トップが入れ替わる契機にも

購読料をめぐっては過去、さまざまなドラマが繰り広げられてきた。部数トップの座が朝日から読売に移る引き金となる出来事があったのは50年近く前のことだ。

読売は1976年3月25日朝刊1面に「本紙、むこう1年間購読料を据え置き」という社告を掲載した。当時、73年の第一次石油危機後のインフレに日本中が苦しんでいた。

「読売新聞140年史」はこう記す。「他社に先駆けて宣言した購読料据え置きは幅広い国民の支持を得た。75年の659万部から76年には705万部まで伸びた。同年12月には朝日を抜き、全国トップに躍り出た。77年1月に朝日に巻き返されたが、2月に再びトップを確保し、以降、1位の座は揺るぎないものとなった」。

読売は1977年2月に再び、「本紙、さらに当分の間購読料を据え置き」とする社告を打った。読売の購読料は78年9月まで据え置かれ、しびれを切らした形の朝日が先行して同年3月、毎日は同年6月に値上げした。

M&A Online
(画像=読売新聞東京本社(東京・大手町)、「M&A Online」より引用)

値上げのゴングが鳴る

日本ABC協会の「新聞発行社レポート」によると、2022年7~12月平均の販売部数は読売663万部(前年同期比5.8%減)、朝日397万部(同13.1%減)、毎日185万部(同6.2%減)、日経168万部(同8.6%減)、産経99万部(同8.4%減)。朝日は400万部、産経は100万部をそれぞれ下回った。トップの読売はコロナ前の2019年に800万部を超えていたが、140万部減らしている。

朝日は今回の値上げに合わせ、5月1日をもって愛知、岐阜、三重の3県で夕刊発行を休止する。毎日も愛知など同じ3県での夕刊を4月から休止したばかり。また、ブロック紙では西日本新聞が5月から購読料(朝夕刊セット版)を500円引き上げて4900円にする。

朝日に触発されて今後、競合各紙がどう動くのか。新聞業界に値上げのゴングが鳴ったのは間違いない。

◎大手・ブロック紙の購読料をめぐる最近の動き(購読料は朝夕刊セット、※産経東京本社管内は朝刊単独。税込み)

M&A Online
(画像=「M&A Online」より引用)

文:M&A Online