上場企業の希望退職者募集の動きが2023年も途絶えることなく、続いている。募集の計画(退職勧奨・整理解雇を含む)を発表した社数は延べ8社。最も規模が大きかったのはアパレル専門店のタカキューで、約100人を募った。また、料理レピシサイト運営のクックパッドは今年に入り、2度の募集に踏み切った。

M&A Onlineが適時開示情報などをもとに調べたところ、上場企業の希望退職者募集はコロナ禍の影響が広がった2020年に90社(計画発表ベース)を超え、前の年の2.6倍に急増した。2021年は約50社、2022年は22社と2年連続で半減し、年を追って落ち着きを取り戻した。

そうした中、目立ったのがファッション・アパレル関連で、2021年は三陽商会、ダイドーリミテッドなど10社、2022年もワコールホールディングス、タキヒヨーなど4社を数え、それぞれ全体の2割を占めた。

タカキュー、債務超過解消の一環

2023年1~3月中、最も多い100人規模の希望退職者を募ったのはメンズ・レディース用衣料品を展開するタカキュー。応募は97人だった。約550人(2022年2月期末)の連結従業員の約18%にあたる。35歳以上64歳未満の正社員、地域限定正社員らを対象とし、退職は3月31日付。

タカキューは2022年2月期に債務超過に陥ったのを受け、事業構造改革の一環として人員の適正化に踏み切った。同社は4月12日に2023年2月期決算の発表を予定しているが、5期連続の最終赤字が避けられない見込み。2月末の店舗数は130で、この1年間で36店舗を削減し、コロナ前の2019年2月期末(302店舗)の半分以下となっている。昨年7月には20億円だった資本金を1億円に減資した。

クックパッドは連結従業員の3割削減

クックパッドは今年に入り、すでに2度の募集を実施した。同社の2022年12月期業績は売上高9.2%減の90億8600万円、営業赤字35億円(前期は26億円の赤字)。料理レシピの有料会員数の減少に伴い、広告収入も落ち込み、経営を圧迫している。

第一弾として2月に広告事業の一部と料理トレーニングサービス「たベドリ」など新規事業の廃止を受け、最大40人の希望退職者を募ったところ、予定数を上回る46人が応じた。これに続き、海外レシピサービス事業(73カ国・31言語)の運営体制見直しに伴い、3月から4月初めにかけて80人の希望退職者を募った。合計の募集人数は120人規模で、連結従業員数の30%にあたる。

片倉工業は医薬品子会社のトーアエイヨー(東京都中央区)で50人程度の希望退職者を5月まで募集中。対象は45歳以上の正社員、契約社員らで、製造業務の従事者は除く。希望退職を実施するのは2020年3月以来で、前回は全社ベースで100人程度(応募138人)を募った。

片倉工業は繊維、医薬品、機械関連、不動産を主力事業とするが、このうち医薬品事業を担うトーアエイヨーには連結従業員の半数にあたる約510人が在籍している。トーアエイヨーは1943年に設立し、生産拠点として仙台工場(宮城県大和町)、福島工場(福島市)を持つ。