こぞってLPSに進出するワケ

LPSは、1998年11月に施行された「中小企業等投資事業有限責任組合契約に関する法律」に基づく。LPSの設立により、業務執行を行わない組合員は有限責任で出資でき、さらに2006年の法改正により、投資対象は中小企業だけでなく「事業者」であればよいことになった。加えて2019年10月には銀行法施行規則が改正され、銀行等の議決権保有制限(いわゆる「5%ルール」)の例外措置が拡充・新設された。そのため、銀行が続々とLPSを設立するようになった。

一見すると、預貸業務から投資回収業務に大きく舵を切ったかにも見える経営姿勢。実は愛媛銀行に限ったことではない。2019年12月には三重県を地盤とする百五銀行が、地銀として国内初の投資専門子会社「百五みらい投資」を設立した。2022年2月には山口フィナンシャルグループ3行(山口銀行、もみじ銀行、北九州銀行)と十六銀行、南都銀行、百十四銀行、愛媛銀行の4行が、地域企業の事業承継を支援するファンド「地域未来共創Searchファンド」を設立している。

このように、特に第二地銀ではエクイティビジネスに大きな活路を見いだしている。しかし、愛媛銀行としては、「ふるさとの発展に役立つ銀行」という基本理念は変わらず持ち続けているので、「新たな経営手法を実現した」ということだろう。

県内無尽5社が大合同して誕生

その愛媛銀行はもともと、1943(昭和18)年3月に愛媛県内の無尽会社5社が合併し、松山市に愛媛無尽として設立された。5社とは東豫無尽蓄積、今治無尽、松山無尽、常磐無尽、南豫無尽金融である。この愛媛無尽は1950年12月に伊予殖産無尽を買収(営業譲受け)している。

1951年10月に相互銀行法の制定で愛媛相互銀行となり、1989年2月に普通銀行に転換し、愛媛銀行となった。普通銀行となって以降は、2000年10月に北温信用組合と合併している。

無尽組織→相互銀行→普通銀行は、第二地銀が歩んできた“お約束”の発展の歴史である。そのうえで、新たな経営手法・地域貢献のあり方が試されているということになる。

文・菱田秀則(ライター)