本記事は、豊嶋智明氏の著書『「働かないおじさん」を活かす適材適所の法則』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

金融業界,戦力,若手,銀行員
(画像=beeboys/stock.adobe.com)

上司を信頼していない部下が6割

職場における上司の悪気のない言動が、部下を傷つけることもあります。そして、次第に部下のやる気が低下し、上司を信頼できなくなってしまうのです。私の長年のコンサル経験から見えている感覚では、上司を信頼していない部下が6割以上いる企業が大変多いです。

それでは、部下を傷つける上司の言動とは、具体的にどのようなものでしょうか?

例えば、以下のような言動が当てはまります。

  • 返事をしておきながら「聞いてない」と言う
  • 言ってないことを「言った」と思い込んで意地を張る
  • 言葉にトゲがある
  • 自分からは挨拶しないのに、礼儀にうるさい
  • 上役には丁寧に接するが、部下は雑に対応
  • 会社への不平不満が多い

上司本人は、気づかない場合が多いのですが、部下からすると「この上司の下で働きたくない」と感じてしまうのです。

挙げればきりがないのですが、次のような言動も部下の信頼を失ってしまいます。

  • いきなり始まった会議が延々と続く
  • 理解していないのに、いきなり現場に行くように指示する
  • 自分の物差しで、他人の意見を否定する
  • 部下の失敗には厳しく指摘するが、自分の失敗には甘い
  • 感情的に物にあたる

上司としては無意識に行った言動でも、部下は覚えています。知らず知らずのうちに、上司の評価が下がっているのです。

さらに、次のような上司がいる組織は、悲惨な末路を辿ることになります。

末路1:上司が部下の能力を疑う職場

上司が部下の能力を疑うと、部下が上司の失敗を望むようになる傾向があります。多くの場合、このような上司は、自らの保身のために責任も取りません。部下の面倒も見ないため、多くの部下を敵に回し、やがて孤立します。その結果、部下に仕事を振れなくなり、自分1人で仕事を抱えて行き詰まります。最終的には、上司の無能さの内部告発が始まり、部署の崩壊がスタートします。

末路2:体育会系のトップダウン型の上司

このような上司の下では、イエスマンの部下しか育ちません。反対意見を言った部下は、上司の評価が下がってしまうからです。その結果、多くの部下が会社を辞め、上司の責任問題に発展するケースが頻繁に起こります。

末路3:上司が部下や同僚の前で、他の部下や会社に批判的な愚痴をこぼす

このような行為は、部下の士気を下げることになります。やがて、部下は自分の上司こそ会社に必要ない人財だと思うようになります。その後、多くの部下が思った通り、上司は本当の窓際に追いやられる場合が多いのです。

末路4:人の好き嫌いが激しい上司

このような上司は、自分のことを慕ってくれる部下と自分が気に入った部下だけに心を開きます。その結果、偏った情報しか入らず、部下との摩擦が頻繁に起こるようになります。最終的には、上司が会社から責任を取るように迫られるのです。

上司の悪気のない多くの言動が、働かない部下を作るのです。このような環境では、部下は次第にやる気がなくなり、言われたことだけをやるようになります。部下のモチベーションを下げたのは、このような上司の言動です。会社の生産性を大きく下げているため、一見働いているようですが、上司こそ、「働かないおじさん」でしょう。

その結果、社内に作業員的な「人材」が増えていき、会社の宝となる「人財」は育たなくなります。人財配置を失敗すると、長期的には会社に大きな損失をもたらすのです。

「働かないおじさん」を活かす適材適所の法則
豊嶋智明
1954年東京生まれ。株式会社World One 取締役 能力開発事業部。
人財活性のコンサルティングと研修、企業における能力開発サポートを行い、35年超のコンサル業で企業2,000社以上、延べ10万人を超える実績を持つ。組織の人間関係を円滑に図る方法や、適材適所の人事構築などに定評がある。経営者から従業員に至るまで、その人の個性を活かして成果を生み出すための、具体的な戦略・戦術を伝えている。

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