まずは売上高の底上げ、組織作りを支援
―企業の選定方法や投資後の支援策などをお教え下さい。
過去においてキャッシュフローが安定的に出ており、今後も出てくる蓋然性については慎重に精査している。業種に特化していないため、検討初期はよく分からないこともしばしばあるが、スピード感を持って情報収集と理解を進め、どのような対策を行えば価値を高められるかを真剣に協議したうえで、投資するか否かを決めている。平均的な投資期間は3年から5年ほどだ。
投資後にはコスト削減はもちろんではあるが、売上高の底上げに特に注力する。これは単なるコスト削減では短期的な改善に留まるケースが多く、長期的な企業価値の向上には売上高の持続的な成長が不可欠と考えているからだ。当社では丸紅が世界各国に拠点を有していることもあり、同社のリソースを十分に活用しながら、投資期間中に海外で工場を新設し、売り上げを拡大させた例もある。
また、一部の中堅、中小企業では、会社規模や人材面の課題により、オーナーが全てを決めているようなところがある。そのような場合には、持続可能な企業体を目指して、組織としての意思決定や事業経営ができるような形を整えてあげることが、我々が最初にやることになる。会社がオーナーの指示がなければ動けないのではなく、責任と権限をはっきりさせることで、みんなが、それぞれ自分がやらなくてはならないことをやり始めるので、会社が生き物のように自律的に動き始めるようになる。
―事業承継に関しては多くのニーズがあります。人員の増強などはお考えですか。
若い人材を採用することを考えている。バイアウトファンドは一般に想像されるものとは違い、必ずしもかっこいいものではないが、直接事業に携われるので、手触り感があり、うまくいった時の達成感がある。また、わが社の売りは事業承継だが、今後は大企業のカーブアウト(ノンコアとなっている子会社や自社事業を切り出し、新会社として独立させた上で投資を行うこと)も強化していきたいと考えている。現在は経営陣も含めて20人程度でやっているが、年内には4、5人増やして、事業の拡大に取り組みたい。
―今回のファンドでは、総額500億円規模を目指すとされています。見通しをお聞かせ下さい。
多くの投資家の皆様からご関心をいただいており、遅くても今年度上半期には500億円程度を達成できそうだ。
【日野広隆氏】
1983年、京都大学経済学部卒、同年に丸紅に入社
2010年、同社 金融保険営業部⾧
2016年、同社 参与 生活産業グループ企画部⾧
2017年、同社 参与 食料グループ企画部⾧
2019年、アイ・シグマ・キャピタル取締役・執行役員
2021年、同社 取締役・専務執行役員
2022年、同社 代表取締役社⾧(現職)
1960年7月生まれ
文:M&A Online