地域の枠組みを超えた電力会社の取組み
電力会社が地域の枠を超える、提携あるいは新規参入の動きが加速している。
直近では、10月に東京電力と中部電力が包括提携を発表しており、それ以外にも9月に関西電力が仙台に火力発電所を新設するなど、従来の枠組みを超えた活動が活発化している。
その背景には、2016年4月に予定されている電力の小売全面自由化がある。すでに、大口の特定事業者に対する小売事業は自由化されているが、2016年からは一般家庭への電力供給についても電力会社以外の事業者が参入することができるようになる。
電力ビッグバン本格化…各社対応急ぐ
電力事業に参入するのは、ガス事業者、通信業、小売業などさまざまで、これら事業者は既に一定の顧客層を取り込んでいるので、ガスとのセット販売やポイントの付与、通信料の割引など電力会社ではなし得ないサービスを提供してくる可能性がある。電力会社がこれら事業者に対抗するためには、圧倒的なスケールメリットによる電力価格の抑制と地域外の新たな電力需要者の開拓が必要になってくる。
例えば、東京電力と中部電力の包括提携は、燃料の購入だけを共同でするのではなく、輸送、貯蔵、発電まで一貫して共同する。そうすることで、調達コストの低減だけでなく、効率化やシナジー効果による企業価値の向上も期待できる。また、中部電力としては東北地方への電力供給をスムーズに行うためにも東京電力と包括提携することはメリットが大きい。このような電力会社の動きは、電力小売り全面自由化への危機感の表れと言える。
さらに、現在は、発電、送配電、小売りが一体として電力会社が運営しているが、2018年〜2020年には、発送電分離(発電と送配電とを分離して別会社で行うこと)が予定されており、これまでのように電力会社に電気を買い取ってもらわなくても、送配電事業者を通じ、直接電力小売事業者に販売することができるようになる。そうすると、安く電力を供給できる発電事業社あるいは売れる電力小売事業者が力を持つようになる。
立ちはだかる障壁
もっとも、電力小売自由化や発送電分離に課題がないわけではない。これまでは、地域独占で電力事業が運営されてきたため、地域内の送配電設備は整備されているものの、地域外との電気の融通をするための連携線の許容量が少ないという問題がある。また、東日本と西日本とで電源周波数(50Hzと60Hz)が異なるため、違う周波数帯に送電する場合、周波数変換設備が必要となる。したがって、連携線と周波数変換設備の増強が進まないと、電気の融通が許容量によって制限されてしまう可能性がある。
この点については、電気事業法の改正によって、『電力広域的運営推進機関』が2015年4月1日から業務を開始することが決まっており、ここが、広域的な活用に必要な送配電の整備を進め、需給調整機能を果たすことになっている。すべての電気事業者は広域機関の会員になって運営に参画することが義務づけられており、重要事項は全会員が参加する総会で決議することになるので、議決権の3分の1しか保有していない電力会社だけでは決議できない仕組みとなっている。