本記事は、塚本亮氏の著書『「すぐやる人」と「やれない人」の習慣』(明日香出版社)の中から一部を抜粋・編集しています。

スイッチ
(画像=patpitchaya/stock.adobe.com)

すぐやる人は儀式でスイッチを入れ、やれない人はサザエさん症候群。

打席に入る前に軽く屈伸し、バッターボックスに立てばバットを半回転させてセンター方向に垂直に立てます。そしてユニフォームの右袖をまくるような仕草をし、またバットを半回転させて構えます。イチロー選手がいつも打席に入るときに行なう動作です。

このように、集中力を高め、気合いを入れるための儀式を行なうことで重い心を動かすことができます。

すぐに取りかかれるような簡単なタスクならば、心理的な負担はそう大きくないはずですが、「面倒だな」と少し気が重く感じるようなタスクであれば、気合いを入れることで自分を動かしやすくなります。

そのひとつの方法が儀式を取り入れることです。儀式は行動のスイッチとなります。

それをすれば「よしやるか!」と思えるようになるのです。

「オペラント条件付け」という言葉を聞いたことがある人もいるでしょう。

ある行動をしたら、自分にとって良いことが生じた。以後、その行動に対して良いイメージを持ち、積極的になる。逆に、ある行動をしたら自分にとって良くないことが生じた。以後、その行動に対して消極的になる──。

「オペラント条件付け」とは、行動とその結果の関連性を学習することです。

たとえば、「サザエさん症候群」。サザエさんの放送が終わると、「明日からまた長い1週間が始まる……、仕事か……」と憂鬱な気分になるようなことです。以後、サザエさんの放送が終わるたびに憂鬱な気分になってしまいます。

これはマイナススイッチの例ですが、日曜日の夕方のネガティブな儀式と捉えることができますね。

それとは逆に、高いパフォーマンスを発揮するためにはポジティブな儀式を取り入れると効果的です。ポジティブな儀式によって「自分はできるのだ」と前向きなセルフイメージが頭に浮かんでくるので、積極的になれるのです。

儀式は心理学的に見ても効果があるとされています。

私は留学中、試験を受けなければいけない日は、朝に必ず決まった栄養ドリンクを飲んでいました。たまたま眠気覚ましのつもりで飲んだときがあって、そのときは自分が思っていた以上の結果を残すことができたのです。それ以降は、その栄養ドリンクを飲んでから試験に臨むようになりました。

また、フィギュアスケートの羽生結弦選手はNHK杯で4回転ループという大ワザを決めたとき、直前に「できる、できる、できる!」とつぶやいたことが話題になっていました。

練習でそうつぶやいたときに完璧な成果を出せたことが、きっかけになったということです。それによって自信がみなぎってきて、大舞台のプレッシャーに負けず大ワザを完璧にやってのけたのです。

儀式の多くは偶然の産物なのかもしれません。たまたま何かの動作が、大切な成功体験に繋がったときに、またそれを繰り返せば良い成果に繋がるのではないかという期待を持つようになるものです。

私は最近では、プレッシャーのかかる仕事や気合いが必要なときにはお気に入りの紅茶を飲むようにしています。紅茶の香りを嗅ぐだけで、イギリスでの充実した日々を思い出し、そこから自分はどれだけ成長できているのかを考えるモノサシを与えてくれるのです。すると「あの頃、夢見た自分になるために、ここで踏ん張らないと」と思えるのです。

あなたには何か大切にしている儀式はありますか。ときには気持ちが伴わず、気合いを入れないといけないような場面もあるでしょう。

「すぐやる人」はそれぞれのこだわりの儀式を持っているものです。儀式というと何か大げさな気がするかもしれませんが、心のスイッチをONにできるような、あなたのこだわりを持ってみましょう。


すぐやる人は、集中力を高める儀式を持っている!
「すぐやる人」と「やれない人」の習慣
塚本亮
ケンブリッジ大学大学院修士課程修了(専攻は心理学)。
同志社大学経済学部を卒業後、ケンブリッジで心理学を学び、帰国後、京都で英会話スクール、ジーエルアカデミア設立。
心理学の知見と自身の学習経験を生かした指導法が注目され、国内外から指導依頼が殺到。
学生から社会人までのべ100人以上の日本人をケンブリッジ大学、ロンドン大学をはじめとする海外のトップ大学・大学院に合格させている。

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