本記事は、豊嶋智明氏の著書『「働かないおじさん」を活かす適材適所の法則』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

男性
(画像=PIXTA)

「期待して指導」した結果、“パワハラ”になる理由

上司や経営者が部下に期待して指導したことが、裏目に出ることもあります。上司が伝えたい意図が伝わらず、逆に部下の働くモチベーションを下げてしまう場合もあるのです。

例えば、上司が部下を励まそうと飲み会に誘ったにも関わらず、途中から説教が始まり、部下がやる気をなくすということは日本中で起こっています。

全国チェーンを展開するある企業で起こった事例を紹介したいと思います。事の発端は、あるエリアの売上が落ちていたことでした。本社の営業本部長は、統括エリア部長を本社に呼び出し、「売上が落ちている原因を究明して欲しい」と伝えました。

しかし、統括エリア部長は本社の本部長から言われたため、「何とかしないと自分の立場が危うい……」と大きなプレッシャーを感じたのです。そこで、統括エリア部長は担当エリアの部長を呼び出しました。統括エリア部長は、激励のつもりで「何をやってるんだ!原因はお前にある!」と怒鳴ってしまったのです。

これを受けて担当エリアの部長は、「自分はダメなんだ……」とショックを受け、このままではいけないと焦りました。追い込まれた担当エリアの部長は、エリア内で売上が落ちていたいくつかの店舗の店長と副店長を入れ替えるという人財配置を行ったのです。

その結果、入れ替えを行った店舗の店長と副店長の人間関係が悪くなり、店舗の雰囲気が一気に悪化しました。そして、売上がどんどん減少し、閉店に追い込まれた店舗が出てきました。本部長のひと言から始まり、ピラミッド組織の中で伝達が誤解を読んだために起こった悲劇でした。

また、小さな会社のワンマン社長が会社をつぶしたケースもあります。あるリフォーム会社の社長は、幹部の管理職全員に外部研修を受けさせることが好きでした。確かに、研修で一定の効果は出るのですが、何度か研修が続くうちに管理職たちは、「また研修か」と思うようになっていました。

ある時、社長は管理職だけでなく、一般社員にも外部研修を受けさせることにしました。しかし、社長の狙いは裏目に出てしまったのです。なんと、研修から帰ってきた2人の社員が心を壊し、退職する事態を招いてしまいました。

このように、上司が部下のためにと思ってやったことが、最悪の事態を招いてしまうこともあります。つまり、上司と部下の心のすれ違いが、働かない部下や「働きたくても働けないおじさん」を生み出す環境を作るのです。激励の言葉や考え方の押しつけは組織を壊すリスクを秘めています。特にトップの言葉ほど、部下には重くのしかかるため、注意が必要。

実は、この上司と部下のすれ違いも、それぞれの個性に合わせた人財配置で未然に防ぐことができます。そもそも上司と部下の「仕事の基本的な相性」というものが存在するからです。

「働かないおじさん」を活かす適材適所の法則
豊嶋智明
1954年東京生まれ。株式会社World One 取締役 能力開発事業部。
人財活性のコンサルティングと研修、企業における能力開発サポートを行い、35年超のコンサル業で企業2,000社以上、延べ10万人を超える実績を持つ。組織の人間関係を円滑に図る方法や、適材適所の人事構築などに定評がある。経営者から従業員に至るまで、その人の個性を活かして成果を生み出すための、具体的な戦略・戦術を伝えている。

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