TIS<3626>は、国内第6位の大手システムインテグレーター(SI)。キャッシュレス決済や電力のようなインフラから産業・公共を支えるサービスまで、より豊かな暮らしを実現するための
社会基盤をITで支えている。デジタルトランスフォーメーション(DX)などの激変するITシステム需要にキャッチアップするため、積極的なM&Aを展開している。
経営統合でIT大手として存在感
同社は1971年4月、三和銀行(現・三菱UFJ銀行)のシステム子会社「東洋情報システム」として設立された。JCBをはじめとするクレジットカード会社の基幹システム開発に強みを持ち、2020年時点で国内シェアは約50%で首位。 ブランドデビットカードのシステム開発でも国内シェアは約80%と他社の追随を許さない。
1975年10月に東洋コンピューターサービスを合併したのを皮切りに、2000年4月に小松製作所の情報サービス子会社だったコマツソフト(現・クオリカ)、2002年2月にアグレックス、2004年4月にユーフィット、2005年4月に旭化成情報システム(現・AJS)を買収するなど、M&AでSI事業を充実させてきた。
そして2008年4月にインテックホールディングスと共同持ち株会社「ITホールディングス」(現・TIS)を設立して、経営統合する。次世代データセンターへの取り組みや規模拡大による受注拡大、重複業務の効率化などによるシナジー効果も狙った。
TISはクレジットカードのほか製造業や化学業界向けのITシステムに強みを持ち、銀行・保険業界に強いインテックHDと一体化することで、顧客層が一気に広がった。
M&Aで新規顧客を獲得
TISは経営統合後もM&Aの手を緩めていない。2009年2月には51.02%の株式を所有していたエス・イー・ラボをTOB(株式公開買い付け)により完全子会社化し、上場を廃止すると発表した。リーマン・ショックにより外部環境が悪化する中、TISグループのブランドを活用することでエス・イー・ラボの受注体制の強化を狙った。
同7月には子会社で顧客基盤を相互補完できるTISソリューションビジネスと合併させ、グループ再編を断行している。
同11月にはITホールディングスはソランをTOB(株式公開買い付け)により完全子会社化すると発表した。クラウド型サービスなど業界の大きな環境変化に対応できるよう事業規模の拡大と業績安定化のためのリスク分散が狙い。
2020年1月にはモバイル決済ソフト・サービス開発の米Sequent Software Inc.の株式を追加取得して子会社化すると発表した。Sequentは2010年に発足したフィンテック企業で、各種モバイル決済で利用可能なトークナイゼーション(暗号化)技術を持つ。
TISはデジタルウォレット(電子財布)サービスの開始に際して、2017年に同社と資本提携していた。子会社化により、モバイル決済事業を加速する。
2023年3月には税理士事務所向け会計・財務システムを提供する日本ICSの全株式を取得し子会社化すると発表した。自社の金融機関向けビジネスと日本ICSの税理士など士業向けビジネスを組み合わせ、顧客基盤の拡大や新たな事業スキームの実現を目指す。
TISは 現在40社もの子会社を抱え、全方位でITソリューションビジネスをカバーしている。同社は「金融包摂」「健康問題」「都市への集中・地方の衰退」「低・脱炭素化」の四つの社会課題に注目し、ITを駆使した課題解決の実現を経営テーマに掲げている。こうした問題を解決するために、さらなるM&Aで事業を拡大していくことになるだろう。