「メディカル」「IT」物流を確立
安田倉庫の2023年3月期業績予想は売上高9.3%増の580億円、営業利益5.5%減の27億5000万円、経常利益5.9%減の38億円、最終利益20%減の23億円。13年連続の増収ながら、本業のもうけを示す営業損益は4年連続の減益を見込む。グループ入りした陸運子会社が売上高を押し上げる一方、物流施設の新設による営業原価や販管費の増加などが各利益を圧迫する。
売上高構成は物流事業87%、不動産事業13%。不動産事業は東京・芝浦で3カ所、横浜市で11カ所のオフィスビルを保有している。
物流事業では倉庫・物流の枠にとどまらず、特定ジャンルに特化した専門的なサービスを展開している。その代表例がメディカル物流とIT機器物流だ。物流事業全体の4分の1以上を占めるまでになり、業績の牽引役となっている。
メディカル物流の拠点として2020年と21年、東京都江東区に「東京メディカルロジスティクスセンター」を2カ所開設した。物流事業者として初の医療機器修理業許可を取得し、倉庫・物流機能に加え、医療機器の検査・点検、薬事ラベル添付、洗浄、修理、メンテナンスなどの各種サービスをワンストップで提供する拠点を実現した。
IT機器物流では、パソコンやタブレット、スマートフォンなどの各種設定や動作確認といったキッティング業務から、サーバー製品移設、回収した製品のデータ消去や廃棄までのサービスを一元的に提供している。
◎安田倉庫の業績推移(単位は億円)
2021/3期 | 22/3期 | 23/3期(予想) | 25/3期(計画) | ||
売上高 | 477 | 530 | 580 | 650 | |
営業利益 | 32.8 | 29.1 | 27.5 | 40 | |
経常利益 | 43.6 | 40.3 | 38 | 48 | |
最終利益 | 27.9 | 28.7 | 23 | ー |
中期計画推進にM&Aの出番は?
今年度スタートしたのが中期経営計画「YASUDA Next Challenge 2024」では最終年度の2025年3月期に売上高650億円、営業利益40億円、経常利益48億円を掲げる。投資は3年間で360億円を予定。物流事業に280億円、不動産事業に40億円、情報システム関連に40億円を充てる。
物流事業では付加価値の高いサービス提供に向けたソリューションの強化とネットワークの拡充を基本戦略に打ち出している。具体的には、メディカル物流拠点、IT機器ライフサイクルマネジメント業務体制、EC(ネット通販)物流サービスなどの強化に加え、引き続き国内外の輸配送ネットワークの拡充に取り組む方針だ。
安田倉庫の海外物流ネットワークは現在、中国、ベトナム、インドネシアの3カ国にとどまる。シンガポール、タイ、インドなどアジア地域で新たな拠点展開を模索している。
こうした一連の施策展開に際してはM&Aが有力な手立てとなることは間違いない。間もなく中期経営計画は2年目に入る。安田倉庫の次の一手は国内か、それとも海外か、注目される。
安田倉庫の主な沿革 | |
1919年 | 興亜起業として創立 |
1924年 | 横浜市で普通倉庫業を開業 |
1934年 | 臨港倉庫に社名変更 |
1942年 | 安田倉庫に社名変更 |
1949年 | 太平倉庫に社名変更 |
1954年 | 安田倉庫に復称 |
1972年 | 丸安運輸(現安田運輸)を設立 |
1996年 | 上海駐在員事務所を開設 |
1999年 | 東証2部上場 |
2003年 | 芙蓉エアカーゴ(東京都港区)を子会社化 |
2005年 | 東証1部上場(2022年4月東証プライムに移行) |
2007年 | 中国・上海に現地法人を設立 |
2008年 | 日本アイ・ビー・エムロジスティクス(現日本ビジネスロジスティクス、横浜市)を子会社化 |
2009年 | ベトナムに現地法人を設立 |
2014年 | 高木工業物流(現ワイズ・プラスワン、横浜市)を子会社化 |
2017年 | インドネシアに現地法人を設立 |
2019年 | 大西運輸(金沢市)を子会社化 |
2020年 | オオニシ機工(金沢市)を子会社化 |
2021年 | 南信貨物自動車(長野県松本市)を子会社化 |
〃 | パワード・エル・コム(長野県松本市)を子会社化 |
〃 | 城南運輸(長野県飯田市)を子会社化 |
2023年 | 3月、エーザイ物流(神奈川県厚木市)を子会社化 |
〃 | 4月、OSO(京都府八幡市)を子会社化 |
文:M&A Online編集部