セルフ式うどん店「丸亀製麺」を主力事業とするトリドールホールディングス<3397>が5年ぶりにM&Aに踏み切った。同社は英国の投資ファンドCapdesia Group Limitedと共同で、ピザ店やギリシャ料理店を運営する英国のFulham Shore Plc(ロンドン)をTOB(株式公開買い付け)で子会社化する。2023年9月までに買収を完了する計画で、買付代金は約151億3000万円に達する見込みだ。

Fulham の買収は2018年1月に雲南ヌードルチェーン「譚仔雲南米線」と「譚仔三哥米線」を運営する香港のTam Jai International Co. Limitedを子会社化して以来となる。

同社は2023年3月期から2028年3月期までの中長期経営計画の中で、新たな業態の獲得を目標に掲げ、M&Aをこの目標達成のための一つの手段と位置付けている。最終年度の2028年3月期までにはまだ5年の期間がある。第2、第3のM&Aの可能性は決して低くはない。

急拡大支えるM&A

傘下に収めるFulhamは英国を拠点にピザ店「Franco Manca」を71店舗(2023年2月末時点)、ギリシャ料理店「THE REAL GREEK」を26店舗(同)運営しており、売上高は134億8200万円(2022年3月期)、営業利益は10億3900万円(同)を計上している。

中長期経営計画によると2023年3月期の売上高は1770億円、営業利益は40億円が目標だが、2023年3月期第3四半期を終えた時点で同期の業績予想は売上高が1919億円、営業利益は71億円となっており、すでに目標を上回っている。

2025年3月期は売上高2200億円、営業利益は120億円を目標にしており、この期にはFulhamの数字が加わり、目標達成に向け一つの大きなプラス材料となる。

さらにその3年後の2028年3月期は、売上高3000億円、営業利益約300億円を掲げており、2025年3月期から売上高で800億円、営業利益で約180億円の上積みが必要となる。また、この期の店舗数は5500店超を見込んでおり、2025年3月期(2500店)と比べ一気に2倍以上に増やす計画だ。この急拡大を支えるのに、M&Aがからんでくるのは間違いなさそうだ。

【中長期経営計画】

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(画像=「M&A Online」より引用)


当初の予想を大きく上回る業績

では足元の業績はどうか。同社では「丸亀製麺」事業が売上高の6割ほどを占めており、コロナ禍で外出の自粛や時短営業などが求められた2021年3月期は営業、税引き前、当期の全段階で赤字に転落した。

不採算店舗の閉鎖により店舗数は前年度よりも34店舗減少し、1747店舗となるなど厳しい状況に陥った。

これが一転2022年3月期は政府の補助金などもあり、営業利益は142億4300万円と過去最高を更新。これを機に2022年5月に中長期経営計画を策定し、初年度となる2023年3月期の業績見通し(売上高1770億円、営業利益40億円)を公表した。

その後、コロナ禍の影響が薄れる中、国内では新しい商品開発と店舗作りなどに取り組んだのをはじめ、海外でアジアを中心に積極的に出店したことなどから、丸亀製麺、海外事業、その他事業の全セグメントで増収となり、2022年11月に発表した2023年3月期第2四半期決算で業績予想を上方修正し、売上高で149億円、営業利益で31億円を上積みした。

2023年2月に発表した2023年第3四半期決算でもこの数字は変更しておらず、当初の予想を大きく上回る状況が続いている。

ただ、政府による補助金がなくなることから、前年度と比較すると営業利益は半分ほどに減少する。再び過去最高を更新するのは2026年3月から2028年3月期の間になる見込みだ。

同社は富士通が開発したAI(人工知能) 需要予測サービスを、丸亀製麺の国内全 823 店舗(2023年1月31日時点)に導入することを決めた。

気象やレジのデータなどに基づいて店舗ごとの日別、時間帯別の客数や販売数を予測するもので、これによってスタッフの適正配置や、発注量や仕込み量の最適化などが可能になり、食品ロスの削減や店舗の効率化、省エネ化などが可能になる。

同社はアジアを中心に世界約30カ国で飲食事業を手がけており、こうしたシステムを世界に広げることで収益力は一段と高まることが見込まれる。

【トリドールホールディングスの業績推移】単位:億円、2023年3月期は予想

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(画像=「M&A Online」より引用)