本記事は、塚本亮氏の著書『「すぐやる人」と「やれない人」の習慣』（明日香出版社）の中から一部を抜粋・編集しています。
すぐやる人は根拠なき自信を持ち、やれない人は自分を否定する。
「最初にあったのは夢と根拠のない自信だけ。そこからすべてが始まった」
こう語ったのは、ソフトバンクの創業者である孫正義さんです。
しかし、自分に自信が持てない人が増えています。自信が持てないから、一歩踏み出せず、ここぞというときに後ずさりしてしまいます。自分に自信が持てないことは、仕事もプライベートも踏み出すべきときに、停滞を生み出す原因となりかねません。そして、その自分にまた自信を失ってしまうという悪循環を招きます。
日本青年研究所の調査（2011年）で、「私は価値がある人間だと思うか」という質問をしたところ、アメリカの高校生の57％、中国の高校生の42％が「はい」と答えました。
一方で、日本の高校生はどうだったでしょうか？
なんと、8％しか「はい」と答えた高校生はいなかったのです。
「自分なんて」「どうせ無理だ」といった思考のパターンが染みついてしまっているのです。これだと、チャレンジするどころか、リスクに対して臆病になってしまい、嫌なことはどんどん先送りにしてしまいます。常に不安につきまとわれている状態なので、当然、「やれない人」になってしまいます。
行動経済学では、新しいものにチャレンジせず現状維持をしていたいという心理状態を「現状維持バイアス」と呼んでいますが、それに拍車をかけるのが自信の欠如です。
「やれない人」は「実績がないから自信が持てない」と考え、現状維持に甘んじてしまいます。
一方で、「すぐやる人」は「自信さえ持っていれば、実績はあとからついてくる」と考えます。もっと言うと、「自信がないから、やらない、やれない」のではなく、「やるから自信がつく」のです。
私はマイケル・ジャクソンの映画『THIS IS IT』の監督で世界最高の振付師トラヴィスさんの通訳をさせてもらったことがあったのですが、オファーをもらったときは実績ゼロでした。
通訳という仕事に力を入れていなかったので当然ですが、ましてやマイケル・ジャクソンについてもほとんど無知。エンターテイメント関係での通訳経験も全くのゼロ。
特に通訳という仕事は、通訳する方の背景知識がなくてはうまくいきません。世界的なエンターテイナーのこれまでの実績や作品などについて頭に入っていないと、仕事にならないわけです。
しかし、オファーをもらって、引き受けるまでには時間は必要ありませんでした。私よりすごい実績を持つ通訳の人たちはたくさんいて、確かに尊敬に値しますが、「結局は同じ人間でしかない」と考えたのです。「誰かにできることは、自分にもできる」と。
そして、通訳の人たちの動画をたくさん見て自分の中にイメージを刷り込んで、なりきることに徹しました。
そうすると、実績も根拠もないけれど、自信が湧いてきて、イベントに参加した人たちからは「自信も実績もある通訳にしか見えなかった」と、言ってもらうことができたのです。ご本人からもその仕事っぷりを認めてもらうことができて、横浜アリーナで開催されたダンスコンテストでもそうそうたるアーティストの中で審査員席にも座らせてもらうことができました（もちろん通訳としてです）。
実績がなくても、根拠なき自信を持ってチャレンジした結果、それ以降はどんな緊張する場面でも乗り越えられる自信がついたのです。
ハーバード・ビジネススクールなどでも教鞭をとる社会心理学者のエイミー・カディは、「自分のなりたい姿になりきってみることは実際にそうなるまでのプロセスである」と言っています。
彼女のチームの研究では、被験者に強いポーズと弱いポーズのどちらもやることを求めました。すると、自信がないときに強いポーズをとると、自信が出てきたり、リスクを進んでとれるようになることがわかりました。反対に弱いポーズをやると、まったく逆の反応が見られたのです。自信があるように振る舞うことで自信が湧いてくる、そしてストレスが減少するということがわかったのです。
「できるか、できないか」ではなく、根拠なき自信が大きな自信をつけるための第一歩なのかもしれません。
すぐやる人は、とにかく自信を持ってみることの大切さを知っている！
同志社大学経済学部を卒業後、ケンブリッジで心理学を学び、帰国後、京都で英会話スクール、ジーエルアカデミア設立。
心理学の知見と自身の学習経験を生かした指導法が注目され、国内外から指導依頼が殺到。
学生から社会人までのべ100人以上の日本人をケンブリッジ大学、ロンドン大学をはじめとする海外のトップ大学・大学院に合格させている。※画像をクリックするとAmazonに飛びます
