人気がある。

近年は、国も資産運用を勧めている。一部の投資信託は、つみたてNISAやiDeCoといった投資の税制優遇制度の対象になる。特にiDeCoは、変額保険を上回る高い節税効果にも期待できる。資産運用に興味があるなら、これらの制度を活用することもぜひ検討したい。

債券

投資信託よりも期待できるリターンは低めだが、よりリスクを抑えたいなら「債券」という選択肢もある。

債券はお金を借りたい国や企業などが発行するもので、「債券を購入する=その発行体にお金を貸す」という意味になる。債券を保有している間は利息を受け取ることができ、満期を迎えると元本が戻ってくる。

たとえば「個人向け国債」は、日本が個人向けに発行している債券だ。日本という国が破綻しない限り、元本割れになることはない。1万円から購入でき、最低でも年0.05%の金利が保証されている。

「お金が減るのが怖い」「投資を始めるなら、まずはリスクが低いものから挑戦したい」という人に特に向いているだろう。

その他の運用商品は?

「資産運用はやってみたいが、なかなか時間が取れない」という人に選ばれているのが、ファンドラップやロボアドバイザーといった商品だ。

どちらも本人の希望にもとづいて複数の投資信託を組み合わせる「おまかせ運用サービス」といえる。ただし、この方法は自分で運用先を選ぶ手間や時間が省ける反面、手数料が高めなのがデメリットだ。

また、株式投資という方法もある。業界の動向や企業の業績、これまでの値動きなどを分析して運用先を選定する必要があるため難易度は高めで、投資信託や債券投資に比べて「ハイリスク/ハイリターン」な傾向がある。しかし近年は、株主優待などの特典を求めて少額で取り組む人も少なくない。

FXや暗号資産(仮想通貨)への投資に取り組む人もいるが、これらは数ある投資の中でも特に「ハイリスク/ハイリターン」で、損失が出たときのダメージが大きくなりやすい。投資初心者にはおすすめできない。

契約の際はリスクに関して十分な検討を

変額保険は、将来受け取れる保険金の金額が変動する。運用がうまくいけば大きな利益を得られるが、うまくいかなければ損失が出る可能性もある。メリットだけでなく、デメリットやリスクもきちんと理解したうえで契約することが大切だ。くれぐれも「なんとなく」「営業担当者に勧められたから」だけで契約することがないよう気を付けたい。

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